落語はビジネスにも役立つ!「笑う力」を身につけたい

アマチュア落語家・おさむ家太助が、落語の魅力を考えます。

落語の登場人物:泥棒 落語に出てくる泥棒は、ちょっとマヌケで憎めない

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。落語によく出てくる登場人物は、大体決まっています。長屋の八っつぁん、熊さん、ご隠居さん、おかみさんと子供(金ぼう、亀という名が多い)、商家の大旦那、若旦那、番頭さん。廓噺(くるわばなし)の女郎や幇間。今回は、泥棒を取り上げます。

 

泥棒噺というジャンルが存在するほど、泥棒の登場する落語はたくさんあります。これは「お客の懐(ふところ)を取り込もう」という願いが込められているそうで、泥棒噺は縁起のいい噺とされています。

 

落語に出てくる泥棒はマヌケで、ドジをふんでばかりいます。しかし、どこか愛嬌があり、憎めない連中ばかり。代表的な泥棒噺を紹介しましょう。

 

締め込み

 

戸締りのしていない家に忍び込んだ泥棒。衣類などを風呂敷に包んで逃げ出そうとしたところで、表に足音がする。裏から逃げようと考えたが、家の裏は行き止まり。仕方がないので、台所の揚げ板を上げて、縁の下に逃げ込んだ。戻ってきたのは、その家の亭主。大きな風呂敷包みに気づき、中を見ると自分や女房の衣類が。亭主は、女房がほかの男と駆け落ちするつもりだと考える。そこへ女房が銭湯から帰ってきて、二人は大げんかになる。見るに見かねた泥棒が、縁の下から飛び出して、仲裁に入るのだが……。泥棒と夫婦のやり取りがおもしろい泥棒噺の傑作。

 

三代目・古今亭志ん朝

 

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夏どろ

 

夏の蒸し暑い日。戸締りがしていない長屋の一軒に忍び込んだ泥棒。土間から座敷上がるが、畳がない。畳がないだけでなく、なんと床板さえ何枚かなくなっている。真っ暗な家の中をキョロキョロしている泥棒に、「おい!」と声がかかる。この家の住人が、裸でうずくまっていたのだ。泥棒が小刀を抜いて脅すが、男はまったく動じない。男は、自分は腕のいい職人だが、博打ですって、道具箱から衣類まで質に入れてしまい働けないという。「いっそのこと殺してくれ!」と大声を出す男。慌てた泥棒は、質から道具箱を出すための金を男に渡す。しかし、男は何も食べてないし、着物もないから、道具箱を質から出しても働けないという。仕方なく、泥棒は自分の金をそっくり男にくれてやるはめに……。

 

碁どろ

 

碁が大好きな二人の旦那。毎晩、ヘボな碁を夢中になって打っている。碁を打ちだすと夢中になってしまい、二人とも周囲にはまったく目がいかなくなる。そこへ忍び込んできたのが、碁が大好きな泥棒。ひと仕事済ませて出ていこうとするが、碁石を打つ音を聞いて我慢ができなくなり、観戦を始める。そのうちに観戦では物足りなくなり、あれこれと口を出したり、感想を述べ始める……。三代目・柳家小さんが得意としたネタで、碁が好きでたまらない人たちの様子を見事に演じました。

 

三代目・柳家小さん

 

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だくだく

 

金のない男が長屋に引っ越してくる。しかし家財道具が何ひとつないので、知り合いの先生に頼んで、壁に絵を描いてもらうことにした。タンスや床の間、金庫、ラジオ、うたた寝する猫、なげしには槍まで描いてもらう。日が暮れて男がウトウトしていると、近眼の泥棒が忍び込んでくる。タンスからは高価そうな着物、金庫からは札束が見えているので、いただこうとするのだが手に引っかからない。そこで初めて、部屋中のものがすべて絵であることに気づく。しかし、せっかく忍び込んで、手ぶらで帰るのが悔しい泥棒は、盗んだふりを始める。部屋の主がその様子に気づき、泥棒と戦うふりを始める……。

 

十代目・桂文治

 

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いかがですか。落語に出てくる泥棒は、ちょっとマヌケで憎めない連中ばかり。そういえば昔、ドリフターズや映画「男はつらいよ」で演じられるコントは、泥棒ネタが多かったなと思い出しました。紹介した噺以外にも、「芋俵」「釜泥」「出来心」「転宅」「へっつい泥棒」「やかん泥」など、泥棒の出てくる落語はたくさんあります。ぜひ、楽しんでください。

 

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太助セレクト落語 2018年6月のお勧め落語会

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。2018年6月のお勧めの落語会をピックアップしました。梅雨入りする6月は、アウトドアではなく、インドアの落語会を楽しむには打ってつけの季節!? この時期の落語会は、通好みの演者が多いのが特徴ですよ。

 

深川落語倶楽部

日時:6月8日(金) 開演:18:45

料金:3,000円

出演柳家花緑林家時蔵柳家喬太郎春風亭一之輔春風亭ぴっかり

場所:深川江戸資料館(清澄白河

問い合せ:03-3633-7961

⇒豪華なメンバーを、江戸の香りあふれる深川江戸資料館で楽しみましょう。時間があれば、ぜひ資料館も覗いてみてください。江戸時代の長屋がリアルに再現されていますよ。

 

三田落語会「大感謝祭」

日時:6月9日(土) 開演:12:30 / 17:00

料金:4,000円

出演

昼席12:30:柳家権太楼、瀧川鯉昇、入船亭扇辰、桃月庵白酒

夜席17:00:柳家さん喬春風亭一朝/露の新治/柳家三三

場所浜離宮朝日ホール築地市場

問い合せ:03-5114-7444

http://mita-rakugo.com/

⇒2018年2月末をもって休会となった三田落語会。「本格・本寸法の落語を楽しく演じて、楽しく聴く」をコンセプトに開催されてきた伝統ある落語会です。長年のご愛顧への感謝の気持ちを込めた落語会が開催されます。

 

白鳥・彦いちの新作ハイカラ通り

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日時:6月11日(月) 開演:19:00

料金:3,100円

出演三遊亭白鳥林家彦いち立川志ら乃古今亭志ん五、神田鯉栄(講談)

場所横浜にぎわい座

問い合せ:045-231-2515

http://nigiwaiza.yafjp.org/perform/archives/15707

創作落語の落語会です。みなさんがよく耳にする古典落語も、最初はすべて新作落語。ここから後世に残る落語が生まれるかもしれません。それにしても横浜にぎわい座の企画は、いつもおもしろそうだなぁ~。

 

三三・左龍の会

日時:6月17日(火) 開演:19:00

料金:2,800円

出演柳家三三柳亭左龍

場所:内幸町ホール

問い合せ:0422-53-5817

⇒同門、同世代の柳家三三柳亭左龍師匠。いまや古典の名手となった二人が繰り広げる落語は必聴です。人気の落語会なので、一度は足を運んでみてください。

 

神楽坂落語まつり「毘沙門寄席」

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日時:6月23日(土) 開演:14:00 / 18:00

料金:3,000円

出演

昼席14:00:古今亭志ん五 真打昇進襲名披露」

古今亭文菊、古今亭志ん橋、桃月庵白酒古今亭志ん五

夜席18:00:柳亭こみち真打昇進披露」

橘家文蔵柳家燕路、柳家三三柳亭こみち

場所毘沙門天善國寺・書院

問い合せ:0120-240-540

http://www.kagurazaka-dento.com/

⇒神楽坂にある毘沙門天善國寺で開催される落語会。昼席、夜席ともに真打襲名披露公演。帰りは神楽坂でちょいと一杯引っかけたいですね。

 

*情報内容は、変更等の可能性があります。購入前に確認をお願いします。問い合せの番号は、お間違えないようにお願いします。

 

人生やビジネスに「運」ってあるのだろうか?

