落語はビジネスにも役立つ!「笑う力」を身につけたい

アマチュア落語家・おさむ家太助が、落語の魅力を考えます。

落語の登場人物:若旦那は、大塚家具や大王製紙の跡取りと似ているの?

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。落語によく出てくる登場人物は、大体決まっています。長屋の八っつぁん、熊さん、ご隠居さん、おかみさんと子供。商家の大旦那、若旦那、番頭さん。廓噺(くるわばなし)の花魁(おいらん)や幇間。おなじみのメンバーですが、あなたの周りにも、きっと似たような人がいるはずです。ぜひ、探してみてください。今回紹介する登場人物は、「若旦那」です。

 

タンポポの綿毛のようにフワフワとしたお坊ちゃま

 

落語に登場する若旦那は、大店(おおだな:大きな商店)の跡取り息子。働くことは大嫌いで、女や芸事にうつつを抜かしています。店の金を持ち出しては、吉原の花魁に貢ぎ、父親にどんなに叱られても気にしない。挙句の果てには勘当され、店に出入りしていた職人の家などに転がり込む。見かねた周囲の人の勧めで、船頭や唐茄子(とうなす:カボチャ)売り、湯屋(銭湯)などの仕事に就くのですが、甘いことばかり考えていて、トンチンカンな言動を繰り返します。

 

船徳」「唐茄子屋政談」「湯屋番」「明烏」「干物箱」「よかちょろ」「二階ぞめき」など、若旦那噺も落語の中では、一大ジャンルを作っています。落語の若旦那は、勘当されても、つらい仕事をしても、基本的に心を入れ替えません。いつでも甘いことを考えています。若旦那にとって大事なのは、「もてること」や「カッコいいこと」なのです。このタンポポの綿毛のようにフワフワとした生き様が、落語の世界では、とても楽しい世界を作るのです。

 

現実世界にも、落語のような若旦那はいるのかな?

 

現実の世界で、落語の若旦那のような人は、実際にいるのでしょうか? これまで、さまざまな企業のトップとお会いする機会があったのですが、一代で財を成したような剛腕な経営者の跡取りは、どちらかというと堅実で小粒なタイプが多いという印象があります。

 

色々と考えていて頭に浮かんだのが、大王製紙の跡取り息子です。社長、会長として在任中にギャンブルで106億円も失ったあげく、会社の金を流用して逮捕され、懲役4年の実刑判決を受けました。有名人や女性芸能人との華麗な交遊も随分、噂になりました。若旦那度はかなり高そうです。

 

あるいは大塚家具の社長になった長女はどうでしょうか? 創業者である父親と経営権を巡り、派手な親子喧嘩をしたあげく、父親を追い出し、社長の座に就きました。しかし、就任後2年間で約100億円の大損失を計上しそうです。落語の若旦那のように遊び惚けているわけではありません。むしろ若旦那とは正反対のタイプともいえるでしょう。しかし皮肉なことに、親の築いた大店を、娘が派手に傾かせているのです。

 

こうして書き出してみると、どちらのケースも、時間が経っていないせいもありますが、生生しくて、ネガティブなものばかりが目についてしまいます。芝居にはできるかもしれないけれど、落語には、とてもできそうにありません。

 

悲劇や堕落、欲望や対立など、日常世界で起こりうるドロドロしたものは、そのままでは「笑い」にはなりません。辛いものや悲しいものも含めて、すべてを「笑い」に変えてやろうという強い意志と、「笑い」に昇華させるための長い長い時間が必要なのです。

 

落語の世界の若旦那たちは、肩の力が抜け、みんなフワフワと呑気に生きています。ぜひ、そのいい加減さを楽しんでみてください!

 

船徳

 道楽のあげく勘当された若旦那の徳さん。なじみの船宿に居候をしているのだが、「自分も船頭になりたい」と言い出した。そんな細い体では無理だと親方は忠告するのだが、聞き入れない。夏の盛りに、船宿の馴染み客が、「浅草まで船で行きたい」と、友人を連れてやってくる。ちょうど船頭が全員出払っていて、徳さんが船頭を務めることになるのだが……。

 

船徳古今亭志ん朝

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参考文献

『溶ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』

井川意高(著)

双葉社

 

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忖度(そんたく)と禁演落語:権力への過剰すぎる配慮

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。2017年、「忖度(そんたく)」という言葉が広まり「2017ユーキャン新語・流行語大賞」にも選定されました。この言葉の本来的な意味は「他人の気持ちをおしはかる、推察する」というもので、特に否定的なニュアンスはありません。しかし、流行語になった忖度は、「権力者である安倍首相の意向を、役人などが推察し、その意にかなうように物事を推し進めた」ことを表す言葉として使われました。

 

落語界にもある忖度の歴史

 

落語の歴史にも、この忖度が働いた事件があります。それが禁演落語の選定と上演自粛です。

 

禁演落語とは、昭和16年(1941年)10月、戦時下にふさわしくないとして、落語家が上演を自粛した落語のことです。このとき選ばれた噺は53編で、自粛の証しとして、浅草の本法寺に「はなし塚」を建て、葬りました。

 

