落語はビジネスにも役立つ!「笑う力」を身につけたい

アマチュア落語家・太助が、落語の魅力を考えます。

太助セレクト落語 見逃したくない!11月のお勧め落語会(1)

こんにちは、太助です。2017年11月上旬の、太助お勧めの落語会をピックアップしました。ぜひ、参考にしてください! 10月、11月は独演会も増えてくる季節です。涼しくなって、じっくりと落語を楽しめる季節なんですねえ。

 

秋の恒例 柳家さん喬一門会

日時:11月4日(土) 開演:13:00、18:00

料金:4,000円他

出演柳家さん喬一門総出演

場所:よみうり大手町ホール

問い合わせ

⇒恒例の柳家さん喬一門総出演による一門落語会。今回はさん喬師匠、芸道50年の企画で、昼の部は大座談会と落語会、夜の部は真打による落語会です。

 

 

談修イン ザ ダーク5

f:id:osamuya-tasuke:20170918103821j:plain

日時:11月6日(月)、開演:19:00

料金:前売り 2,500円、当日 2,800円

出演:立川談修

演目

「身投げ屋」

「応挙の幽霊」

「怛巳の女」

場所日本橋社会教育会館(人形町

問い合わせ:03-3220-0124

⇒端正で品のある落語家といえば立川談修師匠。落語が持つ影の部分をテーマにした人気の落語会です。第5回となる今回は、「応挙の幽霊」や「怛巳の女」など、珍しい噺を存分に楽しめます。

 

BXホール落語会「古今亭菊之丞三遊亭兼好二人会」

f:id:osamuya-tasuke:20170918103908j:plain

日時:11月7日(火)、開演:18:30

料金:3,000円

出演古今亭菊之丞三遊亭兼好

場所:文化シャッターBXホール

問い合わせ:050-3497-5500

⇒テンポ良く、しっかりと噺を聞かせてくれる古今亭菊之丞師匠、明るくたたみかける三遊亭兼好師匠。あなたは、どちらにハマるかな?

 

ぎやまん寄席「三遊亭白鳥ひとり会」

日時:11月10日(金)、開演:18:45

料金:3,200円

出演三遊亭白鳥

場所湯島天神参集殿

問い合わせ:090-5785-3369

⇒とにかく明るくて、元気がもらえる白鳥師匠。湯島神社で一人会ですよ!

 

よこはま文菊開花亭

f:id:osamuya-tasuke:20170918103941j:plain

日時:11月10日(金)、開演:19:00

料金:3,100円

出演古今亭文菊、春風亭一蔵

演目:「二番煎じ」「居残り佐平治」

場所横浜にぎわい座

問い合わせ:045-231-2515

⇒頭をクリクリにしているけれど、どこか色気のある文菊師匠。精力的に一人会などを開催しています。

 

宝くじ1等・7億円に当ったら、あなたは最初に何をしますか? 使う? それとも隠す?

f:id:osamuya-tasuke:20170915141740j:plain

 

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。宝くじの販売額が毎年減少していて、2016年は18年ぶりに9,000億円を割り込んだというニュースが報じられました。宝くじの販売額は、2005年をピークに10年以上、減少傾向が続いているそうです。

 

なぜ宝くじの話しを始めたかというと、テレビで「ドリームジャンボ宝くじ」のCMが流れていて、それが妙に印象に残ったからです。

 

1等7億円が当たったら、あなたは何を買う?

 

タイムスリップしてきた侍・役所広司が、食べていくために、夏祭りの屋台で綿あめを売っています。通りかかった知り合いの女の子たち(島崎遥香鈴木奈々)が、一生懸命、綿あめを作っている侍に、「(宝くじ)当たったら7億円だよ。どうする?」と尋ねます。

 

侍が力強く「スマホを買う!」と言うと、女の子たちは思わず「小さ!」と呟きます。その言葉に侍が驚き、CMは終わります。ソフトバンクの「白戸家」やauの「三太郎」と同じ、奇抜な設定で、ストーリー性のあるというタイプのCMですね。

 

7億円の宝くじが当たっても、買いたいものがスマホというギャップに、妙なリアリティを感じました。宝くじの販売額が減少している要因として、賞金額が上がっていないことが挙げられています。しかし、「7億円当たっても、特に買いたいものがない」というのが、実は要因としてありそうです

 

近年、若い人たちは、どんどん質実(飾り気がなく、質素でまじめ)になっています。見栄を張るためにお金をつかわなくなりました。バブル期の頃は、高級車やスーパーカーに乗ることがもてはやされました。しかし今は、そのような車より、ワンボックスタイプの軽自動車のほうが人気があります。

 

1等・当選確率が1千万分の1という宝くじを5,000円買うくらいなら、その5,000円をもっと堅実なことに使おうという人が増えているのでしょう。

 

宝くじを扱った落語は、当選した人たちのドタバタを描く

 

落語にも宝くじを扱った噺が色々あります。昔は、富くじと呼ばれ、寺社の財政を潤すために販売されました。

 

富くじは、番号を書いた紙の札(富札)を市中で販売し、同じ番号の木札を作って大きな箱の中に入れ、錐(きり)のようなもので、その木札を突いて当選番号を決めました。当たりの最高額は、百両から数百万両だった、といわれます。江戸時代の物価は、例えば米一石(150キロ)が二両前後と考えると、驚くほどの高額な当選金額であることが分かります。

 

富くじを扱った落語を紹介しましょう。

 

宿屋の富

 

ほとんど金もないのに宿屋に長逗留している貧乏な客。怪しまれないために「自分は大金持ちの商人で、金がありすぎて、逆に自由が利かない。そこで、わざとみすぼらしい身なりで、汚い宿に泊まったのだ」と大ぼらを吹いている。すると宿の主人に「内職で富くじを売っているので、ぜひ買ってくれ」と頼まれる。結局、なけなしの金で富くじを買うはめに。ところが、この富くじが大当たりして……。

 

 

富久(とみきゅう)

 

腕は一流だが、酒でしくじってばかりいる幇間(たいこもち)の久蔵が、なけなしの金で富くじの札を買う。当たったら幇間を辞めて、堅気の商売をしたいと思っているのだ。その夜のこと。大事な旦那が住んでいる芝のあたりで大火事が起きる。慌てて駆けつける久蔵。一生懸命に働いて鎮火し、酒を飲んで寝込んでいると、今度は自分の家が火事になり、何もかも無くしてしまう。その後、買った富くじが、一番の千両に当選していることが分かるのだが、富札は火事で焼けて、無くなってしまっている。久蔵が呆然として街をさまよっていると……。

 

名作と呼ばれる落語です。ジェットコースターのように上がったり、下がったりする久蔵の心理が聴きどころ。八代目・桂文楽、五代目・古今亭志ん生古今亭志ん朝立川談志など、名人が、それぞれの世界を作り上げています。

 

www.youtube.com

 

水屋の富

 

水道が普及していなかった場所では、水を天秤担いで売り歩く「水屋」という商売があった。重いし、休むことのできない厳しい商売。主人公の水屋さんは、金が溜まったら、いつかは商売を替えたいと思っている。そんなある日、富くじを買ったところ、これが大当たり。突然、大金を手にするのだが、生真面目な水屋さんは、仕事を休むことができない。仕方なく、床下に大金を隠すのだが、これを泥棒に目をつけられて……。

 

宝くじを扱った落語は、どの噺も、思いもかけぬ大金が当たってしまい、右往左往する人間の様を、面白おかしく、少し哀愁を込めて描き上げます。

 

そこで笑っているあなた。あなたは、思いがけず1等7億円が当たったら、まずどうしますか? パアッーとつかいますか? それとも水屋さんのように、誰にも知られないように、こっそり隠しますか?