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。いま「宿屋の富」という落語を稽古しています。

 

文無しの貧乏人が、馬喰町(ばくろうちょう)のさびれた宿にやってくる。この男、家には奉公人が数百人いて、大名や商人に数万両貸していると大ぼらを吹きまくる。人のいい主人は、それをすっかり信じ込み、「自分のところは宿だけではやっていけないので、富くじを売っているが、一枚買ってくれないか」と頼み込む。結局、ほら吹き男は、なけなしの金で富札を買うことになり、一等の千両が当たったら主人に半分分けてやるという約束までしてしまう。ところが、一文無しになってしまった男が、富くじの発表を見ていると、なんと一等が当たってしまう……。

 

この噺の中で、男が富くじを見て「こんなもので千両が、本当に当たるのかね?」と疑問を投げると、宿の主人が「旦那のようにご運のよろしい方は、金(かね)が金を呼ぶと申しまして、必ず当たると申します」と慌てて答えるシーンがあります。結局、この男は千両当たったのですから、運がよかったということになるのでしょう。

 

私たちは日常生活で、ごく普通に、「運がいい」「運が悪い」あるいは「運が強い」という言葉を使います。この運って、いったい何でしょうか? もし運があるなら、それは自分でコントロールできるものなのでしょうか?

 

ビジネスの世界に、運ってあるのだろうか?

 

太助は大学院でビジネスを教えているのですが、この授業で毎年、生徒全員に以下の質問をします。

 

ビジネスの世界で時々、「あの経営者は、運が良かったんだ」「あの会社は運が悪かった」など、運という言葉を使うことがある。あなたはビジネスに運は存在すると思うか? もし運があるならば、それは自分でコントロールできるものか?

 

社会人や留学生を含む全員は、必ずと言ってよいほど「運はある」と答えます。ただし、コントロールできるかどうかについては、回答はさまざまです。「できない」という人もいれば、「情報に鋭敏になることで、リスク回避をするなど、ある程度のコントロールはできるようになる」という人もいます。

 

このテーマについては、私も長い間、考えていました。ビジネスが運で左右され、それが自分でコントロールできないとすれば、日々の努力やビジネスについて学ぶことに、意味があるのだろうか、と。

 

運ではなくて、縁があるという考え方

 

ところがある時、その疑問が、私の中で解消したのです。

 

知人に誘われたビアパーティーで、私の隣に座っていたのが仏教大学の総長で、いろいろと話しをしていました。その席で、「ビジネスに運は存在するのか?」という疑問について、尋ねてみたのです。

 

するとその方は、静かにこうおっしゃいました。

 

仏教では運という考え方ではなく、縁というもので考えます。『運がいい、運が悪い』ではなく、良い縁・悪い縁という考え方をするのです

 

そのとき私の中で、ストンと腑に落ちたのです。

 

運はあるかどうか分からないが、良い縁、悪い縁というものは、確かにある。

 

悪いことを考えている人間の周りには、同じように悪いことを考える人間が集まってきます。楽しいことをやろうとしている人の周りには、同じような人間が集まります。やる気のある人のもとには、やる気のある人たちが集まり、2倍、3倍のパワーが生まれます。ビジネスで成功している人や会社は、ある出会いや縁によってジャンプアップするケースが、とても多いのです。

 

私は現在、このように考えています。ビジネスに運があるかどうかは、よく分からない。しかし、人生やビジネスには縁が存在する。そして、その縁は自分しだいで良い縁、悪い縁を作り出していける、と。

 

みなさんは、どう思いますか? 人生やビジネスに運があると思いますか?

 

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落語の名作「芝浜」~よそう。また、夢になるといけねえ

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。今回は落語の名作と呼ばれる「芝浜」を紹介します。「よそう。また、夢になるといけねえ」というオチのセリフは、とても有名です。『笑点』でもギャグで使われているので、みなさんも耳にしたことがあるかもしれませんね。

 

芝浜のあらすじ

 

1)魚屋の勝五郎(魚勝)は酒におぼれて、しばらく仕事をさぼっている。女房に尻を叩かれ、魚を仕入れに芝の河岸(かし)に来てみると、まだ早すぎて開いていない。仕方がないので芝の浜で一服していると、流れ着いた財布を見つける。開けてみると、なんと五十両もの大金が入っていた。勝五郎は長屋に戻り、仲間を集めて、大酒を飲み、ご馳走をふるまって、その日は寝てしまう。

 

2)翌朝、「酒代はどうするのか」と尋ねる女房に、勝五郎は昨日の大金の入った財布の話しをする。ところが女房は「大金って何の話しだい? 夢でも見たんじゃないか」という。どこを探しても財布は見つからない。「あれは夢だったのか」とあきらめ、それ以来、勝五郎は心を入れ替え、酒を断ち、仕事に打ち込むようになる。その結果、表通りに店を構え、人を使うまでになる。

 

3)三年後の大みそか。女房が勝五郎に、ぶつなり殴るなりしていいからと、財布を差し出し、いきさつを話し始める。財布の横領は死罪。このまま大金を手にしたら、亭主は本当にダメな人間になってしまう。困った女房は大家と相談のうえで、役所に届け、亭主には夢だと話すことにした。三年後、落とし主が不明で財布は下げ渡されたのである。

 

4)三年間、隠していたことを詫びる女房に、勝五郎は自分を立ち直らせてくれたと感謝する。女房は、勝五郎の労をねぎらって、久しぶりに酒でもつけようかと言う。勝五郎は喜んで、一度は盃に手をつけるが、それをおろしてひと言。

 

「よそう。また、夢になるといけねえ」

 

落語の成立

 

古典落語の祖と言われる三遊亭円朝が、「酔っ払い・芝浜・革財布」という客からのお題で作った三題噺ともいわれます。円朝以降、さまざまな落語家によって継承され、磨き抜かれた人情噺(にんじょうばなし)です。また、この落語をもとに、芝居も作られています。

 

三代目・桂三木助は、芝浜の情景描写に文芸的な色合いを付けて、高い評価を得ました。例えば、夜明け前の芝浜の光景を、三木助はこのように語ります。

 

「いやー、いい色だなあ。よく空色ってえと青い色のことをいうけれど、いや朝のこの日の出の時には空色ったって一色だけじゃねえや。五色の色だ。小判みてえな色をしているところがあると思うと、白っぽいところがあり、青っぽいところがあり、どす黒いところがあり……」

 

三木助以外にも、古今亭志ん生金原亭馬生三笑亭可楽古今亭志ん朝立川談志など名人・上手と呼ばれる落語家が、この噺を演じてきました。

 

ちなみに芝浜の舞台は、JR田町駅の西口から5分程度のところにある本芝公園の辺りだったようです。いまは埋め立てられていますが、昔は一帯が海岸で、雑魚場(ざこば)と呼ばれていたそうです。

 

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芝公園

 

好みの分かれる落語「芝浜」

 

名作と呼ばれる芝浜ですが、聞き手の好みの分かれる噺でもあります。女房の愛情と機転によって、飲んだくれの魚屋が立ち直るという人情噺ですが、「夫婦愛」+「ダメな男の再生」というテーマが古くさく通俗的で嫌いという人もいるようです。

 

また、落語家さんの中でも、芝浜の筋立てについて

・飲んだくれが、あんなに簡単に酒をやめられるのか?

・魚屋のような職人が、女房に嘘をつかれて、怒ったり、殴ったりしないのはおかしいのではないか?