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53編は、以下の噺です。五人回し、品川心中(下)、三枚起請、突き落し、ひねりや、辰巳の辻占、子別れ(上)、居残り佐平次木乃伊取り、磯の鮑、文違い、茶汲み、よかちょろ、廓大学、明烏、搗屋無間(つきやむげん)、坊主の遊び、白銅、あわもち、二階ぞめき、高尾、錦の袈裟、お見立て、付き馬、山崎屋、三人片輪、とんちき、三助の遊び、万歳の遊び、六尺棒、首ったけ、目ぐすり、親子茶屋、宮戸川悋気の独楽、権助提灯、一つ穴、星野屋、三人息子、紙入れ、つづら間男、庖丁、不動坊、つるつる、引越しの夢、にせ金、氏子中、白木屋、疝気の虫、蛙茶番、駒長、おはらい、後生うなぎ

 

ネタの内容から、女郎買いもの、酒のみもの、泥棒もの、間男もの、不道徳もの、残酷ものなどが対象になったそうです。

 

しかし、この中には、「品川心中」「子別れ」「居残り佐平治」「明烏」など、名作、大作と呼ばれる噺が入っています。なぜ、これを選んだのかよく分からないという噺も、いくつかあります。

 

権力に対する過剰なまでの配慮

 

この禁演落語の出来事には、2つの特徴が見受けられます。1つは、落語の選定を、落語家自身が行ったということ。なんらかの判断基準が示されていたわけではなく、自主的に「時局に不適切であろう」という基準を定め、噺を選定しました。そして、上演禁止されたのではなく、自主的に規制しました。つまり権力の意向を「忖度」したのです。もう1つの特徴は、その規制範囲が、広範で過剰とも思える点です。

 

そこには、2017年に発覚した森友・加計学園問題における「忖度」と、ある部分、通底するものを感じます。それは権力者に対する過剰なまでの配慮です。

 

戦時下で落語そのものを演じられなくなるという危機的状況と、政治家と役人の癒着を同一で語ることはできません。しかし、権力に対する恐怖、保身からくる忖度の過剰さには、似たものを感じるのです。

 

ちなみに戦後、GHQの統制下でも新たに禁演落語が選定されたそうです。このときは仇討や復讐が含まれるものなどを中心に選んだそうですが、やはり、なぜ選んだのかよく分からない噺も含まれています。

 

太助が次回、演じたいと思っている「寝床」という噺は、この2回目の禁演落語に選定されています。義太夫好きだが下手くそな旦那が、店子や店のものに、ひどい義太夫を強引に聞かすという噺です。一体、どの部分を問題視したのか、よく分かりません。これも過剰なる忖度といえそうです。

 

はなし塚に名作を葬ってしまったのは、落語界にとっては悲しくも辛い歴史です。権力や世評に対して過剰なる忖度が生まれるとき、私たちは何かを1つずつ葬っているのかもしれません。

 

ともあれ、名作「寝床」をお楽しみください!

 

参考文献

『禁煙落語』小島貞二・編著

ちくま文庫

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古今亭志ん朝「寝床」

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落語 THE MOVIEに見た柳家喬太郎のすごみ

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。落語教室で、1人の持ち時間は15分と決められています。これは厳密に守られていて、指導いただく師匠が、稽古の際もタイムチェックをし、オーバーしていれば指摘されます。

 

このため、演じたい噺(はなし)を決める際には、15分で収まるかどうかを、まず考えます。

 

落語の噺の長さを尺(しゃく)と呼びます。この尺は、短い噺で10分から15分、中編で25分から40分、長編で40分から1時間程度でしょうか。寄席で1人の落語家の持ち時間は15分から20分、ホール落語では一般的に20分から40分程度です。

 

持ち時間15分は、寄席でのプロ落語家さんの持ち時間と同じですから、素人には十分すぎる時間といえます。「子ほめ」「つる」「道灌」「転失気」など、前座噺と呼ばれる、登場人物の少ない噺は15分あれば十分です。

 

問題は、25分程度の時間が必要な、中編の落語を演じたい場合です。この場合は、台本作りの段階で噺を短くする作業が必要になります。「尺を詰める」と言うそうですが、この作業がとても大変なのです。

 

落語の噺を短くする2つの方法

 

噺を短くするには2つの方法があります。1つ目は、ストーリーには手を加えずに、噺全体から少しずつセリフを削っていく方法。もう1つは、全体の構成から、いくつかのシーンを削ってしまう方法です。

 

このシーンを削る方法は『落語家はなぜ噺を忘れないのか』(柳家花緑・著)に詳しく書かれていますので、要約して引用します。ここで例として挙げられている噺は「初天神」です。これを花緑師は9つのシーンに区切ります。

 

1.家の中/家族の会話

初天神に行く父親に、息子の金坊が「連れて行ってくれ」とせがむ。何も買わないことを条件に出かけることに。

 

2.道中/歩き出し

父親が金坊に「言うことを聞くように」と念押しをする。

 

3.道中/人力車との遭遇

親子連れが乗った人力車と遭遇し、金坊が「同じ親子なのに、あっちは人力、こっちは歩き」と皮肉る。

 

4.道中/よいとこらせっ!