 

関連する記事

osamuya-tasuke.hatenablog.com

落語会で迷惑な観客ワースト5! 騒がしい客、携帯を鳴らす客、1位は?

f:id:osamuya-tasuke:20170912230812j:plain

 

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。様々な落語会を見に行くと、はっきり言って迷惑な観客がいます。寄席の場合は、飲食自由であり、席を離れるのも自由。のんびりとした時間を過ごす場所でもあるので、マナーの面では、比較的、寛容です。

 

しかし、ホール落語の場合、観客はお目当ての落語家や演目を楽しみに来場しています。噺に集中して楽しみたいにも関わらず、落語会をぶち壊しにするマナー違反の観客がいます。自戒の念を込めて、ピックアップしてみたいと思います。

 

ワースト5:べちゃくちゃと騒がしい客

 

複数で来ている中高年の女性に多いのですが、噺の途中にべちゃくちゃと喋る客。これは本当に迷惑。『壺算』という道具屋を騙す噺の途中、「あの道具屋さん、また次も騙されるわよ、ほら、ほら! 騙された!」と大声で、友達と喋っていたおばちゃん。落語は、観客それぞれが、想像を巡らしながら、ストーリー展開を楽しむものなのです。あなたのお喋りが、どれだけみんなの迷惑になっていることか。気づいてくださいね。

 

ワースト4:噺のストーリーを説明しだす客

f:id:osamuya-tasuke:20170912231140j:plain

 

カップルで来ている男性客や落語マニアに多いのですが、噺が始まると題名とあらすじを話し出す客。これは迷惑。「自分は落語に詳しんだ」ということをアピールしたいのでしょうが、それは落語会が終わってから、思う存分、やってください。映画と同じで、ストーリー展開の楽しみをぶち壊しにしているのです。気づいてくださいね。

 

ワースト3:笑わない客

 

評論家、記者、落語マニアに多いのですが、最前列に座り、ノートを広げ、ニコリともせずに聞いている人たち。落語家さんに聞いても、こういう人たちは困るとおっしゃいます。場内の雰囲気は、落語家と共に、観客も一緒に作り上げるものです。みんながニコニコして、温かい雰囲気になっていれば、笑いも起こりやすくなり、場内は明るくなっていきます。そうなると落語家さんもエンジンがかかり、のってきます。より楽しい空間が造られていきます。

 

数多くの落語を観ると、ほとんど落語のストーリーは覚えてしまい、好きな落語家の基準もできてしまうので、あまり笑えなくなるのは仕方ないことです。しかし、最前列の目立つところに座るのを避けるという配慮があってもよいはず。繰り返しますが、場内の空気は、観客も一緒に作るものなんです。

 

ワースト2:噺の途中で携帯電話を鳴らす客

 

間違いなく中高年の方です。映画館やコンサートホールなど、至るところで「携帯電話の電源はお切りください」と、これだけ注意されているにも関わらず、いまだに落語会で携帯電話を鳴らす人は絶えません。

 

観客の集中力が途切れてしまうだけではありません。落語家さんは、自分なりのリズムとメロディーで語り、世界を作り上げているのです。それが携帯の呼び出し音で途切れてしまうのです。

 

「年をとっているので、うっかりした」とか「機械に弱いから」などの言い訳はお止めなさい。それは最低限のマナーですよ。

 

ワースト1:臭い客

 

中高年の方に多いのですが、明らかにしばらく風呂に入っておらず、加齢臭や体臭が強烈に匂う方がいます。これは本当に迷惑。

 

太助は一度、ある会場で強烈な体臭のおじさんに、隣り合わせたことがあります。マスクをしてハンカチで鼻をふさぎ、顔をそむけていたのですが、全く効果なし。強烈なアンモニア臭をかぐと涙が出てくることがありますが、まさにアレで、涙が出てきました。おじさんは嬉しそうに掛け声をかけたりして落語を楽しんでいましたが、私は落語にまったく集中できず、まさに涙、涙でした。

 

「年取ると汗をかかないから」「外に出ないから汚れない」とか言ってる方。人間は生きている限り、皮膚などが新陳代謝で老廃物になり、垢になるんですよ。

 

あ、それから息のにおいにも気をつけて。大声で笑うのは構わないけれど、とっても匂う方がいるのです。

 

あーだ、こーだ言ってすみません。でも、一緒に楽しく笑いたいじゃないですか。心当たりのある方、お気をつけて!

太助セレクト落語 見逃したくない!10月のお勧め落語会(2)

こんにちは、太助です。2017年10月中旬から下旬の、太助お勧めの落語会をピックアップしました。ぜひ、参考にしてください! 秋から冬にかけては、熱燗や暖かい蕎麦・うどんなどの、ほっこりした噺が聞ける季節です。この時期の落語もいいですよ~。

 

東京落語会

日時:10月13日(金) 開演:18:00

料金:2,470円

出演: 

柳家花緑時そば

春風亭昇太「権助魚」

柳家権太楼「質屋庫」

三遊亭小遊三「らくだ」

柳亭市馬「八五郎出世」

場所:ニッショーホール(虎ノ門

問い合せ:03-3464-1124

⇒このメンバーで、この価格。東京落語会の記念すべき第700回公演。落語協会の重鎮・市馬、権太郎師匠と笑点メンバーの実力を比べてみるのも一興かも。

 

大手町落語会

f:id:osamuya-tasuke:20170911225126j:plain

日時:10月14日(土) 開演:13:00

料金:4,000円

出演柳家権太郎、柳家さん喬柳亭市馬三遊亭兼好、春風亭一蔵

場所:大手町日経ホール

問い合せ:03-5216-9235

⇒大手町落語会は柳家権太郎、柳家さん喬師匠が常連。寄席の爆笑王・権太郎師匠。あなたははまるかな、それとも?

 

祝・柳亭こみち真打昇進記念

日時:10月25日(水) 開演:18:30

料金:3.200円

出演:柳亭こみち、柳家さん喬古今亭菊之丞

場所:亀有文化センター

問い合せ:03-6240-1052

⇒女流落語家である柳亭こみちさんの真打昇進興行です。落語は大半が、男性が主役の噺。女性が演じるには苦労が多いのですが、こみちさんは、持ち前の明るさと威勢の良さで、独自の芸風を確立しています。真打昇進興行はお祝い興行なので、みんな乗りまくって楽しいですよ。

 

みなと毎月落語会「談笑、三三二人会」

日時:10月26日(木) 開演:18:30

料金:3,500円

出演立川談笑柳家三三

場所赤坂区民センター

問い合せ:03-5483-0085

古典落語の名手・柳家三三師匠と古典を改作して新しい世界を創る立川談笑師匠の激突。どんな化学反応が起こるか期待大です。

 

関内寄席「柳家小三治柳家三三親子会」

日時:10月29日(日) 開演:14:00

料金:3,600円

出演柳家小三治柳家三三

場所関内ホール

問い合せ:045-662-1221

⇒名人・小三治師匠の高座に、まだ間に合う! 師匠が元気なうちに、少しでも多くの高座を見ておきたいものです。

 