と感じる方もいるようです。このため、落語家によってラストのシーンの演じ方などが少し異なります。

 

年末・年始の寒い時期に演じられることの多い作品です。芝浜の世界が好きか、嫌いか、ぜひ一度、ご自分で味わってみてください。

 

三代目 桂三木助「芝浜」

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太助セレクト落語 2018年5月中・下旬のお勧め落語会

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。2018年5月中・下旬のお勧めの落語会をピックアップしました。5月は、連休もあるため人気落語家の独演会も数多く開催されます。独演会は、落語家さんが大技・小技を繰り出しますので、色々な魅力が発見できますよ。

 

この人を聞きたい「生志・兼好二人会」

日時:5月12日(土) 開演:18:00

料金:3,000円

出演:立川生志、三遊亭兼好

場所中村学園フェニックスホール(清澄白河

問い合せ:090-2761-9769

http://rakugokai.jp/form/

⇒明るい芸風の立川生志、三遊亭兼好の落語会。この二人は、どんな共演者ともマッチできる柔軟さが魅力。生志師匠は、そろそろマクラの談志ネタを封印してはいかがかしら!?

 

 

さつまもん 立ったり座ったりの夕べ

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日時:5月14日(月) 開演:19:00

料金:3,000円

出演林家彦いち桃月庵白酒、松元ヒロ

場所:成城ホール

問い合せ:03-3482-1313

⇒空手、野球、マラソンの道を極めるはずの三人が新作落語古典落語、漫談で楽しませてくれます。にぎやかで楽しい時間を過ごしください。

 

J亭スピンオフ「白酒、三三大手町二人会」

日時:5月17日(木) 開演:19:00

料金:3,800円

出演桃月庵白酒柳家三三

場所:日経ホール(大手町)

問い合せ:03-5216-9235

⇒昨年休止したJTホールでの「J亭落語会」に代わってスタートしたJ亭スピンオフ企画「白酒・三三・一之輔(隔月替わり)大手町二人会」。三三師匠は、珍しいネタを披露することもありますよ。

 

落語で知る江戸っ子の楽しみ

日時:5月29日(火) 開演:13:00

料金:3,800円

出演柳家三三

場所:朝日カルチャーセンター(新宿)

問い合せ:03-3344-1941

https://www.asahiculture.jp/shinjuku/course/65c0b408-2642-5c93-60e6-5a509a36a100

⇒主催コメント「落語の世界に繰り広げられる江戸庶民の習慣や風習をまじえ、今も昔も変わらない人の生きる姿を笑いをとおして先人に学び、落語の魅力が、ますます深く身近に感じられるシリーズ講座です。」

 

 

たちかわ笑ホール寄席

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日時:6月8日(金) 開演:19:00

料金:2,500円

出演柳亭市馬三遊亭白鳥、台所おさん、らく兵

場所:たましんRISURUホール(西国立)

問い合せ:042-526-1311

http://www.tachikawa-chiikibunka.or.jp/a12-20180608/

⇒このメンバーの組み合わせは、何なんだ!? ノリ始めたら止まらなくなりそうな、ちょっと異色のコラボです!

 

*情報内容は、変更等の可能性があります。購入前に確認をお願いします。問い合せの番号は、お間違えないようにお願いします。

映画『幕末太陽傳』:なにもかも振り捨てて、佐平治は走る、走る

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。今回は落語に関連する映画として『幕末太陽傳』を紹介します。1957年公開された映画で、主演はフランキー堺、監督は川島雄三。落語の「居残り佐平治」をもとにして作られた映画で、その他、いろいろな落語が組み込まれています。落語を楽しめる映画というだけでなく、日本映画の大傑作であるこの作品を紹介しましょう。

 

さまざまな落語を組み合わせた映画

 

落語の「居残り佐平治」は、主人公の佐平治が、仲間を集めて品川の遊郭に繰り出すところから始まります。

 

金がないからと二の足を踏む仲間たちに、「自分に任せろ」と安心させる佐平治。飲んで騒いで豪遊するのだが、実は佐平治は一文無し。それを知った店の者は血相を変えるのだが、佐平治は居残りをして、働いて返すという。こうして「居残りさん(イノさん)」として働き始めるのだが、客扱いがうまく、機転が利くので、すっかり店の人気者になってしまう。客から「たいこ持ちではなくて、居残りを呼べ」と声がかかるほど。すっかり客をとられて、商売あがったりになった店の若い衆たちが、主人に追い出すように談判する。ほうっておけなくなった旦那が「勘定はいいから帰れ」と言うと、佐平治は「悪事を重ねてきているから、もう少しかくまってくれ」と語りだす。人のいい主人は、とうとう金三十両と着物まで与え、追い出すことになる……。

 

この落語をベースに、女郎のおそめが貸本屋の金蔵と心中しようとする「品川心中」、女郎が客にたくさん起請文(夫婦になる約束をした証拠の文)を書いてトラブルになる「三枚起請(さんまいきしょう)」、田舎者の客に会いたくない女郎が、自分が死んだことにしてしまう「お見立て」、博打で金を失った大工の父親のために娘が女郎になる決心をする「文七元結」など、さまざまな落語がエピソード的に組み込まれています。

 

さらに、攘夷志士たち(石原裕次郎小林旭など)の異人館焼き討ちなどのサブストーリーが挿入されているにぎやかな映画です。

 

フランキー堺が魅せる、粋な佐平治像

 

この映画の最大の魅力は、何といっても主演のフランキー堺の名演です。私は「居残り佐平治」と聞くと、フランキー堺の佐平治が頭に浮かびます。軽妙で、リズミカルな動作。セリフまわしの小気味よさと、粋(いき)な所作。宴会で佐平治が、和太鼓のバチをドラムのスティックのようにクルクル回すシーンが登場しますが、ジャズドラマーでもあるフランキー堺ならではの妙技です。あるいは羽織を空中に放り上げて、そのまま着るシーンも、実にカッコいい。

 

また、石原裕次郎小林旭などの大スターが脇役にまわって、実にのびのびと演技をしています(スターの扱いに関して、映画会社と監督でもめたようですが)。腹の底から楽しそうに笑う石原裕次郎を見ると、この人は天性のスターなのだなと実感します。

 

幕末太陽傳』で、私には、いつまでも心に残るシーンがあります。店の看板である花魁のおそめとこはる(左幸子南田洋子)は、機転が利いて頼りになる佐平治に惚れてしまい、取り合いになります。店を出ていくという佐平治に、「布団部屋で待っているので、どちらか一人を連れて行っておくれ」とつめよります。夜明け前、佐平治が布団部屋に立ち寄ると、二人の花魁はもたれ合い寝てしまっています。その寝顔を見て、佐平治は静かに障子を閉め、店を出ていきます。

 

この障子を閉めるときの佐平治の表情が、とても印象深いのです。せつなく、悲しく、優しい、何ともいえない表情です。そこに留まれば、温かい空間と時間が待っているのに、それを断ち切るようにゆっくりと障子を閉めます。佐平治は流れ者であり、病を抱えているため、彼女たちを幸せにはできないからでしょう。

 

このシーンを見ると、「ああ、ハードボイルドだなぁ」と思います。そして二人の女優の美しいこと。男をだます手練手管を身につけた女郎の、内に秘めている純情が垣間見えるような瞬間が、実に素敵に表現されます。

 

幕末太陽傳』は、基本的に楽しく明るい映画ですが、佐平治には一貫して、死の影が付きまとっています。これは、川島雄三監督が不治の病に侵されていて、いつも死を意識していたからでしょう。このあたりは、藤本義一の「生きいそぎの記」を読んでいただければと思います。

 

ラストのシーンで、佐平治は、すさまじいスピードで走っていきます。走って、走って、走りぬきます。死の病を振り払い、幕末から新しい時代へ向かうかのように。

 