父親と母親に手を引かれた子供が通る。両親が子供の手を引っ張り上げると、子供の足が宙に浮く。その様子が楽しそうで「自分もやってほしい」と言う金坊。父親が持ち上げると、金坊ははしゃぐ。それを見て父親も喜ぶと、金坊が「無邪気だね~~」。

 

5.道中/おねだり開始

縁日の雑踏に入ると、金坊がおねだりを始める。

 

6.お店/水菓子屋

果物を打っている屋台でおねだりをする金坊。父親は「約束を守らなきゃダメだ」と断る。

 

7.お店/飴玉屋

飴玉をねだる金坊。根負けした父親が1つだけ買い与える。飴玉をなめながら歩く金坊だが、父親に水たまりを注意された拍子に飲み込んでします。怒る金坊。

 

8.お店/団子屋

団子をねだる金坊。結局、1本買うことになるが、蜜の団子を買うか、あんこにするかでひと騒動。蜜の団子を買うことになるが、父親は金坊が蜜を着物に付けてしまうからと、ペロペロとなめてしまう。

 

9.お店/凧屋

金坊は凧屋でおねだり。父親はまた買うはめに。「今、あげだい」という金坊と原っぱに行くが、父親が凧あげに夢中になってしまう。金坊は「お父っつぁんなんか、連れてくるんじゃなかった」

 

本書によれば、初天神は場面がきっちり変わるので、いくつかのシーンをバッサリ抜いてしまえば、時間を調整できるそうです。花緑師は、1.「家の中」から3.「人力車との遭遇」まで演じて、8「団子屋」にいって、サゲてしまうこともあるそうです。

 

落語 THE MOVIEに見た柳家喬太郎のすごみ

 

しかし、実際に尺を詰める作業をしてみると、難しい部分が多々あります。古典落語は、長い年月の中で、多くの演者によって練り上げられているため、無駄なシーンやセリフがあまり無いのです。シーン1があるから、シーン2で笑いがとれるように構成されていたり、後半の伏線が隠されていたりします。

 

プロの落語家が、どのように噺を短くするか分かるのが、NHKで放映されている「超入門!落語 THE MOVIE」です。この番組は、古典落語の演目を映像化しているのですが、落語家の喋りに合わせて、俳優がいわゆる「口パク」で登場人物を演じます。

 

通常、30分の放送時間で、2本のネタが演じられるので、1本あたり15分程度の尺になっています。この短い時間にもかかわらず、「育代餅」や「妾馬」など、30分くらいかかる噺が取り上げられることがあります。

 

『落語家はなぜ噺を忘れないのか』の中で、花緑師は以下のように述べています。

 

尺を縮めるためには咀嚼力が必要です。ただ噺を短くするだけなら容易にできるんです。あらすじをザッとしゃべればいいのですから。(p.97)

 

短い尺に噺をまとめながらも、古典落語の面白さを損なわず、俳優が合わせられるように一言一句、明瞭に話すには、落語家さんにも相当な力量が必要です。このため毎回、口跡のよい、実力ある落語家さんが登場します。

 

先日、この落語 THE MOVIEで、柳家喬太郎師匠が「井戸の茶碗」という落語を演じました。この放送を見て、太助は驚きました。

 

この落語は、「正直清兵衛(せいべえ)」とあだ名のあるクズ屋が主人公。長屋住まいの貧乏浪人から引き取った仏像を、細川家の侍に売ったところ、中から五十両の金が出てくる。侍は「自分が買ったのは仏像なので、金は売り主に返せ」と言う。売った浪人は、「売ったものだから自分のものではない」と金を受け取らない。両者の間で、清兵衛さんが右往左往するという落語。この噺の特徴は、登場人物が全員、正直で善人揃いなこと。

 

ところが喬太郎バージョンでは、清兵衛さんが不正直なのです! 金を持ち主に返してくれという侍に、こっそりと貰ってしまうことを勧めます。

 

侍が「なぜ、お前が正直清兵衛だか、さっぱり分からんな」と言うと、清兵衛は「自分の欲望に正直な清兵衛なんでございます」と答えます。

 

他の落語家さんは、超入門のコンセプトのもと、噺の基本的なストーリー、人物設定には手を付けないので、この大胆な改変には、ビックリしました。

 

そして、短編に縮めてあるにもかかわらず、とんでもなく面白い「井戸の茶碗」に仕上がっていたのです。他の演者が、落語初心者にストーリーや設定を伝えようとしているのに対して、喬太郎師は「落語の面白さ」そのものを伝えようとしたのでしょう。

 

そして、そこには紛れもなく、高座でみる喬太郎ワールドが出現していたのです。尺を縮めることでさえ大変なのに、たった20分で独自の世界を作り出してしまう。柳家喬太郎という落語家の凄みを、目の当たりにしたような気がしました。

 

超入門!落語 THE MOVIE(高座映像)井戸の茶碗

超入門!落語 THE MOVIE

 

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柳家小三治に会いたくて。会いにいく~第131回:江戸川落語会

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。柳家小三治師匠が出演すると聞いて、12月16日に開催された江戸川落語会に足を運びました。江戸川区在住だった橘屋圓蔵師匠が尽力して始まった落語会で、今回で第131回を迎えます。