落語業界の不思議な人材採用・育成

f:id:osamuya-tasuke:20170910131830j:plain

 

こんにちは、太助です。落語業界を知れば知るほど、不思議な世界だなあ、と思うことが色々あります。この不思議の一つに、落語業界の人材採用・育成があります。

 

人材募集をしない落語業界

 

「落語家求む! 日給5千円。休日・月4日。経験不問、やる気と体力を重視」

 

このような募集広告を目にすることはありません。落語家になるには、プロの落語家に弟子入りするしか方法がないからです。「この人に弟子入りしたい!」と決めたら、その落語家さんの自宅を訪問するか、劇場の楽屋口で待ち構えるなどして、弟子入りを直訴します。

 

すると大抵の場合、「日を改めて、話しを聞きましょう」ということになり、指定された期日・場所で初めてお話ができます。ここで、落語家になりたいという熱い想いを述べるわけですが、ほとんどの場合、「食べていくことができないから、落語家を目指すのはお止めなさい」と言われるようです。ここで断られるケースもありますが、「ある程度の期間をおいて、親の同意を得たうえで、親と一緒に改めて来るように」と言われる場合もあります。

 

ある程度の期間は、様々です。冷却期間を置き、親の意見も聞かせ、もう一度、客観的に「この選択でよいのか、続けていけるのか」などを考えさせるのですね。

 

こうして晴れて入門がかなうと、

 

見習い⇒前座⇒二つ目⇒真打

 

という落語家のステップを、一歩ずつ進んでいくことになります。入門してから真打になるまでは、団体や個人によって差はありますが、およそ12年から15年程度かかるようです。

 

弟子入りして、見習い、前座の期間は、師匠の付き人のようなかたちで、さまざまな用事をこなしながら、落語を教えていただきます。寄席に出演する団体の場合は、毎日、寄席に通い、楽屋仕事をこなします。

 

なぜ、落語業界は人材を発掘しないのか?

 

落語業界の人材採用で不思議なのは、まず「募集しない」ということです。ビジネスの世界では、中小問わず、すべての会社は、「優秀な人材に来てほしい」と思っています。多額の費用を使って、人材採用している企業も数多くあります。なぜなら、優秀な人材が来れば、会社は強くなるからです。「人は柱」という考え方ですね。

 

野球でも、相撲でも、優れた人材には中高生の段階から目を付け、スカウトします。逸材には、いくつもの球団や相撲部屋が競合する、というニュースもよく耳にします。

 

ところが、落語業界でこのような話しを聞いたことがありません。

 

現在、落語業界で人気・実力ともにトップクラスの柳家喬太郎師匠は、大学の落語研究会時代から「怪物」と呼ばれる逸材だったそうですが、東京の落語団体で争奪戦になった、というニュースは流れませんでした。

 

素人目には、いい人材を求めるというより、むしろ、「いい人材には来てほしくない」という感じにすら見えます。東京には550名前後の落語家さんがいますが、この人数に比べて、出演できる寄席やホールの数は限られています。逸材が来て、自分の出演場所を取られるくらいなら、来なくてもよいと考える人がいても不思議ではありません。

 

師匠にとって弟子を取り、育てることのメリットは?

 

見習いから前座になると落語業界に足を踏み入れることになるのですが、落語家としての育成は基本的に、師匠である落語家個人に一任されます。弟子入りした師匠の教えや考え方が絶対的な基準となります。師匠が白と言えば白、黒と言えば黒、という世界なのです。

 

例えば、立川談春師匠の自伝的エッセイ『赤めだか』では、師である立川談志に「修行のために築地の市場で働いてこい」と言われ、1年以上、市場で働いた経験が書かれています。「落語家の修行と市場で働くことに、何の関係があるか?」という疑問を挟む余地はないのです。

 

前座が師匠に付いて学ぶことを、以下のように語る落語家さんもいます。

 

師弟関係の目的は、徹底的に気を遣い、相手と同化する経験を身を以って体感するということにあると思ってます。

『あなたのプレゼンに「まくら」はあるか?』 立川志の春

 

 

徹底的に自分を無にして、師匠と同化し、師匠の考えることや望むことを先回りして察知できるようにする。こういう訓練を積むことで、お客様が望むことを高座から瞬時に察知できるようにする、という考え方・指導なのですね。

 

では、教えるほうの師匠である落語家さんには、弟子を取ることで、どのようなメリットがあるのでしょうか?

 

これが、経済的なメリットは、ほぼ皆無なのです。相撲部屋の場合は、所属力士人数分の部屋維持費や稽古場維持費、力士養成費などが支給されます。しかし、落語業界の場合、団体から育成費が支払われることはありません。前座に与える小遣いを含めて、すべて師匠である落語家の持ち出しです。

 

「弟子を取ることのメリットはゼロです。損ばっかりです」と、テレビで春風亭昇太師匠が言っていましたが、その通りなのでしょう。高名な落語家さんでも、弟子を全く取らない方もいます。

 

では、メリットもないのに、なぜ弟子を取るのでしょうか?

 

落語は基本的に口伝えの芸能です。師匠の話すことを弟子が聞き覚え、長い期間に渡り、伝えてきたものです。落語を次の世代に伝えるには、誰かが口承でつないでいくしかないのです。

 

ほとんどメリットがなくても、落語を伝えるという大きな義務感があるから、育成を引き受けるのでしょう。

 

人材採用も育成メソッドも基本的に個人任せの落語業界。落語は、究極的には「個」の才能に依存するものだから、それで良いのでしょうか。

 

不思議で、実に興味深い世界なのです。

 

(関連記事)

osamuya-tasuke.hatenablog.com

 

赤めだか

f:id:osamuya-tasuke:20170910131858j:plain

立川談春(著)

扶桑社

立川こしら、桂宮治:あなたはハマるか、さめるか?

f:id:osamuya-tasuke:20170907142213j:plain

 

こんにちは、太助です。8月が終わったと思ったら、予想に反して涼しい日が続いています。

 

少し雨模様の9月5日、お江戸日本橋亭で開催された「こしらと宮治4」に行ってきました。

 

日本橋のコレドで、ちょっと腹ごなし

 

会場は日本橋三越から歩いて約5分の便利な場所。そこで、コレド室町の「墨之栄(すみのえ)」で、腹ごしらえにちょいと一杯。ここは、オシャレなコレドの中では、ちょっと雰囲気の違う居酒屋。店には木製の魚箱(トロ箱)が積み上げてあり、いい感じ。

 

f:id:osamuya-tasuke:20170907142250j:plain

 

 

このお店は、新鮮な魚と種類の豊富な地酒(この店限定の酒もあり)が特徴。刺身や焼き魚はもちろん、「カニ味噌乗せフランスパン」や「サバの燻製サラダ」など日本酒に合うおつまみが数多く揃っています。人気店なので、夜7時ごろには仕事帰りの人で大賑わいに。「山和」という宮城のお酒がうまかったです!

 

いま、日本中のデパートは、仕事帰りの人をつかまえようと四苦八苦しています。だったら、このくらいベタにやんなきゃ。カッコばかりつけてないで!