映画は、演劇と同じく総合芸術です。脚本、監督、俳優、カメラ、照明、音楽など、さまざまな才能と技術が集まって作り上げられるものです。それらの結集した力が、ときに、とてつもない最高の瞬間を生み出すことがあります。『幕末太陽傳』は、そうした僥倖のような瞬間に出合える映画です。

 

人生で必ずや見ておきたい、お勧めの映画です。

 

幕末太陽傳 デジタル修復版 DVD プレミアム・エディション』

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『徳川家康』山岡荘八を読み終えて:現代の「戦争と平和」を考える

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。昨年12月より、山岡荘八(著)『徳川家康』を読み始め、3月末に、ようやく読了しました。

 

この本を開く気になったのは、韓国の元大統領である朴槿恵(パク・クネ)が、拘置所で熱心に読んでいるというニュースを知って、興味を持ったからです。

 

山岡荘八は、第二次大戦後の平和を、戦争と戦争のはざまの「小休止」ではないか、ととらえました。そして、「戦いのない世界を作るための条件は何か」を探るために書き上げたのが本著です。

 

戦いのない世界を作るためにはまず文明が改められなくてはならず、文明が改められるには、その背景となるべき哲学の誕生がなければならない。新しい哲学によって人間革命がなしとげられ、その革命された人間によって社会や政治や経済が、改められたときにはじめて原子科学は「平和」な時代の人類の文化財に変わってゆく

 

徳川家康』第1巻 あとがきより

 

 戦いのない世界を作るための哲学を、年頭にもう一度考えてみたくなり、読み始めました。1冊500ページ以上ある文庫本で全26巻。まさに大作であり、読み終えるまでに約3か月かかりました。

 

戦いの時代を終わらせるための条件とは?

 

読み進めるのが大変だったかというと、そんなことはありません。なにしろおもしろいのです。国民文学といわれる『宮本武蔵吉川英治(著)や『竜馬がゆく司馬遼太郎(著)なども同様ですが、多くの層から支持される小説は、やはり群を抜くおもしろさがあります。読み始めたら、ページをめくる手が止まりません。「桶狭間の戦い」や「関ケ原の合戦」など、史実として結果を知っていても、おもしろいのです。

 

20代で読んだときには、さまざまな合戦の展開にハラハラ、ドキドキしながら一気読みしたのを覚えています。30年経って読み直し、改めて『徳川家康』という小説の優れた点に気付きました。この小説は、徳川家康の一代記というより、同時代に生きた人々の群像劇です。例えば、政略の道具とされる女性たちが多数登場することも、本書の特徴です。彼女たちが、自分の生涯の意味を考えるという部分にも、かなりのページが割かれ、それぞれの「戦いと人生の意味」が問われます。

 

本書で家康は、さまざまな戦乱を生き抜きながら、人間として、あるいは覇者としての成長を遂げていきます。家康の守るべきものは、「自分」から「家」、「家」から「領土」、最終的には「国家」へと広がります。日本という国全体の幸福を考えたとき、国内での戦いを終息させ、泰平の世を作り出すことの重要性に気づいていくのです。

 

豊臣家を滅亡させた大阪夏の陣、冬の陣も、泰平を希求する心から生まれた「やむを得ない戦い」として描かれます。こうした山岡史観に違和感を覚える方もいるかもしれません。

 

しかし、戦いの時代を終わらせるためには、それぞれの領土の利害・対立を超越する意識が必要だったことに間違いはないでしょう。

 

山岡荘八は、巻末で「世界の平和は訪れるのか」というテーマについて、一抹の希望を述べ、筆を置いています。

 

まだ家康の欲したような「泰平―」は、今日の世界には根づいていない。依然として、人間の頭上から戦乱をなくするためには、どのような努力をなすべきかというテーマは重苦しく残っている。しかし(中略)世界の叡智と云われる人々は、地球を打って一丸とした法による支配の世界国家、世界連邦をつくるべきだと唱えだしている。(中略)この小説を契機にして、いよいよ家康の構想した「戦のない世界(当時の日本)」が、いろいろと世界の照明をあてられることになればうれしい。

(第26巻 あとがき)昭和42年

 

 

残念ながら世界は、現在、地球を一丸とするような考え方や行動から逆行しています。世界一の強国であるアメリカは、トランプ大統領により、自国主義へと舵を切り始めました。自国を守ろうという考えで、物理的、経済的な壁を築こうとしています。イギリスのEU脱退、米中経済戦争、ロシアの強国復活への願望など、それぞれの国が、自国のためと称して高い高い壁を作り始めています。

 

本書では、戦いが延々と繰り返されます。非常に興味深いのは、ほとんどの争いが、不信感から生まれた小さな疑念から始まることです。

 

――相手は、自分を殺そうとしているのではないか? 滅ぼされる前に、家を守るために、戦おう。

 

北朝鮮情勢などは、まさにこの心理構造ですよね。根強い不信感が根底にあります。そして、いつの時代でも戦いは、領土を守り、家族を守り、平和を守るためという名目で始まります。

 

山岡荘八が巻頭で述べたように、現在は、戦いと戦いの間の「小休止」の時期にすぎないのでしょうか?

 

徳川家康』は、日本の戦国時代を通して、改めて現代の「戦争と平和」を考えさせてくれる好著でした。繰り返しますが、読み始めたらページをめくる手が止まらなくなるような、おもしろさのある本です。世界情勢への不安が高まっている今こそ、お勧めしたい一冊です。

 

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浅草演芸ホール余一会:喬太郎、彦いち、白鳥、みんな適当に乗りまくる!

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。2018年3月31日(土)、浅草演芸ホールの余一会「満開!若手落語会」に足を運びました。

 

寄席では、ひと月を3期に分けてプログラムが組まれています。1日から10日が上席(かみせき)、11日から20日が中席(なかせき)、21日から30日が下席(しもせき)と呼ばれます。プログラムは、上席を落語協会、中席を落語芸術協会というように、この2つの団体が交互に出演するという構成がほとんどです(上野鈴本演芸場落語協会のみ)。

 

しかし、31日のある月は、その日だけの特別興行が行われるのです。これが余一会(よいちかい)です。独演会や二人会なども多いのですが、大変におもしろい興行に出合えることがあります。浅草演芸ホールがこの時期、開催する「満開!若手落語会」も、その1つです。

 

前売り券を購入し、さらに整理券を入手する

 

出演者は、ハッキリ言って若手ではありません(高座でもみなさん、同じことを言っていました)。しかし間違いなく、現在の一線級が勢ぞろいする興行です。毎回、立ち見が出るほどの人気落語会なので、今年は前売券を買うことにしました。

 

寄席は通常、当日券のみで自由席ですが、余一会など特別興行の場合は、前売券が販売されることもあります。この「満開!若手落語会」も前売券が発売され、当日、整理券が配布されて、その順番で入場します。当日券もありますが、入場は、前売券の客のあとになります。

 

前日に前売券を購入。当日は9:00より整理券配布とのことなので、10:00には窓口に駆けつけました。しかし、整理券番号は60番! 「みんな、早くから来ているな~。千葉県民にはちょっと大変だよな」と思いつつ、開場の17:00を待ちます。開場15分前から整理券順に並ぶのですが、予想通り大変な混雑です。2日間で3回、足を運んだ努力のかいあって、なんとか前方の良い席に座ることができました。

 

この日のメンバーと演目です。

 

春風亭ぴっかり☆ 「表彰状」

三遊亭天どん 「反対車」

入船亭扇辰 「一眼国(いちがんこく)」

翁家社中太神楽

林家彦いち 「つばさ」

 

仲入り

 

三遊亭白鳥 「人間椅子

柳家三三 「加賀の千代」

林家二楽紙切り

柳家喬太郎 「極道のつる」

 

