落語はビジネスにも役立つ!「笑う力」を身につけたい

アマチュア落語家・太助が、落語の魅力を考えます。

みなと毎月落語会「白鳥、彦いち、白酒三人会」:白鳥よ、より高みへ!

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。2018年12月11日、赤坂区民ホールで開催されたみなと毎月落語会に行ってきました。出演は三遊亭白鳥林家彦いち桃月庵白酒(とうげつあん・はくしゅ)。人気落語家の三人会なので、期待が高まります。

 

みぞれ交じりの雨が降る平日の夜、会場の赤坂区民ホールには、たくさんの人が集まってきます。仕事帰りの方や、1人で来ている方も多く、この落語会の人気の高さがうかがえます。区民ホールは、客席にかなりの傾斜がつけられた見やすい会場です。開演時間の7時には満席となりました。

 

トップバッターは、林家彦いち師匠。落語家のダブルブッキング、レベルの低い高校での落語公演など、マクラでたっぷり笑わせます。

 

彦いち師匠の本編は、新作落語つばさ」。舞台は、誰もがつばさを持っている世界。主人公の彦いち師匠も、自分の翼で寄席から寄席へと移動している。しかし、この世界の隣りには普通の世界も存在していて、なにかの拍子に移動してしまうことがある。翼を持った彦いち師匠が、浅草の言問橋の欄干で羽休め(ひと休み)していると、突然、普通の世界に移動してしまい大慌てするというお話し。

 

彦いち師匠の創作落語には、タイムトラベルやパラレルワールドなどが登場するSF的な作品がいくつかあります。「つばさ」もそのひとつ。白鳥師匠のSF的な新作落語と違い、主人公が等身大なのが彦いちワールドの特徴です。異世界でも、セコいことや、ささいなことを悩んだりする主人公が笑えます。

 

白鳥師匠よ、より高みへ!

 

仲入り後に登場したのは、三遊亭白鳥師匠。彦いち師のマクラを受けて、自身のダブルブッキング体験を話し始めます。地震で新潟に来られなくなった柳家小三治師匠の代演を急きょやることになって、「詐欺!」と言われたという体験で、場内を沸かせます。

 

三遊亭白鳥師匠といえば、いまや新作落語界の巨人と言っても過言ではありません。SF的な作品から任侠もの、女性落語家向け、古典の大胆な改作など、尽きることのない発想力と構想力。「落語中興の祖・三遊亭円朝の名を継ぐのは白鳥」とまで言われる存在です。

 

この日のネタは、「シンデレラ伝説」。20年前に作ったという落語で、父親が息子に色々な名作童話を適当につなげて話していくという内容。この後に登場した白酒師匠も「ある意味、滅多にお目にかかれないものに出会えた」と言っていましたが、残念ながら、この日は首をかしげたくなる出来栄えでした。

 

北斗の拳」など、20年前の流行や風俗で作ったギャグは、いま聴くと、非常に古びたものに思えます。これは新作落語の宿命であり、白鳥師匠だけの問題ではありません。その時代の流行や風俗を取り入れたギャグは、しばらくすると古典落語以上に古びたものになってしまいます。新作落語ではストーリーの着想と骨格は残し、ギャグは年月と共に修正していく作業が必要ではないかと思います。

 

またこの日、もう1つ残念だったのは、噺の途中で「このギャグを浅草ホールでやったんだぞ、半分くらいの客はポカーンとしてたんだ」など傍白を多用していたことです。最近の白鳥師匠は、噺の途中での傍白が多いのですが、やはり残念。傍白はストーリーを断ち切ります。その類まれなる発想力から生み出されたストーリーを、私たち観客は、しっかりと聴き、その世界を脳裏に繰り広げたいのです。

 

白鳥師匠は、稀代のストーリーテーラーであり、円朝の大名跡を継ぐ方と私は信じています。ギャグをリバイスして、ストーリーをしっかりと聴かせ、将来に残る名作を生み出していただきたいと思います。

 

トリは桃月庵白酒師匠。彦いち、白鳥が場内をドカン、ドカンと笑わせてからの登場で、演目は古典落語の「禁酒番屋」。風貌に似合わない美声の持ち主・白酒師匠の落語が始まると、場内にホッとした空気が流れます。巧みな酔っ払い芸で、存分に楽しませてくれました。

 

この夜のお客さんは、目当ての演者がいて、笑おうと思って集まっている方ばかり。大声で楽しそうに笑う方も多く、盛り上がった落語会でした。業界トップクラスの人気を持つ三人。共通しているのは、マクラが抜群に面白く、また話し方、笑顔や体形になんともいえない愛嬌があります。人気の秘密を垣間見たような気がしました。

 

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