 

会場は、小岩駅から歩いて15分ほどの江戸川区総合文化センター・小ホール。毎回、落語家さんの誰かが、駅からの遠さをマクラで語ります。暑い時期には確かに「ちょっと遠いな」と思いますが、このホールは天井も高く、音の響きも良いので気に入っています。

 

このセンターには、レストランが入っていて、開演まで食事をしながら待っていられるのも魅力のひとつです。この日も席は、江戸川落語会の常連さんたちで埋まっています。小三治師匠の長年のファンの方達でしょう。70代くらいの方が多いようです。

 

雪の降る光景が目に浮かぶ扇辰師の「雪とん」

 

今回の出演は、柳家小八、入船亭扇辰、柳家小三治師匠です。

 

柳家小八は、2017年3月に真打昇進して「ろべえ」から小八に改名しました。師匠は、2016年惜しまれながら亡くなった柳家喜多八です。本日の演目は「だくだく」。柳家喜多八の芸風を引き継ごうとしているのでしょう。マクラはけだるそうに話して、本編に入るとがぜん語り口が熱くなり、声も張り上げていきます。喜多八師のメリハリには、まだ及びませんが、芸風として確立できれば面白いかもしれません。

 

入船亭扇辰師匠の演目は、寒い季節のピッタリの「雪とん」。

 

船宿で、縁のある田舎者の若旦那を泊めている。この若旦那、町で評判の美人・お糸に惚れてしまい、体を壊してしまう。「酒の一杯も酌み交わせれば、それで満足して帰る」と訴える若旦那。船宿の女将は仕方なく、お糸の女中に小遣いを与え、夜中に忍ばせる手はずを整える。その晩は、あいにくの大雪。若旦那は道に迷ってしまい、そこら中の木戸を叩きまわるが、どこも開けてくれない。ちょうど同じ時刻に、役者顔負けのいい男が通りかかる。この男、「お祭り佐七」と呼ばれる人気者。下駄に雪が挟まったので、トントンと雪を落としたところ、合図と思った女中に連れ込まれてしまう。佐七が、あまりにもいい男だったのでお糸は、その晩、泊めることに……。

 

女性を演じたら抜群の扇辰師匠。田舎者の若旦那に手を焼く女将や小遣いの欲しい女中、お嬢さまのお糸など、実に達者に演じ分けます。降り積もる雪の情景描写も抜群。あまり聴くことのできない珍しい噺を、たっぷり堪能できました。

 

「頑張れ、頑張れ!」と念じながら小三治師匠を見守る

 

トリは、観客全員がお待ちかね柳家小三治師匠です。割れんばかりの大きな拍手が、期待の大きさを感じさせてくれます。

 

小三治師匠といえばマクラの面白さでも、よく知られています。今回は、安倍首相への不満など、「世の中、これでいいのか」という切り口で語り始めます。

 

しかし残念ながら、固有名詞が出てこなかったり、途中で話しがつまったりで、いろいろな話題が出るものの、中途で終わってしまいます。「ちょっと、この話しはやめておきましょう」「なんだか今日は、頭が熱くなりすぎているから、ここでやめときましょう」と言って、頭を抱えること数回。その度に、心の中で「小三治、頑張れ!」と祈るようにして聞いていました。観客全員が、同じような気持ちだったのではないでしょうか。

 

「太鼓が鳴ったら、高座を降りる合図ですから」と言い、マクラを話し続けること50分。「今日はマクラで終わりかな。まあ、いいか」と思ったところでドンと太鼓の音。

 

と、ここから小三治師、噺を始めたのです。ネタは「宗論」。宗派の違う親子の食い違いが面白い、この噺を、結構なスピードで語り始めます。息子を叱る親父の口調に往年の滑舌のよさはなく、途中、少しつまってしまうことが数回。

 

しかし、観客はよく笑っていました。マクラの時間も含めて、温かく、大きな笑いが何回も、何回も起こりました。

 

名人・古今亭志ん生は、晩年、高座にあがっても何を話しているのか聞き取れない状態だったそうです。しかし、高座に登場するだけで大きな拍手で迎えられ、観客はとても楽しんでいたそうです。

 

この日の会場も、同じ空気を醸し出していました。集まった観客は、私も含めて、落語を聞きに来たというより、小三治師匠に会いたくて、会いにきたのです。

 

それは、それでいいのだと思います。

 

小三治師匠に会いたいという観客がいる限り、まだまだ高座に上がっていただければと思い、帰路につきました。

 

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太助セレクト落語 2081年1月下旬から2月初旬のお勧め落語会

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。2018年1月中旬から下旬のお勧めの落語会をピックアップしました。1月は、新春興行の楽しさがタップリと楽しめる時期です。夢の組み合わせの落語会も目白押し。チケットはお早めに!

 

ふなばし市民寄席「喬太郎・白酒・一之輔三人会~春の気になる三人会」

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日時:1月30日(火) 開演:18:30

料金:3,600円

出演柳家喬太郎桃月庵白酒春風亭一之輔

場所船橋市民文化ホール

問い合せ:03-5785-0380

船橋市周辺の方の熱い支持を得ている「ふなばし市民寄席」。新春は人気落語家、喬太郎・白酒・一之輔師匠のそろい踏みです!