今年は春風亭一之輔師匠が出演せず、天どん師匠が入りましたが、「笑いを取ろう」という気合はすごいものがありました。人力車が盛んな時代、おかしな車夫が登場する噺「反対車」で、この日の登場する演者を車でひきまくり、大受けしていました。

 

次に登場した扇辰師は、場の雰囲気を落ち着かせるかのように抑えた声で「一眼国」を聴かせます。

 

仲入り前は、林家彦いち師匠で創作落語の「つばさ」。現在の世界のすぐ隣にパラレルワールドがあり、そこでは全員がつばさを持っている。師匠も、その世界では、空を飛んで寄席の移動をしているという噺。彦いち師匠の創作落語には、「私」視点で、少し不思議な世界に入り込むというものがあります。夏目漱石の「夢十夜」を思い出させるような奇妙な味わいの作品です。その発想力、筋立て、オチの付け方、観客の盛り上げ方など、いつもながらにすばらしい高座でした。

 

演者も観客も肩の力が抜けた心地よい空間

 

仲入りの休憩後は、三遊亭白鳥師匠が登場。演目は、江戸川乱歩の同名小説からイメージして創作した「人間椅子」。マクラでクイズも出されて、観客はおおいに盛り上ります。要所要所で、ギャグや客いじりを入れて、観客をわかせます。

 

さて、太助お待ちかね柳家三三師匠の登場です。なんと、マクラを一切話さずに「加賀の千代」に入ります。大みそかに、ご隠居さんに借金に行く長屋の甚兵衛さん。女房にせっつかれ、手土産まで持たされて、いやいや足を運ぶのだが……。他の演者がマクラで盛り上げ、遊んでいるのをしり目に、あえて古典落語だけで聴かせます。いわゆる差別化ですね。堪能しました。

 

二楽師匠が軽妙なトーク紙切り芸で盛り上げて、トリの柳家喬太郎師匠の登場です。なんとこの日は独演会も含めて、3席目とのこと。「はっきり言って、疲れてるんだよね」と言いながら、高座で寝転がったり、「みんなで飲みに行く?」などと誘ったりします。そのたびに観客は大喜び。この日の演目は「極道のつる」。極道の親分が、与太郎のような子分に落語の「つる」を教える噺。疲れたと言いながら、すごいテンションで演じていました。

 

今年も「満開!若手落語会」は、とても満足できる内容でした。寄席落語の持っている良い意味での「いい加減さ」と、粒ぞろいの演者同士の競争意識が相まって、すばらしい空間ができあがりました。

 

加えて、寄席の良さは、観ながら飲食ができること。太助も日本酒を売店で購入し、一杯やりながら、豪華な顔ぶれの落語を楽しませていただきました。2日間で、3回も浅草演芸ホールに足を運んだだけの価値は十二分にありました。

 

来年もまた見に行きます!

 

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太助セレクト落語 2018年4月下旬のお勧め落語会

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。2018年4月下旬のお勧めの落語会をピックアップしました。4月は、真打や二つ目の落語家さんの独演会もたくさん開催されています。応援もかねて、足を運んでみてください。懇親会があれば、落語家さんと仲良くなれますよ。

 

立川流日本橋昼席

日時:4月20日(金) 開演:13:00

料金:2,000円

出演:立川志ら玉、立川談四楼立川志らべ立川談修、立川獅子丸、立川がじら

場所お江戸日本橋亭

問い合せ:03-3245-1278

落語立川流の一門会。登場する演者全員が、本当に全力投球。そこが立川流のいいところでもあり、疲れるところ。寄席とはちょっと違う落語会を、ぜひご覧あれ!

 

道楽亭寄席「柳亭こみちのネタおろし会 これやっていいですか」

日時:4月21日(土) 開演:14:00

料金:1,800円

出演柳亭こみち

場所:道楽亭(新宿三丁目

問い合せ:03-6457-8366

⇒キレのいい落語を聴かせてくれるこみち師匠。「女性版たけのこ」、他二席を楽しめます。

 

吉幸&左平治二人会(第7回)

日時:4月21日(土) 開演:18:00

料金:1,500円

出演:立川吉幸、立川左平治

場所:徳丸三凱亭(とくまるみよしてい)東武練馬駅

http://www.miyoshitei.net/index.html

東武東上線東武練馬駅にあるホールで行われる手作りの落語会。長く続けているだけにファンも多い二人会です。別途、懇親会もありますよ(2,000円)

 

世界でオンリー!ミュージカル落語 in まほろ

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日時:4月22日(日) 開演:12:30

料金:3,500円(要・別途1オーダー)

出演:三遊亭究斗

場所まほろ座MACHIDA(町田)

問い合せ:042-732-3139

⇒見るからに落語家的な風貌なのに、歌い始めたら本格的ミュージカル。それもそのはずで、三遊亭究斗師匠は、劇団四季出身。落語とミュージカルが合体したミュージカル落語を体験してみてください。今回は「サウンド・オブ・ミュージック」です。

 

www.youtube.com

 

道楽亭出張寄席「白酒・二人会」まっぴらごめんねぇ Part.7

日時:4月24日(火) 開演:19:00

料金:3,500円

出演桃月庵白酒春風亭百栄

場所:深川江戸資料館(小ホール)

問い合せ:03-6457-8366

⇒深川江戸資料館で開催される二人会。資料館の江戸時代の深川の町を再現した展示は、本当に見事です。長屋や船宿など、落語好きならば必見! 見学のあとで、白酒、百栄師匠の落語を楽しみましょう!

 

 

*情報内容は、変更等の可能性があります。購入前に確認をお願いします。問い合せの番号は、お間違えないようにお願いします。

第132回 江戸川落語会:柳家三三、春風亭一之輔 二人会

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。2018年3月14日、江戸川落語会を観るために、総武線新小岩駅にある「江戸川区総合文化センター」に足を運びました。

 

今回は、柳家三三春風亭一之輔の二人会。しかも、この日はホワイトデーということで、副題は「男女にまつわる噺をテーマに二人が話す」とあります。

 

「落語に男女の噺はごまんとありますが、二人はなぜその噺を選んだのか?」そこを推測するのも楽しみの1つらしいのです。期待に胸をふくらませ、駅から15分以上かかる道のりを歩きました。

 

二人が選んだ男女にまつわる噺とは?

 

開口一番のあとに、柳家三三師匠の登場。春風亭一之輔が楽屋に入ったのが開演5分前で、「男女にまつわる噺」についてなんの打ち合わせもしていないとマクラで笑わせて、始めたのが「元犬」。え……!?

 

蔵前神社に迷い込んだ白犬が、人間に生まれ変わって、奉公に出るという落語。元は犬なので、着物の着方も分からないし、足をふいた雑巾の水も飲んでしまう。しかし、変り者が好きだという隠居のところで働くことになる……。

 

三三師匠の「元犬」は何回か生で聞いたことがあるのですが、やっぱりおもしろい。犬が帯を首に巻いて、喜んで遊んでいる様子などが、楽しく描かれます。しかし、この噺は女性は出てこないはず。どうするのかと思ってみていたところ、「うちにはお元という女中がいる。お元は女だよ」と念押しを……。どうやら、これで「男女にまつわる噺」の条件はクリアらしい。とってもユルいが、おもしろかったので良しとしましょう。

 

一之輔師匠が登場し、麻生財務大臣の悪口をひとしきり語って、笑わせてから、「お見立て」に。吉原の花魁・喜瀬川(きせがわ)は、客で田舎者の杢兵衛(もくべえ)大尽が嫌でたまらない。杢兵衛に会いたくないので、若い衆に「病気だから会えない」「入院したので、ここにはいない」など、いい加減なことを言って応対させるのだが、とうとう「死んでしまった」ことになる……。これは間違いなく男女にまつわる噺です。杢兵衛の生真面目だが、しつこい田舎者の雰囲気が上手に演じられ、笑いを誘っていました。

 

仲入りのあとには一之輔師匠が、再び高座へ。2席目は「寄合酒」。長屋の若い衆が、つまみを持ち寄って酒を飲もうということになる。しかし金がないので、乾物屋や魚屋からチョロまかしてきたりと大騒ぎ。一之輔師匠は、ぶっきらぼうな口調で、ときに大声でメリハリをつける話し方。元気のよい若い衆を登場させ、笑わせます。と、ここまで書いてきて、「寄合酒」には、女性が出てこないことに気づきました。条件をクリアしてないじゃん!