 

すっかり腹も満たされ会場へ。さすが人気の落語家さん。平日にも関わらず、開場前から30名以上の方が並んでいます。開演時までには、収容人数、百名程度の会場は満員に。

 

f:id:osamuya-tasuke:20170907142330j:plain

 

この日は、桂宮治さんが、長いマクラのあと「片棒」。立川こしら師匠が長い、長いマクラのあと「風呂敷」。桂宮治さんの特徴は、とにかく明るくて、声も大きく、エネルギッシュなこと。こしら師匠の特徴は、落語業界のしきたりや作法、団体の違い、落語の所作・決めごとなど、「俺は知らないし、気にしてないぜ」的な斜に構えたポーズでしょう。

 

「これでもか」というくらいの客いじりと裏話

 

そして2人の共通点は、「業界や落語家の裏話・陰口」「しつような客いじり」「下ネタ」。こう書くと、何だか陰湿な感じがありますが、2人とも陽気にカラッと語るので、あまり気になりません。

 

しかし、この日は、「これSNSに書いちゃダメだよ」を何回、聞いたことか……(書いてほしいのね)。

 

落語の後の二人の漫談でも、しつような客いじりは続きます。こしら師匠が「ここにいる女性は、みんな俺の女だぁ!」と言うと、ドッと大受けします。綾小路 きみまろの公演と同じで、「いじってもらうのが嬉しくてたまらない」という固定ファンも多いようです。本当に皆さん、楽しそうに笑っています。

 

f:id:osamuya-tasuke:20170907142407j:plain

 

このような客いじりや楽屋話などは、はっきり言って好き嫌いがあると思います。はまる人は、はまるし、嫌いな人は一度でイヤになるでしょう。

 

ただ1つ言えることは、この二人の落語家さんは、「何がなんでも笑わせてやる。どんな手を使っても大笑いさせる」という、強い意志と気迫を感じさせてくれます。そこは、本物のプロだと思いました。

夏休みの自由研究・悲しき思い出

f:id:osamuya-tasuke:20170906000928j:plain

 

こんにちは、太助です。スマホで売買ができるフリマアプリ「メルカリ」で、夏休みの読書感想文が販売されていることがニュースになりました。

 

覗いてみると、なるほど色々な感想文の原稿が売られています。芥川龍之介羅生門」「地獄変」、夏目漱石夢十夜」、宮沢賢治銀河鉄道の夜」などなど。価格は500円から1,000円程度で、結構売れているので、やはり需要があるのでしょう。

 

教師から見ると、他人が書いた感想文は分かるそうです。しかし、夏休みが終わる直前の切羽詰まった状況では、まず宿題を提出することが最優先。買ってしまう子もいるはずです。確かに、芥川龍之介羅生門」や夏目漱石夢十夜」などは、読み終えたところで、「だから何?」という感想しか浮かばないかもしれません。

 

自由研究は、貝がらや昆虫採集などが売られています。それらを見ていて、遠い昔の、夏休みの自由研究の思い出がよみがえってきました。

 

締めきり数日前に思いついた工作は

 

小学4年生の夏休み。始業式まで、あと数日しかない状況で、自由研究がまったく手つかずの状態。親と一緒に考え始めたのですが、うまい知恵が浮かびません。

 

と、テレビで「ゴキブリホイホイ」のCMが流れてきたのです。紙の箱で出来ていて、中の餌でゴキブリをおびき寄せ、入ると出られないというアレです。

 

それを見て母が言ったのです。「ゴキブリホイホイを作ったらどうかしら。ちょうど透明なアクリルの箱があるし!」

 

他に良い知恵も浮かばないので、その案に決定。4か所に入口と通路を作り、中央に餌を置く。入口には、内側にしか開かないようにアルミ板を取り付ける。下の図のようなものを作りました(図は、上から見た感じです)。

 

f:id:osamuya-tasuke:20170906001122j:plain

 苦肉の作、自家製ゴキブリホイホイ

 

父が材料を買ってきて、父が作りました。手先が器用な父は、結構張りきって作り上げ、かなり立派なものができました。私はかたちだけ、入り口用のアルミ板を切りました。さっそくその日の晩、仕掛けてみることに。

 

適当に作った工作が、悲惨なことに

 

翌朝のことです。うちが古い家だったせいもあるのでしょう。……採れていたのです。たっぷりと。

 

その時点で初めて、この自家製ゴキブリホイホイの構造的欠陥が分かりました。ゴキブリが生きていて動きまわっているのです。しかも透明なので、はっきりと見える……。売られているものは、紙製でそのままゴミ箱に捨てられるのですが、うちのは捕獲したゴキブリをどうにかしなければならないのです。

 

母親は気味悪がって触ろうともしないので、結局、太助が近所の公園に捨てに行くことに。

 

公園の茂みで、そっと蓋を開けたところ、ゴキブリ達はすごい勢いで逃げ出していきました。私は、あまりの気持ち悪さに、箱を放り出しました。入口に付けたアルミ板が、逆さにすると落ちてしまうことに、その時、気付きましたが、「もう、どうでもいいや」と思いました。

 

夏休み明けに提出したところ、なぜかクラスで金賞を獲得しました。父が作ったものなので、見た目は立派だったのです。授業参観では、金色の紙が張られ、展示されました。

 

夏休みの宿題というと、適当に作った工作の数々と、書き散らかした、いい加減な感想文の思い出が、懐かしくもほろ苦く、よみがえってきます。

 

みなさんは、いかがですか? あの頃、宿題は順調に終えられましたか?

病院の落語会に出演させていただきました!

f:id:osamuya-tasuke:20170904164927j:plain

 

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。9月2日(土)、浅草病院内で開催された落語会に、落語教室の仲間と出演させていただきました。

 

浅草病院は、浅草からバスで約10分。隅田川沿いにある、とてもきれいな総合病院です。長期入院の患者さんを主な対象に、「隅田川寄席」という名前で落語鑑賞会をスタートし、今回は第2回となります。太助は、前回に引き続き、出演させていただきました。

 

f:id:osamuya-tasuke:20170904165032j:plain

 

初回は日曜日に、総合受付ロビーに高座を作って行われました。大変に広々としたロビーで、全面ガラス張りの窓からは、東京スカイツリーが大きく望める素晴らしいロケーションです。

 

f:id:osamuya-tasuke:20170904165124j:plain

 
車椅子の方がそのまま楽しめるようにスペース作り

 

今回は土曜日のため、診療科受付前に高座を作りました。待合用の椅子を並び替えてスペースを作り、車いすの方はそのまま観られるようにします。

 

f:id:osamuya-tasuke:20170904165204j:plain

入院中の患者さん、付き添いの職員さん、病院の方のご家族などで、総勢35名もの方が集まっていただきました。

 

上演時間は4席で、1時間。噺が1席終わるたびに、トイレなどの休憩が必要かどうかを確認します。

 

演目は、

おさむ家蛸蔵「出来心」

おさむ家太助「狸の札」

おさむ家あーか「お菊の皿

おさむ家りん生「火炎太鼓」

 

今回は、みなさん楽しんでいただけたようで、アンケートも好評だったと聞きました。患者さんだけでなく、職員の方々、そのご家族も一緒に楽しんでいただけたようで、嬉しい限りです。

 

高齢化社会におけるリクレーションの取り組みとは?