 

落語教育委員会

日時:2月5日(月) 開演:19:00

料金:3,600円

出演柳家喬太郎、三遊亭歌武蔵、三遊亭兼好

場所市川市文化会館

問い合せ:043-224-1710

落語教育委員会 | てこなどっとねっと 公益財団法人市川市文化振興財団

⇒新メンバーの兼好師匠が加入した落語教育委員会。コントあり、漫談あり、落語ありの楽しい公演です。

 

風間杜夫の落語会

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日時:2月8日(木) 開演:19:00

料金:3,100円

出演風間杜夫柳家喬太郎、白戸知也(津軽三味線

場所横浜にぎわい座

問い合せ:045-231-2515

http://nigiwaiza.yafjp.org/perform/archives/14771

⇒プロの落語家顔負けの技術で魅せる役者・風間杜夫。つかこうへい作品に出演していた頃の輝きが、垣間見られます。

 

柳亭市馬春風亭昇太二人会

日時:2月9日(金) 開演:15:00

料金:3,000円

出演柳亭市馬春風亭昇太

場所:いちょうホール(八王子)

問い合せ:042-621-3001

www.hachiojibunka.or.jp

⇒市馬、昇太師の二人会! 二人が弾けたら、とんでもない世界が広がりそう。期待大の二人会です。

 

かめあり亭第33弾「新作落語の会~今は新作!いつかは古典」

日時:2月10日(土) 開演:14:00

料金:3.800円

出演柳家喬太郎三遊亭白鳥林家彦いち

場所:かめありリリオホール

問い合せ:03-5680-3333

⇒このメンバーならば間違いなく、新作落語も安心して楽しめます。新作落語をあまり聴いていない初心者にもお勧めの落語会です。

 

 

*情報内容は、変更等の可能性があります。購入前に確認をお願いします。

「徳川家康」山岡荘八:文明を改める哲学は生まれたのか?

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。久しぶりに山岡荘八(著)徳川家康を読み返しています。この本を開く気になったのは、韓国の元大統領である朴槿恵(パク・クネ)が、拘置所で熱心に読んでいるというニュースを知ったからです(韓国版の書名『大望』)。

 

ご存じのように朴槿恵は、数奇な運命を歩んでいる人です。父親は元大統領の朴正熙であり、彼女の両親は凶弾に倒れました。その後、韓国初の女性大統領に昇りつめ、また大統領として初めて罷免されることになりました。韓国は歴史的に、倒れた権力者に対しては徹底的に叩きのめすので、裁判の結果はおそらく厳しいものになるでしょう。

 

父親は日本との国交を回復しましたが、彼女は一貫して反日の立場を取り続けました。現在、周りには誰もいなくなり、ひとり独房で、日本の国民文学ともいわれる『徳川家康』を開く。その運命の不思議さを思います。

 

彼女がなぜこの本を手に取り、何を見い出そうとしているのか。少し知りたくなったのです。

 

戦争と平和を描く壮大な叙事詩

 

徳川家康』は、太平洋戦争が終戦して間もない1950年から執筆が開始され、17年もの歳月をかけて書かれた歴史小説です。現在、山岡荘八歴史文庫(講談社)に収められていますが、全26巻の大長編です。第1巻のあとがきに、この長編小説の執筆動機とモチーフが書かれています。

 

終戦後、山岡の脳裏には、以下のような思いが浮かびます。

 

 戦いは終わったが、「平和」はまだその片鱗(へんりん)も地上に姿をあらわしていないというきわめて平凡な、しかし、きびしい事実だった。

 

 これは終戦ではなく、より惨憺たる次の展開への小休止ではあるまいか。文明の持つ性格からも、人々の頭脳を支配している哲学からも、現実にうごきつつある政治からも「平和」につながる何ものも発見できず、万人の希求とはおよそ正反対の血の匂いしか受け取れなかった。

徳川家康』第1巻 あとがきより

 

山岡荘八は、第二次大戦後の平和を、戦争と戦争のはざまの「小休止」ではないか、ととらえたのです。そして、「戦いのない世界を作るための条件は何か」を探るために書き上げたのが本著です。このために選んだ人物が、応仁の乱から続く、長い長い戦国の時代に終止符を打った徳川家康だったのです。

 

世界は知恵と哲学を手に入れたのか?