 

巡り巡って三三かな

 

トリは三三師匠で、演目は「不孝者(ふこうもの)」。道楽者の若旦那が、柳橋で芸者遊びをしている。怒った旦那が、下男になりすまして若旦那を迎えに行く。若旦那はもう少し遊びたくて、空き部屋に旦那をほうり込んでしまう。女中が、「若旦那の差入れだ」と酒と肴を持ってくる。物置のような部屋で文句を言いながら酒を飲んでいる旦那。すると、酔った芸者が間違えて入ってくる。それが昔馴染みの欣弥(きんや)という女。昔語りをするうちに、懐かしさと共に恋情が、少しずつ蘇ってくる……。

 

最後で、ようやく「男女にまつわる噺」を、じっくり聞くことができました。大変にめずらしい噺で、私も初めてです。物置部屋のような狭い座敷で、昔出会った男女が静かに昔語りをする。まさに、大人の落語です。落ち着きのある風貌と声を持つ三三師匠ならではの噺を、満喫しました。

 

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帰り道。カミさんがポツリと「巡り、巡って三三だな」とつぶやきました。私もまったく同感でした。これまで、いろいろな落語家さんを観てきました。とにかく明るい人。大声を出す人。客いじりばかりしている人。古典落語に、スマホなど現代の風俗をいれる人。たくさんの落語家さんの芸風に触れてきました。

 

いろいろ観て、その結果、やはり柳家三三が聞きたくなるのです。あざとく笑いを取ろうという落語家が増える中、古典落語の世界をきちんと浮かび上がらせて、スッと酔わせてくれる。まさに大人の落語。

 

巡り、巡って三三です。

 

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落語の登場人物:番頭さんは、日本の会社の屋台骨

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。落語によく出てくる登場人物は、大体決まっています。長屋の八っつぁん、熊さん、ご隠居さん、おかみさんと子供。商家の大旦那、若旦那、番頭さん。廓噺(くるわばなし)の花魁(おいらん)や幇間。おなじみのメンバーですが、あなたの周りにも、きっと似たような人がいるはずです。ぜひ、探してみてください。今回紹介する登場人物は、「番頭さん」です。

 

子供時分から店に住み込み、働き続けてたどり着く最高位

 

番頭を辞書で引くと、

商家の使用人の最高職位の名称で,丁稚(でっち)、手代の上位にあって店の万事を預るもの。主人に代って手代以下の者を統率し,営業活動や家政についても権限を与えられていた。商家によっては番頭1人の場合と,複数制の場合とがあるが,後者の場合は,番頭のうちの上位者が支配人とされた。近代的企業組織の成立とともに消滅した。ブリタニカ国際大百科事典

 

と書かれています。番頭さんは、小僧の時代から店に住み込み、こつこつと働き続け、主人から信頼され、トップマネージャーにまで昇りつめた人なのです。主人の信頼が厚ければ、将来的には、「のれん分け」というかたちで、自分の店を持たせてもらうこともあります。

 

まるで実直を絵に描いたようですが、そこは人間。いろいろ遊んだり、たまには羽目を外したくもなります。落語に出てくる番頭さんは、仕事の能力もあるのですが、主人に隠れて、こっそり遊んでいる人も登場します。真面目で、小心者で、そのくせチャッカリしている。まさに日本のサラリーマンの典型のようです。主役の噺はあまり多くはありませんが、落語の重要なバイプレーヤーです。

 

番頭さんの出てくる噺を紹介しましょう。

 

千両みかん

真夏に、大店の若旦那が、ミカンがどうしても食べたくて、長く寝込んでしまう。うっかり者の番頭が、「買ってきてやる」と安請け合いをするのだが、現代と違って、江戸の頃。真夏にミカンなど、どこを探してもない。あちこち必死で探し回り、ようやく一軒の青物問屋で、たった1つのミカンを見つけるが、値段を聞くと「1つ千両」と言われる。あまりの高額に茫然とする番頭。汗だくでミカンを探しまわる番頭さんの様子が、コミカルに、少しせつなく描かれる。

 

柳家小三治「千両みかん」

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百年目

ある大店の番頭。遊び一つしたことがない堅物で通っていて、店では、奉公人たちを、のべつガミガミと叱っている。ところがこの番頭、実は、遊びのほうもかなりの達者。菓子屋に預けた派手な着物に着替えては、芸者のところに入り浸っている。ちょうど季節は花見の頃。番頭さん、芸者や幇間を引き連れて、船で花見に繰り出すことになった。酒が入って大胆になり、扇子を縛り付けて顔を隠し、芸者衆や幇間と大騒ぎを繰り広げる。そこへ、番頭の主人である旦那が、馴染みの医者と二人で花見にやってくる。土手の上で、二人はバッタリ鉢合わせ。突然、目の前に現れた主人に、番頭は動転し、「お久しぶりでございます」と言い、逃げるように店に戻ると、そのまま寝込んでしまう……。

 

引越の夢

人材紹介をしてくれる口入屋(くちいれや)から、大店に美人の女中がやってくる。出迎えた番頭は女中に、「この店の給金は安いが、自分が帳面をいじくって、いろいろと便宜を図ってやる」と言う。しかし「自分は夜中に寝ぼける癖があり、間違ってお前さんの布団に入っていってしまうことがあるかもしれない」とほのめかす。さて番頭さん、まだ昼間なのに店を締めて、奉公人たちを無理やり寝かしつける。みんなが寝たら、忍んでいこうと企んでいるのだが、ついつい寝てしまう。夜中、目が醒めたのが、二番番頭。忍び込もうとするが、女中のいる中二階のはしごが外されている。仕方なく、台所の吊り戸棚にぶら下がり、登ろうとするのだが……。

 

優れた経営者の側には、優れた番頭あり

 

江戸時代の奉公人は、同じ1つ屋根の下で寝食を共にし、律儀に長年、勤め上げるのです。つまり人生の大部分を店で過ごします。まさに従来の日本企業の原型は、この奉公という仕組みにあったのだなと思います。新卒一括採用、終身雇用、愛社精神、社内旅行や運動会、社宅制度……。このような長期雇用を前提とする日本型の企業経営は、現在、否定されつつあります。

 

しかし、何もかも一律に否定すべきものではありません。長期雇用を前提とする愛社精神の醸成は、ストックオプションによるモチベーションの向上とは、まったく違う性質のものだからです。

 

本田宗一郎の名番頭、藤澤武夫氏などが有名ですが、かつては優れた起業家の隣には、優れた番頭の存在がありました。発想力や創造力に優れた起業家には、その具現化を支える、しっかりとした番頭が必要なのです。経営管理の知識を振り回すようなタイプではなく、一緒に汗をかいて、夢を売上に変える人間がいて、初めてビジネスは動き出します。

 

日本企業の衰退は、優れた番頭さんがいなくなったことにも一因があると、私は思っています。ともあれ、番頭さんの登場する落語を、お楽しみください!

