落語はビジネスにも役立つ!「笑う力」を身につけたい

アマチュア落語家・太助が、落語の魅力を考えます。

落語の登場人物:おかみさん~亭主を支えるしっかり者

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。落語によく出てくる登場人物は、大体決まっています。長屋の八っつぁん、熊さん、ご隠居さん、おかみさんと子供(金ぼう、亀という名が多い)、商家の大旦那、若旦那、番頭さん。廓噺(くるわばなし)の女郎や幇間。今回は、名バイプレーヤーというべきおかみさんを取り上げます。

 

落語には夫婦をテーマにしたものがいろいろあります。夫はボンヤリしていたり、なまけ者だったりですが、それを支えているのが、しっかり者のおかみさんです。

 

落語の貧乏夫婦ものの傑作は、なんと言っても「火焔太鼓」でしょう。道具屋の甚平さんは、ボ~としていて商売が下手。つまらないガラクタを高値で仕入れてきたり、自分のうちで使っている火鉢を売ってしまったりと、へまばかりしています。女房はしっかり者で、口が達者。甚平さんに「お前さんは、世の中ついでに生きているような人」「馬鹿がこんがらがっちゃったね」など、言いたい放題。しかし、甚平さんが商売下手でも暮らしていけるのは、しっかり者のおかみさんが居ればこそ。

 

「火焔太鼓」を聴くなら、何といっても古今亭志ん生です。自身も貧乏生活が長く、借金から逃れるために18回も改名をした志ん生。しっかり者のりん夫人に支えられ、50代でようやく花開いた遅咲きの名人です。まるで志ん生と夫人が投影されているようなこの噺は、志ん生のベストともいわれる一席です。

 

「火焔太鼓」古今亭志ん生

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女房のかわいらしさ、いじらしさが描かれる落語が「厩火事」。腕のいい髪結いのお崎が、仲人のところに相談にやってくる。お崎の夫は、7歳年下で遊び人。結婚して8年になるが、夫の本心がいまひとつ分からない。そこで仲人はお崎に2つのエピソードを話し、夫の心を試してみることを勧める……。亭主の悪口をさんざんまくし立てるのに、仲人に亭主の悪口を言われるとむきになって反論するお崎が、なんともかわいらしく、いじらしい噺です。

 

厩火事桂文楽

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落語に登場するおかみさんは、いい人ばかりではなく、ちょっと危ないタイプも登場します。

 

紙入れ」の出てくるおかみさんは、亭主の留守に小間物屋の新吉を引っ張りこんでいる。亭主は泊まりだからと、ご馳走を用意してゆっくり楽しもうとしているところへ、亭主が突然、帰ってきたから大慌て。間一髪のところで裏口から逃がすのだが、新吉は紙入れを忘れていってしまう。この中には、おかみさんからの呼び出し状が入っている。紙入れを置き忘れたことに気付いた新吉は、翌朝、恐る恐る様子を見に行くのだが……。腹の座ったおかみさんの登場する不倫噺。同じジャンルとして「風呂敷」「包丁」という噺もあります。

 

「紙入れ」桂歌丸

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しっかり者のおかみさんが登場する噺で傑作と呼ばれるのが、ご存知「芝浜」です。

 

魚屋の勝五郎は酒におぼれて、しばらく仕事をさぼっている。女房に尻を叩かれ、魚を仕入れに芝の河岸(かし)に来てみると、まだ早すぎて開いていない。仕方がないので芝の浜で一服していると、流れ着いた財布を見つける。開けてみると、なんと五十両もの大金が入っていた。勝五郎は長屋に戻り、仲間を集めて、大酒を飲み、ご馳走をふるまって、その日は寝てしまう。翌朝、「酒代はどうするのか」と尋ねる女房に、勝五郎は昨日の大金の入った財布の話しをする。ところが女房は「大金って何の話しだい? 夢でも見たんじゃないか」という。どこを探しても財布は見つからない。「あれは夢だったのか」とあきらめ、それ以来、心を入れ替え、酒を断ち、仕事に打ち込むようになる勝五郎。しかし、これは女房がとっさに機転をきかせて、夢物語に仕立て上げたのであった……。

 

年末の寒い時期に高座にかけられることが多い人情噺「芝浜」を、ぜひご堪能ください。

 

「芝浜」古今亭志ん朝

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