 

終戦から70年以上の歳月を経て、文明は恐ろしいほどに変化しました。その変化の象徴がITの発達でしょう。初期の大型コンピューターなみの能力を持ち、世界中とつながることができるスマートフォンを、誰でも気軽に持てる時代になりました。

 

誰もがさまざまな情報を、いつでもどこでも入手できるだけでなく、自分の意見や動画を簡単に世界中に発信できるようになりました。買物もネットで済ませられるだけでなく、リアルな貨幣さえも不要になりつつあります。

 

この変化は、確かに生活に「便利」をもたらしました。しかし、ネットは世界中の人間同士の「理解」や「共感」を深めているのでしょうか? わたしは逆に、憎しみや恨み、反感を深めていっているように思えます。一国の大統領が口にする罵詈雑言が、世界中にあっという間に広がります。それに対して、憎しみや反発の感情をむき出しにしたコメントが果てしなく連なります。

 

ネットは、人間のドロドロとした感情を解き放ってしまいました。嫉妬、不信、ねたみ、反発、憎しみ、優越感・劣等感……。パンドラの箱を開けてしまったのです。「負」の感情の連鎖には終わりがありません。

 

山岡荘八は、戦いのない世界を作るために、以下のように語っています。

 

 戦いのない世界を作るためにはまず文明が改められなくてはならず、文明が改められるには、その背景となるべき哲学の誕生がなければならない。新しい哲学によって人間革命がなしとげられ、その革命された人間によって社会や政治や経済が、改められたときにはじめて原子科学は「平和」な時代の人類の文化財に変わってゆく

徳川家康』第1巻 あとがきより

 

北朝鮮の核開発、EUの崩壊、トランプ大統領の暴言拡散、米中の危ういパワーバランス、テロの脅威拡大など、身の回りの出来事を眺めていると、現在が戦いの前の「小休止」にすぎないという感を抱きます。山岡が言うように、次の世界を考える新しい哲学が、今まさに必要なのでしょう。

 

年の瀬です。年末・年始は『徳川家康』という大きな山に登ってみようと思います。

 

徳川家康

山岡荘八(著)
山岡荘八歴史文庫

講談社

落語家にとって歯は命! 太助の歯医者放浪記(1)

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。年の瀬が迫り、一年を振り返る時期になりました。今年もいろいろありましたが、年間を通じて悩まされたのが「歯」についてでした。

 

長い、長い歯医者放浪記の始まり

 

2017年の1月から、歯が急激に悪くなり、全体的に弱体化してきました。特に金属を被せてあった奥歯2本が、歯周病の悪化でグラグラしてきて、歯茎の腫れや痛みがひどく、通院を開始。そして1年が終わろうとしている現在、まだ歯医者通いが続いているのです……。

 

この間、歯医者を変えること4回(知人からは「歯医者放浪記」と呼ばれています)。長年通っていた歯医者の施術(被せたものが、すぐ取れる)と、機材の古さに疑問を抱き転院。次の医院は、機材は新しいがきちんと症状を説明してくれないので転院。3度目の病院では、初めから治療などする気はなく、すぐに抜歯されてしまう。1本抜かれたところで、納得がいかず転院。現在、4軒目の歯医者さんに通っています。

 

とにかく歯に悩み続けた1年でした。今回、よく分かったのは、歯が悪いと落語がうまく喋れないのです。歯茎が腫れているのはもちろん、仮の被せものがあっても上手に話せません。舌が今までと同じように、うまく動かないのです。

 

滑舌(かつぜつ)」という言葉があります。セリフや台本を滑らかに発声することで、「あの役者は滑舌が良い・悪い」などと使われます。

 

つくづく感じたのは、セリフの流暢(りゅうちょう)さは、滑舌という言葉の通り、「舌の動かし方にあるのだなあ」ということです。口の中の状態が少し変わるだけでも、滑舌はうまくいかなくなるのです。

 

また、歯に隙間ができてしまったりすると、そこから息が漏れてしまい、きれいに発声できません。このことも、歯を1本抜かれて実感しました。

 

落語家にとって歯は命!

 

話芸である落語はリズムとテンポがとても重要ですから、歯が悪くなり、滑舌が悪くなるのは大きなダメージになります。特に、「言い立て」と呼ばれ、長いセリフをテンポよく、スピーディーに聞かせる噺などでは致命傷です(「大工調べ」「金明竹」など)。

 

落語家さんもご高齢になると、やむを得ず入れ歯を使う方も現れます。しかし、本当に滑舌が変わってしまう方がいます。「入れ歯前・入れ歯後」といわれることもあるそうです。

 

名人と呼ばれた八代目・桂文楽、人気者だった五代目・三遊亭圓楽師匠なども、入れ歯が合わず、大変に苦労されたそうです。

 

昨日まで流暢に話せていたセリフが、思うように話すことのできない悔しさ、もどかしさは、大変なものであったと推察します。

 

現在、まったく口がまわらなくなってしまった黒柳徹子さん。昔、機関銃のように、ポンポンとテンポよく話せた記憶だけが、本人には残っているのでしょう。しかし、頭の回転に、口が全く追いついていきません。寂しさを通り越して、痛々しさやみじめさを感じます。

 

「楽しさ」や「笑い」を生み出すエンターテイナーが、視聴者に痛々しさを感じさせるようになったら、きっぱりと舞台を降りるべきだと思います。

 

今年、私が歯医者を転々とした大きな原因は、医者によって言うことが異なるためでした。「治る」という方、「治らないから、すぐ抜歯する」という方、きちんと説明してくれない方。どの歯医者さんを信じてよいか分からずに、フラフラと転院を繰り返していました。早く治して、落語をきちんと稽古したいという焦りもあったように思います。

 

太助の歯医者放浪記は、年が明けても続きそうです(涙)。

 

歯が悪くなれば、流暢に話せないだけでなく、口臭も生じますし、何を食べても美味しくありません。悪くなるまで気づかずに、ほったらかしにするのが人間の常ですが、皆さん「歯」には、十分気をつけてくださいね!