 

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行徳落語名人会:林家彦いち、立川談笑、古今亭菊之丞、春風亭一之輔

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。2018年3月9日、行徳落語名人会に足を運びました。出演は、林家彦いち立川談笑古今亭菊之丞春風亭一之輔に加え、紙切り林家二楽。はっきり言って、すごい豪華メンバーで、落語会を2回くらい開催できそうな陣容です。サブタイトルには「落語新時代」と書かれています。期待に胸をふくらませ、行徳文化ホールI&Iに向かいました。

 

行徳文化ホールI&Iは、東西線行徳駅から徒歩10分程度のところにある、とてもオシャレな市民ホールです。2階席もあり、639名収容できるそうです。客席は列ごとに段差がつけられ、席も前列とずらしてあるので、抜群の見やすさです。前に背の高い人がいて舞台がよく見えず、楽しめなかった経験も多いので、このようなホールはうれしい限りです。

 

地元出身の菊之丞が、地元ネタで笑いをとる

 

前座の開口一番のあと登場したのは春風亭一之輔師匠。千葉県出身の一之輔師匠は、地元ネタのマクラで笑わせてから、演目は「長屋の花見」。お花見のシーズンによく演じられる、とてもポピュラーな噺です。大家に集められた長屋の住民たち。店賃(たなちん:家賃のこと)の催促だろうと思ったら、なんと大家から花見の誘い。酒やつまみ(卵焼きやかまぼこ)も用意したというから、一同、大喜び。しかしよく聞いてみれば、酒はお茶を薄めたもの、つまみは漬物。たくあんを卵焼きに、大根をかまぼこに見立ててくれという。意気消沈した一同が、しらけたムードで花見を始め、しぶしぶとお茶を飲み、漬物をかじる……。一之輔師匠の少しぶっきらぼうな口調が、がっかりしてやる気をなくした長屋の住民たちの雰囲気にピタリと合います。

 

マクラで「本日はこれが四席目」と語っていました。落語を演じるようになって分かったのですが、落語を一席話すと、かなり疲れます。一之輔師匠は人気者で引っ張りだこなのでしょうが、どうぞ、お体をご自愛ください。

 

続いては古今亭菊之丞師匠が、紫の着物で登場します。行徳周辺で暮らしたことのある菊之丞師は、ローカルネタで場内をわかせて、演目は「たいこ腹」。暇で仕方ない若旦那が、鍼(はり)治療を始めてみようと思いつく。道具を揃え、壁や猫に鍼をうってみるのだがおもしろくない。「やはり人間に打たなければ」と呼び出したのが、たいこ持ちの一八。嫌がる一八に、褒美の金をちらつかせながら、いい加減な鍼治療を始める。菊之丞師匠は、落語に出てくる若旦那のような顔立ち。若旦那と一八の「いい加減さのぶつかり合い」を上手に演じていました。

 

後半は、談笑、二楽、彦いち師匠で、場内は爆笑の渦に

 

仲入り(途中休憩)をはさんで、三席目は立川談笑師匠。今回の落語会が「落語新時代」と銘打たれているのは、落語協会のメンバー3名に、立川流の談笑師が入っているからでしょうか。談笑師匠は、体格がよく、袴も着けているので、高座に上がるとかなりの迫力があります。その魅力は、インテリジェンスを感じさせるマクラと、古典落語の大胆な改変でしょう。談笑師のネタは「金明竹(きんめいちく)」。骨董商のオジさんのところで、やっかいになっている与太郎。店番をしていると、上方の人間がやってきてオジさんへの言づてを頼まれるのだが、早口の上方語で、何を言っているのかわからない……。この噺は、上方語のスピードの速い言い立てがおもしろいのですが、談笑師はこれを田舎訛りに変えて演じました。これが実におもしろい。場内は大爆笑でした。

 

続いて林家二楽師匠。紙切りとは、その名の通り、紙をハサミで切り、形を作る伝統芸能です。ハサミを使って、さまざまな情景や動物などを見事に、作り上げていきます。紙切りは、切っている間を持たせるために、ずっと喋り続けています。つまり、紙切りの芸+話芸が必要なのです。今回は、観客から紙切りの「お題」をリクエストしたところ、「行徳の常夜灯」というのが出されました。見たこともない二楽師匠が、客の説明をもとに想像で切り抜いていきます。文句を言いながら悪戦苦闘する様子に、客は大喜び。しかし、実に見事な常夜灯ができ上りました。

 

トリは、林家彦いち師匠。しかし、登場したときはすでに午後8時45分。「9時から、(セットの)バラシが始まるんです」と言いながら、テンポよく、マクラから本編に入っていきます。彦いち師匠のネタは「熱血怪談部」。高校の怪談サークルの顧問になった熱血教師が、体育会系のノリで生徒たちに指導するという新作落語です。実際に空手や柔道の武道経験者で、アウトドア派の彦いち師匠。キビキビとした、メリハリのある芸で、場内をわかせます。彦いち師匠が作る落語は、落ちに独特のひねりがあり、笑ったあとに余韻が残ります。今回も大笑いさせて、スッと震えがくるような見事な落とし方でした。

 

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今回の落語会は、実に豪勢なものでした。少し詰め込み過ぎの感もありましたが、主催者の意気込みが伝わってくる豪華な落語会で、大いに楽しませていただきました。

 

そういえば、誰かがマクラで言ってましたが、「行徳文化ホールI&I」のアイ・アンド・アイって、なんの略なのでしょうか? ご存じの方がいたら教えてくださいな。

 

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老人ホームの落語会に参加させていただきました!

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。先日、浅草にある老人ホームの落語会に参加させていただきました。この落語会は、同じ落語教室に通う方が、ホームに交渉して始めたもので、今回が2回目となります。

 

9階建てのとても立派な施設で、総ベッド数が161もある大きな特別養護老人ホームです。

 

私は初参加なのですが、初回の落語会は、なかなか大変だったそうです。参加意思や落語を聞いた経験のある・なしに関わらず集まってもらったため、途中で口喧嘩が始まったり、ヤジが飛んだり……。落語を楽しむという雰囲気ではなかったようです。

 

その経験を踏まえ、今回は、人数は少なくてもよいので、ショートステイの方を中心に、落語を聞きたいという意向のある方だけにお集りいただきました。開催場所も大きな部屋を使わずに、談話スペースで行われました。

 

お集りいただいたのは、約20名。3名の演者で30分~40分程度、落語をさせていただきました。

 

演目は

おさむ家太助「粗忽の釘

おさむ家かいかい「寿限無

おさむ家りん生「親の顔」

 

前回、いろいろ大変だったと聞いていたのですが、今回は、みなさん、かなり集中して聞いていただき、笑いも起こり、なごやかな雰囲気の中で終えることができました。最初から最後まで寝ている方もいましたが、それはそれで良いのだと思います。大勢の中で、のんびりとした時間を過ごされたのですから。

 

高齢の方に楽しんでもらえる落語とは?

