落語はビジネスにも役立つ!「笑う力」を身につけたい

アマチュア落語家・太助が、落語の魅力を考えます。

太助セレクト落語 2019年3月、4月のお勧め落語会

暖かくなり、気持ちもゆるんでくるこの時期は、春の落語をいろいろ楽しみたいものです。大の月(31日のある月)の31日は、各寄席では特別興行が行われます。寄席でおめにかかることのできない出演者や特別企画など行われますから、落語ファンは必見ですよ!

 

池袋演芸場・昼席「新作台本まつり」

日時:下席 3月21日~30日 

開演:14:00~17:15

料金:2,000円

出演:主任は日替わり。各日の主任を表記

21日 林家彦いち、22日 柳家はん治、23日 柳家小ゑん、24日 三遊亭円丈、25日 林家時蔵、26日 林家正雀、27日 柳家喬太郎、28日 金原亭世之助、29日 夢月亭清麿、30日 桂才賀

場所:池袋演芸場

問い合せ:03-3971-4545

⇒新作台本の落語を楽しめる興行が、池袋演芸場で開催されます。寄席でトリを務める落語家を主任といいます。通常、主任は10日間の興行で1名ですが、今回はなんと日替わり。珍しい演目に出合えるチャンスですよ!

 

落語研究会(第609回)

日時:3月29日(金) 開演:18:30

料金:A席 3,800円、B席 3,300円

出演

柳家あお馬「恋根問」

三笑亭夢丸「身投げや」

桃月庵白酒明烏

桂やまと「阿武松

柳家喬太郎指物師名人長二より 仏壇叩き」

場所:国立小劇場

問い合せ:03-3476-6666

⇒TBS主催による落語会。まさに油の乗った演者たちによる本格落語の競演です。じっくりと古典落語を楽しめそうです!

 

末廣亭余一会・夜の部「左談次一周忌追善興行」

日時:3月31日(日) 開演:17:00~20:15

料金:3,500円

出演:談幸、正楽、一笑、談笑、竹丸、龍志、才賀、勢朝、左談次、ほか

場所:新宿末廣亭

問い合せ:03-3351-2974

⇒昨年、他界された立川左談次の追善興行。これだけの演者が集まるのも左談次師匠の人柄でしょう。

 

深川落語倶楽部

日時:4月9日(火) 開演:18:45

料金:3,000円

出演:

柳家寿伴「近日息子」

春風亭ぴっかり「マスク」

林家三平お血脈

柳家三三「意地くらべ」

林家時蔵「ぜんざい公社」

柳家喬太郎花筏」 

場所:深川江戸資料館

問い合せ:03-3633-7961

深川江戸資料館で定期的に開催されている「深川落語倶楽部」。平日夜の開催ですが、毎回、出演者は豪華です。時間があれば資料館で、実物大の長屋も見学してください。

 

Y.Tatekawa Blood ~江戸の新風

f:id:osamuya-tasuke:20190304130544j:plain

日時:4月9日(火) 開演:19:00

料金:2,800円

出演立川こしら立川談吉、立川吉笑、立川寸志

場所東京芸術劇場 シアターウエス

問い合せ:03-5785-0380

立川談志の孫弟子世代の落語会。Y.Tatekawa は、ヤング・立川。談志が晩年に到達しようとした「江戸の風」を感じさせる落語を、新世代の立川流落語家はどのように作り上げていくのか。興味がつきません。 

http://yume-kukan.net/ShowDetails?ShowMasterId=763

 

*情報内容は、変更等の可能性があります。購入前に確認をお願いします。問い合せの番号は、お間違えないようにお願いします。

 

関連記事

osamuya-tasuke.hatenablog.com

 

落語の登場人物:子供~父親を手玉にとるちゃっかり者

f:id:osamuya-tasuke:20190209090725j:plain

 

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。落語によく出てくる登場人物は、大体決まっています。長屋の八っつぁん、熊さん、ご隠居さん、おかみさんと子供、商家の大旦那、若旦那、番頭さん。廓噺(くるわばなし)の女郎や幇間。今回は、長屋噺での主要人物、子供について話します。

 

落語に登場する子供は、長屋暮らしの男の子です。名前は「金坊」「亀吉」。父親は職人で学がない。機転が利いて、弁舌たくみな子供が、父親からうまく小遣いをせしめたり、やりこめたりします。

 

元気な子供が登場する噺(はなし)なので、老若男女を問わず楽しめます。このため、寄席では必ずといってよいほど聞くことのできる落語です。短い噺のため、前座や二つ目さんが話すことが多いのですが、名人クラスの真打さんも寄席で高座にかけることがあります。