 

五代目・三遊亭圓楽「短命」

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太助セレクト落語 2081年1月初旬のお勧め落語会

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。2018年1月上旬から中旬のお勧めの落語会をピックアップしました。年明けは、新春興行で落語会が最も活気づく時期です。新春興行で独演会も多く開催されます。お気に入りの落語家さんをたっぷり楽しめるチャンスですよ!

 

第3回 二人三客の会

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日時:1月11日(木) 開演:19:00

料金:3,100円

出演:入船亭扇遊、瀧川鯉昇橘家文蔵(ゲスト)、伊藤夢葉(奇術)

場所横浜にぎわい座

問い合せ:045-231-2515

⇒年明けは、扇遊、鯉昇師匠の肩の凝らない落語で、心から笑ってリラックスしてください。

 

柳家三三独演会「横浜三三づくし 豚ざんまい」

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日時:1月12日(金) 開演:19:00

料金:3,100円

出演柳家三三

場所横浜にぎわい座

問い合せ:045-231-2515

三遊亭白鳥作「任侠流れの豚次伝」10か月連続通し口演。第9話「人生鳴門劇場」。豚次の旅もいよいよ最終章へ!

 

特撰落語名人会

日時:1月13日(土) 開演:12:30

料金:S席3,600円、A席3,000円

出演柳家さん喬柳家権太楼、古今亭菊之丞桃月庵白酒

場所鎌倉芸術館

問い合せ:03-6240-1052

⇒さん喬、権太郎、両師匠のそろい踏みを見たいという方は、2018年も多そうですね。まだご覧になっていない方は、一度はぜひ!

http://www.kamakura-arts.jp/calendar/2018/01/028429.html

 

グリーンホール八起寄席

日時:1月15日(月) 開演:18:30

料金:1,500円 他

出演:立川談修、三遊亭兼好、瀧川鯉橋、古今亭文菊

場所相模女子大学グリーンホール

問い合せ:042-749-2200

⇒このメンバーで、この価格! 新春のお年玉かしら。お近くの方はぜひ足を運んでください。

 

隅田川馬石の会 特別編「お富与三郎全段通し」

日時:1月20日(土)、27日(土)、2月3日(土)、10日(土)、17日(土)

開演:14:00

料金:2,700円

出演隅田川馬石

場所:食堂ピッコロ(日本橋

問い合せ:03-3281-0299

日本橋にある小さな食堂ピッコロで土日に開催されている落語会。歌舞伎の演目としても知られる「お富与三郎」を馬石師匠が5回で全段を語ります。滅多に聞くことのできない長編落語。期待大です!

 

*情報内容は、変更等の可能性があります。購入前に確認をお願いします。

 

お勧めの落語家:柳亭左龍(2)~ふくよかな古典の名手。人形町での独演会

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。2017年11月29日、人形町で開催された「第2回 柳亭左龍 独演会」に行ってきました。

 

会場は、人形町駅から徒歩5分くらいの日本橋社会教育会館のホール。いかめしい名前のホールですが、ここの席は、列ごとに段差が付いているので、とても見やすいのです。客席数は250程度。広さ、見やすさ、音の響きなど、いろいろな面ですばらしい会場です。

 

まんまるな顔と体から繰り出す、多彩な表現

 

柳亭左龍師匠といえば、まんまるな顔と体に、つぶらな瞳。漫画「おぼっちゃまくん」のような風貌ながら、深く響く美声の持ち主。

 

この日の演目は、

・長短

・片棒

・お見立て

 

「長短」は、おそろしく気の長い長七と、とても短気な短七の噺(はなし)。まったく正反対の性格の2人だが、小さい時分から仲がいい。しかしこの二人、会話や動作のテンポがまったく噛み合わない。長七の饅頭の食べ方や煙草の吸い方、すべてが短七には気にくわない。五代目の柳家小さんが得意とした落語です。

 

落語は音楽と同じようにリズムとメロディーが大切です。この落語の面白さと難しさは、長七と短七で異なるリズムとメロディーを奏でなければならないところ。左龍師は、この緩急のリズムの使い分けが実に見事です。長七の「のんびりした口調」には、聞いている私たちもイライラして、突っ込みを入れたくなります。

 

「片棒」は、倹約を重ねて一代を築いたケチ兵衛さんが、3人の息子の誰かに財産を譲ろうと考え、自分の葬式の提案をさせる噺。父親そっくりの人形を作り山車に載せるとか、骨壺を神輿に入れて練り歩くとか、息子たちの提案する葬式は支離滅裂。

 

この噺で改めて感じたのは、左龍師匠の声量の豊かさ。通常は7割程度の声量で話し、「ここぞ」というときには、驚くほど大きな声が出るのです。また、顔芸ともいえる愉快な表情も魅力的です。山車の人形の表情には、場内から大きな笑いが起こっていました。

 