 

老人ホームなどで、かなり高齢の方に聴いてもらう落語は、演じ方が違うのだなと感じます。

 

落語は基本的にストーリーがあります。場所や登場人物を想像してもらいながら、物語を理解し、ときに笑ってもらうというものです。しかし、高齢になると、噺(はなし)の展開や会話のスピードについていけない方が増えてきます。このため、場面転換や登場人物が少ない噺のほうが向いていますし、できる限りゆっくりと話したほうがよいでしょう。

 

私は、とても早口で演じるほうなので、今回は意識的にゆっくりと話してみました。しかし、あとで聞いたところ、やはり早かったようです。自分の持っているリズムを変えるのは、なかなか難しいものがあります。

 

浅草演芸ホールなどに行くと、身の周りの出来事や話題ばかり話して、本編の落語をまったく演じずに高座を降りてしまう落語家さんがいます。あるいは、客いじりばかりしている落語家さんもいます。私のようなマニア的・落語ファンは、「また、ネタをやらないのかい」と、まゆをひそめたりします。

 

しかし、あれも落語の1つのテクニックなのだな、と気づかされます。浅草演芸ホールは観客の大半が高齢者。観光バスツアーのコースにもなっているので、普段、落語をほとんど聞いていない方も大勢来ます。短時間で、複雑な物語を理解してもらい、笑いを引き出すのは困難です。

 

「将棋の藤井聡太くん、すごいですよね。あんな孫がいたら、うれしいですよね~」と話題を投げて、うん、うんと頷いてもらうほうが、手っ取り早く、確実です。つまり共感してもらうのですね。

 

老人ホームで落語をさせていただくと、噺を理解してもらい笑いを引き出すよりも、まず共感してもらい、頷いてもらうことが出発点であることに、改めて気づきます。落語の基本は、やはり観客とのコミュニケーションなんですね。

 

老人ホーム落語は、施設の方の準備や気配りが、とても大変だと思います。今回も、自力歩行の難しい方が大半だったので、談話室に集まるにも職員さんの介助が必要です。お集りのみなさんが、少しでも楽しい時間を過ごせていただけたなら、うれしい限りです。

 

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太助セレクト落語 2018年3月中・下旬のお勧め落語会

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。2018年3月下旬のお勧めの落語会をピックアップしました。落語には花見の噺(はなし)や春の噺がたくさんあります。おだやかで、のんびりしたこの季節は、落語の世界にひたるにはピッタリ。ぜひ、寄席やホールに足を運んでください。

 

東京落語会

日時:3月16日(金) 開演:18:00

料金:2,470円

出演

柳家小三治粗忽長屋

橘家円太郎「化物使い」

三遊亭円輔「長屋の花見

春風亭柳橋「天災」

ほか

場所ニッショーホール

問い合せ:03-3464-1124

小三治師匠をはじめ、今回は落語協会落語芸術協会の2つの団体からベテランが勢ぞろい。円熟の噺が聴けるかな? 当日券が50枚程度あり。

 

扇辰日和

日時:3月17日(土) 開演:13:45

料金:2,000円

出演:入船亭扇辰「明烏」ほか一席、三遊亭歌太郎、春風亭ぴっかり

場所なかの芸能小劇場(中野)

⇒女性や若旦那の出てくる噺も、お得意な扇辰師匠。NHK新人落語大賞受賞、今年の注目株・歌太郎さんも登場しますよ。

 

寄席:鈴本演芸場

日時:下席(3月21日~30日) 

開演:昼の部12:30~16:30

料金:2,800円

出演柳家さん喬柳家喬太郎春風亭一朝林家彦いち、ほか

場所鈴本演芸場

問い合せ:03-3834-5906

⇒人気者の喬太郎、彦いち、実力派のさん喬、一朝が並ぶ豪華なメンバー。混雑が予想されますので、少し早めに入場を!

 

黒門亭(2部)長講二題

日時:3月18日(日) 開演:14:30

料金:1,000円

出演

林家正雀「梅若礼三郎」

春風亭三朝愛宕山

場所落語協会

問い合せ:03-3833-8563

⇒勉強会的に開催される落語協会の落語会。今回は長い噺をたっぷり聴けます。しかも1,000円! 席数が少ないので、当日はお早めに。

 

限界突破!「志の太郎・らく人・寸志 大ネタ挑戦三人会」

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日時:3月19日(月) 開演:19:00

料金:2,000円

出演

立川志の太郎:小間物屋政談

立川らく人:文七元結

立川寸志:崇徳院

場所:神田連雀亭

問い合せ:090-1045-5014

立川流の二つ目さんによる大ネタ挑戦の落語会。毎回、熱のこもった高座が楽しめますよ!

 

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落語入門「寝床」:げに恐ろしきかは素人芸かな

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。2018年初頭から、「寝床」という噺(はなし)を稽古しています。「寝床」は、下手な素人芸を指す言葉として使われるほど有名な落語です。

 

ある大店の旦那が、義太夫に大変に凝っている。自宅で義太夫の会を開催しては、貸している長屋の連中を集め、聴かせている。しかし、この旦那の義太夫が、とてつもなくひどい。今夜も義太夫の会なのだが、長屋の住民は、「風邪をひいた」「急に大量の仕事が入った」「早朝に出かける」など、いろいろと理由をつけては断ってくる。結局、誰も参加しないので、仕方なく旦那は、店の奉公人たちに聴かせると言い出す。ところが店の者も、病気やケガを口実に出席しようとしない。旦那はようやく、自分の義太夫をみんな聴きたくないことに気づき、大変なおかんむり。「長屋の連中や店の者は、すぐに出ていけ!」と宣言して、ふて寝をしてしまう。家を追い出されるよりは、義太夫を聴くほうが良いだろうと、みんな渋々やってきて、義太夫の会が始まるのだが……。

 

演者も多く、名演が多い「寝床」

 

「寝床」は、演者も多く、名演もたくさん残っています。この落語のおもしろさは、旦那の機嫌がころころと変わっていく様子です。会の当日、やる気満々で上機嫌の旦那が、みんなの欠席を知らされて不機嫌になっていき、ついには怒りが爆発。しかしまた、うまくおだてられて機嫌が回復していく。この様子を、八代目・桂文楽はみごとに演じました。

 

この落語の演じ方には、いくつかのパターンがあります。1つは、前述した「旦那の機嫌の変化」に重点を置く演じ方。もう1つは、旦那の義太夫のひどさを、会の参加者たちが口々に罵るというものです。五代目・古今亭志ん生は、義太夫のひどさの逸話として、以下のようなギャグを入れました。

 

義太夫のあまりのひどさに逃げ出した番頭を、義太夫を語りながら追いかける旦那。番頭は、蔵に逃げ込み、鍵をかけてしまう。すると旦那は、はしごを持ち出してきて、蔵の高いところにある窓から義太夫を語り込む。旦那の義太夫が、狭い蔵の中で渦を巻き、番頭は七転八倒の苦しみを味わう。

 

実に不条理というか、ぶっ飛んだギャグで、爆笑を誘いました。そのほか、八代目・橘家圓蔵は、ストローで耳に義太夫を注ぎ込むというギャグで、笑いをとっていました。

 

素人芸は、演じている者だけが気持ちよい世界

 

「寝床」が多く演じられるのは、聞き手が「こういう人、自分の周りにも確かにいる」と感じさせてくれるからでしょう。カラオケや楽器、芝居など、いわゆる素人芸は、ほとんどの場合、演じている本人だけが気持ち良く、見物している他人には面白くも何ともありません。

 

少し前までは、クラブやスナックにカラオケのステージが用意されていて、他の客のカラオケを聞かされることが、よくありました。酔っているせいもありますが、みなさんはっきり言って下手くそです。たまに上手な人もいるのですが、そういう方に限って、何回もしつこく出てきます。素人の歌というものは、少しうまくても、繰り返し聞けるものではありません。

 

と、ここまで書いてきて、「素人落語だって、まさにそうじゃないか!」と突っ込まれそうです。はい、そうなんです。演じている者は楽しく、聞く方はかなりの苦痛。マチュア落語も、まさに「寝床」の世界です。

 

しかも名人・上手が演ずる「寝床」を素人落語でやるなんて、ギャグの1つ1つが、ブーメランのように、わが身に襲いかかってきそうです。プロの落語家さんでも、序列や流派があり、誰でもできるという噺ではありません。

 

でも……いいんです! 素人だから。演じたいと思ったら、やってしまう。これが素人芸のいいところなんです(笑)。

 

げに恐ろしきは素人芸かな……。4月28日の発表会が楽しみです。

 

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八代目・桂文楽「寝床」

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