 

病院で落語会を開催するのは、いろいろな意味でとても大変なことだと思います。ただでさえ忙しい職員さんの仕事が増えますし、患者さんの容態も含めて、気がかりなことは沢山あると思います。

 

ただ、急速な高齢化が進む日本において、病院は、高齢者の方々が、これまで以上に長い長い時間を過ごす場になっていくことは間違いありません。特に入院されている方にとっては、気の晴れない長い時間を過ごす場所です。新たなリクレーションへの取り組みが、ますます必要になってくるでしょう。今後、そうした試みが、病院と地域、あるいは若い世代をリンクさせていくのかもしれません。

 

残念ながら私たちは素人なので、プロの落語家さんのようにドッと笑っていただけるような技量はありません。ただ、初回の公演で、入院患者さんから「みんな楽しそうだなぁ、俺も仲間に加えてくれよ」と声をかけていただきました。

 

 力量不足ですが、楽しく一生懸命やっていれば、それなりに意味があるのかなぁ、と思っています。

太助セレクト落語 見逃したくない!10月のお勧め落語会(1)

こんにちは、太助です。2017年10月上旬の、太助お勧めの落語会をピックアップしました。ぜひ、参考にしてください! 秋は独演会も多くなる季節。落語初心者の方は、ホール落語をいろいろ見て、好きな落語家さんを見つけてくだい。

 

日本橋 市馬落語集

日時:10月2日(月) 開演:18:45

料金:2,900円他

出演柳亭市馬(りゅうてい・いちば)

場所日本橋劇場(水天宮前)

問い合せ:03-6277-7403

⇒高座姿がきれいで声が良い、市馬師匠。誰に勧めても、間違いありません。

 

柳家三三独演会「横浜三三づくし 豚ざんまい」

f:id:osamuya-tasuke:20170902104908j:plain

日時:10月2日(月)開演19:00

料金:3,100円

出演柳家三三(やなぎや・さんざ)

場所横浜にぎわい座

問い合せ:045-231-2515

柳家三三師匠は古典落語の名手という印象がありますが、新作落語も手掛けます。この豚ざんまいは、三遊亭白鳥による創作落語「任侠 流れの豚次伝」のシリーズ作品です。

 

待ってました! 人気花形競演会

f:id:osamuya-tasuke:20170902104941j:plain

日時:10月5日(木)、開演19:00

料金:3,600円

出演柳家権太楼、三遊亭白鳥桃月庵白酒

場所北とぴあつつじホール(王子)

問い合せ:03-6240-1052

⇒人気の落語家が3人共演する落語会。柳家権太楼師匠は、寄席の爆笑王とも呼ばれる落語家さん。3人とも個性派なので、自分の目で見て、好き嫌いを決めてください(笑)

 

鎌倉はなし会「柳家さん喬柳家権太楼・桃月庵白酒三人会」

日時:10月9日(月)祝日、開演:15:00

料金:4,000円

出演

柳家さん喬「妾馬」

柳家権太楼「猫の災難」

桃月庵白酒厩火事

場所鎌倉芸術館小ホール

問い合せ:0467-23-0992 

⇒円熟の域に入った柳家さん喬柳家権太楼師匠の二枚看板に、芸歴25周年を迎えて、今、脂の乗り切った(体型じゃないですよ)桃月庵白酒さんを加えた3人会。

 

深川亭砥寄席「古今亭菊之丞隅田川馬石 二人会」

日時:10月11日(水)、開演:19:00

料金:3,000円

出演古今亭菊之丞隅田川馬石

場所:深川江戸資料館

問い合せ:03-5332-6396

⇒江戸の風俗や暮らしを知りたいなら深川江戸資料館は、絶対にお勧めです。実際に長屋が作られているので、長屋の広さなど実感できます。併設されているホールでは、定期的に落語などが行われています。

 

*情報内容は、変更等の可能性があります。購入前に確認をお願いします。

なぜ、姿勢が良い人の話しは、とても聞きやすいのか?

f:id:osamuya-tasuke:20170901115529j:plain

 

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。色々な落語家さんを見ていると、噺(はなし)が聞きやすい方は、姿勢がとても良いことに気が付きます。そこで今回は、話をする姿勢について考えてみたいと思います。

 

落語を始めて、和服を着るようになってから、プロの落語家さんの着物や着付けが、とても気になるようになりました。それまでは気が付かなかったのですが、高い着物を着ている人・安物ばかり着ている人、色や柄のセンスが良い人・センスの悪い人、着付けのうまい人・すぐに着付けが乱れてしまう人など、落語家さんでも、こと着物に関しては、かなり差があるのです。

 

また、着物姿がキレイに見えるためには、姿勢がとても大切なことに気付きました。姿勢が、噺の聞きやすさに、かなり関係があるのです。

 

太助の選ぶ、話す姿のきれいな落語家さんBEST 9

 

落語は、正座で話しをします。この姿が(高座姿とも言われます)、とてもきれいな落語家さんが何人かいます。太助が、「話す姿がきれいだなあ」と思う落語家さんは、以下の方です。

 

柳家小三治

柳亭市馬(りゅうてい・いちば)

柳家三三(やなぎや・さんざ)

立川談春

立川談修

金原亭馬生(きんげんてい・ばしょう)

入船亭扇遊(いりふねてい・せんゆう)

林家彦いち

三遊亭歌奴(さんゆうてい・うたやっこ)

(*すべて当代)

 

姿勢の良い方は、背筋がスッと伸びて、頭のてっぺんから、正座したお尻の穴までが一直線になっています。それでいて、体には余計な力が全く入っていないのです。膝の上に置いた手先もきれいです。そして何より、姿勢のきれいな落語家さんの噺は、とても聞きやすいのです。

 

姿勢の悪い落語家さんは、大概、背筋が曲がっていて、体が右か左に少し傾いています。そして、若手の落語家さんに多いのですが、熱演するあまり、体が前後左右に揺れ、落ち着きがありません(太助もそうなのですが……)。結果、着物も乱れてしまいます。

 

もちろん、姿勢が悪くても、面白い落語家さんはいます。ただ、長時間見るのはつらかったり、独演会で数席見るのはきつい、という方が多いのは事実です。

 

この理由を考えると、姿勢の良い方は清潔感や安定感があります。加えて、視線の位置(特に高さ)が安定していることも大切なポイントではないでしょうか。安心して、長い時間、見ていられるのです。

 

演者が消えて、噺がスッと前に出て、引き込まれる

 

柳家系の噺家さんは、「身振り手振りは最小限に」と教えられるそうです。身振り手振りを抑えることで、より噺そのものに引き込ませるのでしょう。

 

それに比べ、身振り手振りの大きな、オーバーアクションの落語家さんもいます。例えば、三遊亭白鳥師匠などは、時には座布団の上で立ち上がったりもします。

 

この身振り手振りに関しては、どちらが良い、悪いという比較はできません。落語家さんの話すスタイルであったり、噺の種類によっても異なるからです。

 

ただ、太助の印象では、姿勢が良くて、身振り手振りを最小限にしている落語家さんの場合、噺の途中で演者がスッと消えるように感じることがあります。ストーリーが前面に出て、際立ってくるのです。柳家三三師匠の噺などで、時々、このように感じる瞬間があります。

 

落語を見るときには、高座姿や着物にも気を付けてみると、色々な発見がありますよ。

 

ビジネスのシーンでも、大勢の前でプレゼンテーションをすることはあります。その際、姿勢に気を付けてみるのは、とても大事だと思います。背筋をスッと伸ばして、視線をふらつかせないだけでも、落ち着いた印象を与え、聴衆に安心感を与えるものです。

 

と言っても、太助は猫背なので、気が付くと背筋が曲がっているのですが(笑)。シャンとしなくちゃ!