「お見立て」に出てくる吉原の花魁・喜瀬川は、客で田舎者の杢兵衛(もくべえ)大尽が嫌でたまらない。杢兵衛に会いたくないので、若い衆に「病気だから会えない」「入院したので、ここにはいない」など、いい加減なことを言って応対させるのだが……。

 

この杢兵衛のような人物は、左龍師の得意技。大きな目をギョロリとさせ、大声でなまって話すと、本当に無粋な田舎者が現れます。この杢兵衛、ガサツな雰囲気にもかかわらず、妙に頭の回転が速いところが楽しめました。

 

落語の持っている本来の面白さを味わえる

 

第1回の独演会でも感じましたが、左龍師匠の声の高さや大きさのメリハリ、顔芸ともいえる愉快な表情など、その引出しの豊かさには、本当に驚きます。落語の中に現代的なギャグなど入れず、古典落語が本来持っている面白さだけでしっかりと楽しませてくれる、まさに「本寸法」の魅力です。

 

平日の水曜ということもあり、会場は満席とはいきませんでしたが、集まっているお客さんは、「笑いたいために集まっている」というより、古典落語を楽しみたい方が集まっているという温かい雰囲気でした。

 

前回の独演会もそうでしたが、3席とも左龍師匠のお得意な噺が並べられていました。1つだけ希望を言いますと、せっかくの独演会ですから、普段の高座では聴けないような噺、手掛ける人の少ない長編噺なども、ぜひ聴いてみたい気がします。練達の落語家であることは分かっていますので、さらに新たな一面を見てみたいのです!

 

ともあれ、柳亭左龍、お勧めの落語家さんです!

 

 

柳亭 左龍(りゅうてい さりゅう)

2009(平成21)年 第14回林家彦六賞受賞

2010(平成22)年 花形演芸大賞銀賞受賞

2011(平成23)年 花形演芸大賞金賞受賞

2012(平成24)年 花形演芸大賞金賞受賞

 

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新潮文庫 解説目録をチェックする静かな喜び

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。先日、ある書店に入ったところ、「ご自由にお持ちください」と書かれた『新潮文庫【解説目録】』が平積みされていました。黄色い表紙で、680ページ以上ある大冊です。

 

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1冊いただいて持ち帰り、久しぶりに熟読しました。解説目録は、著者別に作品が並べられ、60字程度の内容紹介が書かれています。作品紹介だけで485ページもあるのですが、色々な発見があり、ページをめくる手が止まりません。

 

解説目録を読んでいると、自分が読んでない本や知らない分野が、まだまだたくさんあることに気付かされます。新たに登場している作家が、どのような作品を書いているのか傾向をつかむこともできます。また、以前は読んでいたけれど、追いかけるのをやめてしまった作家が、その後どのような作品群を発表したのかを知ることも可能です。

 

世界には、自分の知らない英知が山ほど眠っている

 

思えば、太助は小学生の頃から読書好きで、新潮文庫の解説目録を読むことが好きでした。新潮文庫の特徴は、古典と現代文学が程よいバランスで収録されていることです。その解説目録は、児童書から大人の本を読むようになった時期のまさに「道しるべ」でした。日本だけでなく世界中には、大作家と呼ばれる人がいて、不朽の名作と呼ばれる作品群があることを、この本で知りました。

 

自分のまだ知らない英知が、世の中にはたくさんあることを知り、とても興奮したことを覚えています。目録をめくっては、次に読む本を決め、丸印をつけていきました。

 

ドストエフスキーカフカディケンズトルストイパスカル亀井勝一郎夏目漱石太宰治……、手当たりしだいに読んでいきました。小学生なので分からないこともたくさんあるのですが、気にせず乱読していました。

 

そして、ほとんどの方がそうだと思いますが、学生から社会人になり、年を重ねていくごとに文学や哲学からは遠ざかっていきます。「時間がないから」「仕事で忙しいから」「お金がないから」「役に立たないから」、いろいろな理由をつけて、人は本を読まなくなります。

 

50歳を過ぎてからは、現役作家の執筆年齢を超えてしまったためか、作者の考え方や描写が幼く思えてしまい、ますます文学からは遠ざかってしまいました。

 

しかし、最近、つくづく思うことがあります。不朽の名作文学や哲学は、中高年世代こそ読むべきなのです。ドストエフスキー夏目漱石が描こうとしたテーマは、大人が長い人生経験を経たうえで、読み、考えるものではないでしょうか。学生時代に読んでも、頭では理解できても、実感としては分からないのです。

 

高齢化社会になり、中高年になってから、また次の長い人生が始まります。これまでの人生をリセットして、次の一歩を踏み出すにあたり、名作文学を開いてみるのも大切なことではないでしょうか。

 

分厚い新潮文庫の解説目録をめくりながら、そんなことをツラツラと考えていました。

 

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そして現代の有難いところは、目録で注目した作家をネットで調べると、すぐに全作品の情報が分かり、Amazonで即日買えることです。しかも、廉価な中古本で買うことも可能です……。

 

今回、読みたい本や、読み忘れていた本がたくさん見つかりました。さっそく、いろいろと購入して読み進めています。目録で見つけた大崎善生(著)「赦す人―団鬼六伝」は、久しぶりに巡り合えた良書でした。また、機会があればお話ししますね!