 

関連する記事

osamuya-tasuke.hatenablog.com

 

高座姿の素敵な柳家三三師匠の「橋場の雪」

www.youtube.com

ラサール石井が志ん生を演じる演劇「円生と志ん生」

f:id:osamuya-tasuke:20170829214539j:plain

 

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。井上ひさし作の演劇「円生と志ん生」で、ラサール石井さんが古今亭志ん生役を演じるそうです。ある雑誌で、ラサール石井さんが、志ん生役を演ずるにあたり、「頭をつるつるに剃り上げるかどうか、悩んでいる」という記事を読みました。

 

井上ひさしには、評伝劇という実在の人物を主人公にした劇作が数多くあります。宮沢賢治石川啄木林芙美子小林多喜二樋口一葉平賀源内夏目漱石、等々。井上戯曲の特徴は膨大な資料から、主人公の歴史を丹念に辿り、ある一時期に焦点を当てます。例えば、宮沢賢治を主人公にした「イーハトーボの劇列車」という演劇では、賢治が上京する列車の中という極めて限定された時間が舞台となっています。

 

また、喜劇として作られるものが多く、劇中歌も豊富に入ります。評伝劇と聞くと、伝記のようなものを想像しがちですが、明るく楽しい作品が多いのも特徴です。また、史実をベースにフィクションも織り込まれ、劇世界が作られていきます。

 

古今亭志ん生三遊亭円生満州暮らし

 

この「円生と志ん生」は、昭和の名人と呼ばれた古今亭志ん生三遊亭円生が主人公。敗戦の近い満州国に巡演にやって来た二人が、敗戦により足止めされ、大連(だいれん)の街で過ごした六百日に焦点が当てられています。

 

国内では空襲も増え、寄席もほとんど無くなってしまった昭和二十年。飯も酒もたらふく食べられて、高額な給金も貰えるという言葉につられて、妻子を置いて満州に旅立つ志ん生と円生。しかし、敗戦により大連の街は、ソ連兵に取り囲まれ、文化戦犯とされた二人は逃避行を続けることになります。

 

食うや食わずの日々の中、それでも落語を忘れずに、日々の体験をネタにしながら、日本に帰る日を待ち続けます。

 

この作品のクライマックスは、終盤近くの修道院のシーンでしょう。極貧生活でボロをまとい、ひげを生やした志ん生が、修道女から蘇った救世主と勘違いされます。

 

このシーンで、落語を知らない修道女たちに、二人はこんな説明をします。

 

たとえば、貧乏を笑いのめしてステキな貧乏にかえちまう。(中略)災難であれ、厄介ごとであれ、なんでも、ワア、ステキーって見ちゃうわけね。(中略)この世が涙の谷なら、どうせ災難がつづけざまに襲いかかってくるんでしょう。それならその災難を、ステキだなと思って乗り越えちまうんですよ。

p.172「円生と志ん生井上ひさし 

 

 

「笑い」に何の意味があるのか? 繰り返し、繰り返し問い続けた、井上ひさしのテーマが、ここでも語られます。

 

「笑い」に変えることで、人生のいろいろなものを乗り越えていける。太助もそう思います。

 

ラサール石井さんは、頭を剃るべきか?

 

この作品が井上ひさしの評伝劇の中で、他の作品と比べてやや異質なのは、志ん生と円生の落語の残像が、多くの人の脳裏に強く残っていることです。樋口一葉夏目漱石といっても、教科書にあったポートレートが浮かぶ程度です。しかし、志ん生、円生となると、特に落語ファンならば、二人の口調や姿、特徴的な噺の数々がすぐに浮かんできます。

 

さて、ラサール石井さんは、頭を剃るべきかって? 

 

私は、そんな必要は全くないと思います。なぜなら演劇は、形態模写ではないからです。志ん生のモノマネをする必要はありません。もちろん時代や落語家の空気を感じさせる必要はあります。しかし、ラサール石井さんは、石井さんなりの、独自の志ん生像を作り上げれば良いのです。それが演劇というものだと思います。

 

円生と志ん生

2017年9月8日(金)〜9月24日(日)

紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA

問い合せ:03-3862-5941

www.komatsuza.co.jp

 

円生と志ん生

f:id:osamuya-tasuke:20170829214701j:plain

井上ひさし(著)

集英社

江戸時代は、金を貯めたり、出世するのは、みっともない?「三方一両損」

f:id:osamuya-tasuke:20170829073146j:plain

 

こんにちは、太助です。暑い日が続きますが、いかがお過ごしですか? 太助は「三方一両損(さんぽういちりょうぞん)」という落語を演じたくて、いま一生懸命、調べているところです。

 

この落語は、江戸っ子の金銭観が表れていて、とても興味深い噺なので、ご紹介しましょう。

 

拾った金を押し付けあう、おかしな二人

 

三方一両損」は、左官職人の金太郎が財布を拾うシーンから始まります。財布に入っていたのは三両のお金と印形(印鑑)、名前・住所を書いた書付け。この書付けで、財布を落としたのが神田の大工、吉五郎だと分かります。

 

金太郎は親切心で、この財布を吉五郎に届けに行きます。喜んでくれると思いきや、吉五郎は「余計なことをしやがって」と怒り出し、印形と書付けは受け取るが、金を要らないから金太郎にやると言い出します。

 

「せっかく届けに来たのに、なぜ金を受け取らないんだ」と怒る金太郎。

 

落とした金を届けてもらって、『ありがとうござんす』なんてんで、こいつを大事にしまっとくなんて、そんな、さもしい料簡は俺にはねえんだ」と返す吉五郎。

 

 

金太郎も受け取らない。「受け取れ」「要らねえ」を繰り返したあげく、とうとう二人は大喧嘩に。仲裁に入った大家の言うことも聞かない吉五郎。「後日、必ずお礼に行かせるから、今日は引きとってくれ」と大家に懇願され、帰宅する金太郎。

 

ところが、金太郎が住む長屋の大家が、このいきさつを聞いて、いきり立ち、とうとう奉行所に訴え出ることに。

 

これを裁くのが名奉行・大岡越前(おおおか えちぜんのかみ)。大岡越前守は、問題の三両を預かったうえで、二人の正直さへの褒美に、二両ずつ与え、この裁きを「三方一両損」と説明します。

 

吉五郎は届けられた金を受け取っていれば、三両を手にしていた。金太郎は、要らないと言って返された金を受け取っていれば、三両手にしていた。大岡越前守は預かった三両に、自分の一両を足して二人に与えた。つまり三方が一両ずつ損をして、丸く収まるという裁きだったのです。

 

あなたは「イエス」それとも「ノー」?

 

さて、現代に生きる皆さんから見て、この二人の金銭に関する潔癖感は、違和感のあるものでしょうか? あまりに馬鹿げたものですか?

 

この落語のマクラでは、

 

江戸っ子というものは、どうも金に執着がなかった、なんて言いますな。今日稼いだ金は、今日中に使ってしまう。宵越しの銭は持たないなんてことを自慢にしていたそうです。江戸っ子の代表というと職人でございますから、商人(あきんど)と違って金を蓄えるということをしない。金は腕の中に入っている。金が欲しいときには仕事をすればいい。確かに腕のいい職人になると、仕事が降るほどあったんだそうです。だから、宵越しの銭は持たないという手合いが、いくらでも居たんだそうですな。

 

と、江戸っ子の金銭感覚と金に対する美学が語られています。

 

太助が面白いと思うのは、取り調べを受けている金太郎が、

 

三両ばかりの金を拾って、ネコババするような、そんなさもしい了見を持ってるんだったら、とうの昔に、こっちゃあねえ、立派な親方になってるんでい。こっちゃあ、生涯、親方なんぞにはなりたくねえ。人間というものは出世するような、そんな災難に遭いたくねえ

 

と語るところです。

 

「大企業に入って、年収1000万以上が勝ち組だ」と言っている現代と違いすぎるでしょ? 出世するのは災難なんです。

 

しかし、近頃は、災難に遭いたくないのか、出世を拒む人が増えているのも事実。

 

あなたは、金太郎の考え方はイエスですか? それともノーですか?

 

www.youtube.com

太助セレクト落語 見逃したくない!9月のお勧め落語会(3)

こんにちは、太助です。2017年9月下旬の、太助お勧めの落語会をピックアップしました。ぜひ、参考にしてください! 落語初心者の方は、まずチケットを購入して足を運んでみるといいですよ!

 

爆笑! 特撰落語三人会

日時:9月21日(木)18:30開演

料金:3.200円

出演三遊亭白鳥桃月庵白酒桂宮治

場所さいたま市文化センター

問い合せ:03-6240-1052

⇒白鳥、白酒、宮治師匠の3人会ときたら、思いっきり弾けて、遊んでくれそうです!

 

Tatekawa Blood 志らく・談笑二人会

f:id:osamuya-tasuke:20170826112622j:plain

日時: 9月23日(土)開演13:30

料金:4,200円

出演立川志らく立川談笑、他

場所:よみうりホール

問い合せ:03-5785-0380(夢空間

⇒「江戸の風」と「イリュージョン」。立川談志が思い続けた落語の本質を引き継ぐ落語会。江戸の風を感じることができるかな。

Tatekawa Blood 立川志らく・談笑 二人会 | よみうりホール

 

なかの・らくご長屋

日時:9月24日(日)

料金:2,700円 他

出演:12:30 春風亭一朝/15:00 入船亭扇遊(入れ替え)

場所なかの芸能小劇場

問い合せ:03-6304-8545

⇒日曜日にフラッと出かけて、お気に入りの落語家さんの噺を聴くなんて、結構、贅沢。らくご長屋は、気軽に落語を楽しめる落語会です。

 

らくご街道 雲助五拾三次 大詰

f:id:osamuya-tasuke:20170826112851j:plain

日時:9月26日(火) 開演19:00

料金:一階指定席3,000円(前売)/3,500円(当日)

※当日のみ 二階自由席2,500円/仲入り後1,500円

出演五街道雲助

場所日本橋劇場(日本橋公会堂4F)

問い合せ:03-5809-0550

紫綬褒章を受賞した五街道雲助師匠の一人会。聞きやすく、分かりやすいので雲助師匠は、初心者にもお勧めです。ときには、珍しい噺も演じられます。

中央区立日本橋公会堂 - « らくご街道 雲助五拾三次 大詰

 

落語研究会

日時:9月29日(金)

料金:指定A:3,800円/指定B:3,300円(当日券のみ)

出演

柳亭小痴楽「干物箱」

鈴々舎馬るこ「鮑熨斗」

入船亭扇遊「文違い」

橘家文蔵「試し酒」

柳家三三五貫裁き

場所:国立小劇場

問い合せ:03-3746-6666

⇒当日券のみ。旬の噺家さんが勢ぞろい。これは行くしかないでしょう。

 

*情報内容は、変更等の可能性があります。購入前に確認をお願いします。

ズブズブと沈んでいく業界で働くあなたへ「誰がアパレルを殺すのか」

f:id:osamuya-tasuke:20170824222404j:plain

 

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。最近、落語業界のことを調べていて、「つくづく不思議な業界だなあ」と感じています。そんな折に手に取ったのが『誰がアパレルを殺すのか』という本でした。これが、ズブズブと沈んでいく業界の構造を的確に描いていて、大変に興味深い書籍でした。

 

そこで、今回は落語とかけ離れますが、ダメになっていく業界の構造を考えてみたいと思います。

 

この本は、不振にあえぐアパレル(衣料品)業界の様々な問題点を分析したものです。タイトルは、2001年に出版された『だれが「本」を殺すのか』(佐野眞一)を意識して付けられたものでしょう。アパレル(衣料品)と出版という業界の違いはありますが、「沈んでいく業界というのは、とてもよく似ている」ことを痛感します。

 

本書で指摘されている業界の問題点を挙げてみましょう。

 

1)業界構造の各所で問題を抱え、不況の要因が複合的になっている

 

この図はアパレル業界のサプライチェーンです。サプライチェーンとは、衣料品が消費者に届くまでの流れのことです。様々はプレイヤーが存在し、商品が製造され、消費者の手に届けられています。しかし、この各プレイヤーは分断されています。

 

f:id:osamuya-tasuke:20170824222506j:plain

「誰がアパレルを殺すのか」p.18図より作成

 

景気の低迷などで、消費者は衣料品に対しての支出を抑えるようになり、ブランド品や流行に簡単には飛びつかなくなりました。また、ネットの普及により、ネットで衣料品を買うことも当たり前になりました。このような変化に伴い、様々な問題が生まれているのですが、各プレイヤーが一体となって、その解決に取り組むことができないのです。

 

2)無駄を承知で大量に生産を続ける

 

国内のアパレルの市場規模は、1991年に15.3兆円あったのが、2013年には10.5兆円と、20年で3分の2まで縮小しています。にもかかわらず、市場に出る商品は倍増しているのです。当然、大量の売れ残りが出ます。

 

衣料品は季節性や流行が重視されるので、定価で売れなかった商品は、店舗内でのセール、店舗以外でのファミリーセール、各地のアウトレットモール、最後はバッタ屋と、値段を下げながら、場所を変えて販売されます。問題は、大量の売れ残りを前提として価格設定をして、大量の無駄な商品を作っていることです。

 

無駄を承知で生産しているのは、出版業界も同じです。本屋さんは、店頭で売れなかった本を返品することができます。この返品率は現在、約40%にもなっています。出版社は100冊印刷したら、40冊前後は売れ残ることを前提に出版していることになります。

 

どちらの業界も、無駄を前提に商品を作り、流通させる構造が、長い年月の中で強固に作り上げられ、簡単に変えることができません。

 

3)時代遅れの商習慣や制度が存在する

 

では、本屋さんで、売れなかった本を値引きして販売できるかというと、これが不可能なのです。再販制度(再販売価格維持制度)というものがあり、出版社が決めた価格でしか販売ができないのです。売れない本は、値引きはできないが、返品は可能です。新刊も大量に入ってくるので、売れそうにない本はどんどん返品されるのです。

 

アパレル業界には「消化仕入れ」という独特の商習慣が存在します。これは、以下のようなものです。

 

百貨店は売り場をアパレル企業に提供するが、商品の所有権はアパレル企業が持ったまま。販売員の確保までアパレル企業が負担する。販売員の確保まで含めて、アパレル企業が負担する。そして、店頭で商品が売れた分だけ「百貨店がその商品を仕入れた」と見なし、アパレル企業に仕入れ代金を支払う。つまり百貨店は在庫リスクを負わない。 

「誰がアパレルを殺すのか」p.56より

 

仕入れても不良在庫になるリスクがなければ、危機感もなくなり、本当に売れる良いものを仕入れる力は落ちていくはずですよね。

 

出版やアパレルには、このように他業界から見ると不思議な制度や商習慣が存在するのです。これらは、もちろん必要性があって作られ、続いているものです。しかし、環境の変化と共に、業界の変革を妨げる存在になっているのです。そして、この慣習により、既得権益を享受する層も確実に存在します。この人達も、変革を妨げる勢力となります。

 

4)そして、破壊者(Disruptor)がやってくる!

 

業界が既得権益や内輪の論理にとらわれ、矛盾に気付きながらも変革できないでいると、破壊者(ディスラプターと呼ばれる新興プレイヤーが、外から参入してくるのです。これら破壊者の特徴は、業界の構造や習慣を気にせず、さらにネットなどの最新テクノロジーを使い、参入してきます。

 

出版業界、アパレル業界の破壊者といえば、ネット販売業者でしょう。Amazonは新書の販売だけでなく、中古書籍の販売も仲介しています。中古書籍は前述した再販制度の対象とはなりません。書店に足を運ばなくても、膨大な書籍データベースから商品を探すことができ、さらに低価格の中古品を見つけることが可能となりました。

 

アパレル業界では、ネット販売のZOZOTOWNなどでの購入が当たり前になりましたし、中古品をスマホで売買するメルカリも広く利用されるようになりました。このような新興のサービスは、業界の慣習で作られているわけでなく、使いやすさや価格などが消費者のメリットになるように作られています。だから、急速に普及していくのです。

 

 

ズブズブと沈んでいく業界で働いているあなたは、今後どうすればよいのか?

 

業界全体の構造が多くの課題を抱え、ディスラプターの脅威にさらされている業界は、アパレル業界だけではなく、旅行業界、ホテル業界、タクシー業界、印刷業界、着物業界、映画業界など、いくらでもあります。この話を読んで、「自分のいる業界も同じだ」と思われる方がいるかもしれません。そこで働いている方々は今後、どうすれば良いのでしょうか。

 

大きな船だと思って安心して乗船していたら、気付けば、船底に穴が開いている。それも1つではなく、数えきれないほど……。あなただったら、どうしますか? 自分だけは助かるために真っ先に逃げる? 穴が開いていることを知らせるために、バケツを叩きながら大声を出す? 取りあえず、目の前の穴から塞いでいく?

 

f:id:osamuya-tasuke:20170824222829j:plain

 

色々な行動が想定できますが、最もよくないのは、思考停止・行動停止の状態になることでしょう。「自分一人が騒いでも、どうにもならないから」「もう少しで自分は定年だから、そのくらい持ってくれれば十分」「難しいことは、上が考えてくれるから」……。船が沈んでいくときに、何も考えず、何も行動しない人はいませんよね。

 

自分なりに考えて、自分で動くべきなのです。沈んでいく業界を助けに来てくれる救助船など、存在しないのですから。

 

(同一ジャンルの記事)

 

osamuya-tasuke.hatenablog.com

 

 

誰がアパレルを殺すのか

f:id:osamuya-tasuke:20170824222404j:plain

著者:杉原 淳一 、染原 睦美

日経BP

落語で「笑わせる力」を身につける。笑わせる人の4つの特徴とは!? (1)

f:id:osamuya-tasuke:20170821231816j:plain

 

笑ってもらえるとビジネスシーンは劇的に変わる

 

こんにちは。アマチュア落語家の太助です。この連載のタイトルは、『落語はビジネスにも役立つ「笑う力」を身につけたい』です。

 

営業やプレゼンテーションなど、様々なビジネスのシーンにおいて、「相手に笑ってもらう」ことは、とても重要な意味を持ちます。

 

営業の下手な人は、自分の会社の商品やサービスのことばかり話しがちです。いかに優れているかを延々と語ります。営業の上手な人は、相手の話しを引き出せる人です。お客様の本当に悩んでいること、困っていることを聞き出すことができる人です。

 

さらにハイレベルな人は、そのコミュニケーションの中に、「笑い」を混ぜることができます。「笑い」が起こることによって、場がなごみ、話しが弾むことは、皆さんご存知だと思います。

 

これはプレゼンテーションでも同じです。優れたプレゼンテーターは、必ずジョークを上手に織り込み、笑いを取り、雰囲気を盛り上げていきます。

 

しかし、「笑ってもらう」とひと口に言っても、簡単ではありませんよね。そこで、落語家さんの「笑わせる」テクニックを少し考えてみたいと思います。

 

優れた落語家は、「マクラ」が面白い!

 

落語は、一般的にマクラと本編で構成されます。マクラとは、本編に入る前の小噺です。通常、本編のテーマに関係ある話題が語られます。例えば、「替り目」など酔っ払いが主人公の噺であれば、酒にまつわる体験談、見聞したこと、最近のニュース(酒税が上がった等)などで小噺にします。

 

いきなり本題に入るのではなく、関連する話題で、これから始める落語への興味を持ってもらうのですね。また、現代とは風俗が違うため、理解できない習慣や言葉などを、マクラで簡単に説明する場合もあります。

 

優れた落語家さんは、このマクラがとても面白いのです。マクラで笑いを起こすことを「温める」などと言いますが、最初に観客が少しでも笑ってくれると、本編ではよりスムーズに笑いが生まれます。柳家小三治師匠のマクラの面白さは有名で、マクラだけを集めた書籍やCDも発売されているほどです。

 

マクラの面白い落語家の4つの特徴は!?

 

マクラの面白い落語家さんの特徴は、何と言っても、好奇心旺盛なことです。色々なことを積極的に見聞し、情報収集しています。柳家小三治師匠は、この典型と言えるでしょう。

 

二つ目の特徴は、趣味を含めて、何か強いこだわりのあるものを持っています。柳家喬太郎師匠の「ウルトラマン」や春風亭昇太師匠の「城巡り」など、ファンの間では有名です。

 

三つ目の特徴としては、観察眼に優れていることが挙げられます。例えば、訪れた街の様子や暮らし向きなど、とても細かく観察しています。ある落語会で、春風亭一之輔師匠が、駅から会場の途中にある24時間営業のジーンズショップについて「24時間営業する必要ってあるんですかね?」と、ボソッと話したところ大受けでした。

 

私も含めて多くの人が、同じような疑問を、ボンヤリと感じていたのだと思います。観察眼に優れている人は、「何でだろう?」という疑問を抱くことを習慣化しています。この観察眼によって、普通、見過ごしてしまうことにも面白さを発見できるのだと思います。

 

特徴として最後に挙げたいのは、どんなことでも、「笑い話」に変える力を持っていることです。落語家さんの周りにだけ、面白いことがたくさん起きるわけではありません。失敗や嫌なこと、頭にくることもたくさんあるはずです。そういうことも含めて、笑いに変えてしまおうと、日々、努力されているのではないでしょうか。

 

好奇心や観察眼などは、自分の努力や心がけ次第で身につけていけそうです。そして、嫌なことも笑い話に変える力が備わったら、とても生き方がラクになると思います。

 

太助も「笑わせる力」は、まだまだですが、日々、精進したいと思っています!

 

柳家小三治トークショー 3 ~玉子かけ御飯

ソニー・ミュージックレコーズ

f:id:osamuya-tasuke:20170821231845j:plain