 

子供の登場する落語をいくつか紹介します。

 

真田小僧

 

父親に小遣いをせびる息子。どうしても貰えないと、母親から貰うからいいと言い出した。「俺がダメなものは、母ちゃんもダメだ」と言うと、「お父っつぁんのいないときに、いつも来るよそのおじさんのことを喋るって言うと、母ちゃんは絶対に小遣いくれる」と返す息子。父親は内心おだやかではない。聞き出そうとすると「話しを聞きたかったら小遣いをおくれ」と足元を見られて、次から次へと小遣いを巻き上げられてしまう……。

 

三遊亭金馬真田小僧

www.youtube.com

 

初天神

 

新調した羽織を着て、初天神に出かけようとする熊さん。そこへ息子の金坊が帰ってきて、連れて行ってくれとせがむ。金坊は口が達者で「あれを買ってくれ、これを買ってくれ」とうるさいので、連れていくのをしぶる熊さん。「あれこれ買いたい」と言わない約束をして出かけたが、境内の屋台が見えてくると、何だかんだとせがみだす金坊。結局、熊さんは、根負けして色々買ってしまうのだが……。

 

柳家小三治初天神

www.youtube.com

 

藪入り(やぶいり)

 

明治、大正の頃は、10歳くらいから商家に住み込み、小僧として奉公した。休みは年に2度の藪入りのときだけ。週休2日制が一般的になった現在とは大違い。しかも奉公を始めた3年は藪入りでも、実家に戻ることができなかったという。

 

明日は藪入りで、金坊が帰ってくる。父親はうれしくて、「帰ってきたらあれを食べさせてやろう、どこへ連れて行ってやろう」と興奮して眠れない。3年ぶりに帰って来た息子は、とてもしっかりしていて、両親は大喜び。しかし、分不相応な金を持っていたことで、「店の金に手を付けたのでは」と、父親は怒り出す……。

 

三遊亭円楽「藪入り」

www.youtube.com

 

雛つば(ひなつば)

 

植木屋さんが武家屋敷で仕事をしていると、庭に幼い若様が出てきた。若様、庭に落ちていた穴のあいている四文銭を拾うと、付き人の三太夫に「これは何か?」と尋ねる。三太夫が「何だと思われますか?」と返すと、「お雛様の刀のつばではないか」と答える。不浄なものでございますから、お取り捨て願います」と言われると、若さまはポーンとほおり捨てて、行ってしまった。これを見た植木屋は、いつでも「銭をくれ」と言っている自分の息子とは、大きな違いだと感心し、うちへ帰って女房に話しをする。これを息子が聞いていて……。

 

古今亭志ん朝「雛つば」

www.youtube.com

 

今回紹介した落語以外でも、「桃太郎」や名作「子別れ」など、子供が活躍する噺はいろいろあります。ぜひ、やんちゃな子供たちの落語を楽しんでみてください。

 

関連記事

osamuya-tasuke.hatenablog.com

太助セレクト落語 2019年2月、3月のお勧め落語会

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。2019年2月~3月のお勧めの落語会をピックアップしました。2019年には、神田松之丞、柳亭小痴楽の人気者二人が真打昇進することが決定しました。落語芸術協会は勢いのある二つ目が多いので、世代交代が楽しみです!

 

両国寄席

日時:2月12日(火) 開演:18:00

料金:1,500円

出演三遊亭兼好、王楽、喜八楽、全楽、萬窓、鳳笑、他

場所お江戸両国亭

問い合せ:03-3635-7619

円楽一門会は、毎月1~15日にお江戸両国亭で寄席を開催しています。これだけのメンバーの落語をたっぷり楽しめて、お値段は1,500円。両国駅から徒歩7、8分のお江戸両国亭にフラッと立ち寄ってみてください。

 

BXホール落語会「祝 真打昇進!古今亭駒治独演会」

日時:2月14日(木) 開演:18:30

料金:2,800円

出演:古今亭駒治

場所:文化シャッターBXホール

問い合せ:050-3497-5500

⇒真打昇進を果たした、駒次改め古今亭駒治の独演会。お得意の鉄道落語を含む三席をみっちり聴かせてくれます。駒治師匠の新作落語は、少しSF風であったり、懐かしい光景が浮かんできたりと多彩です。振舞い酒も付きますよ!

 

あつぎ寄席「特選!よったり落語会」

f:id:osamuya-tasuke:20190130153724j:plain

日時:2月17日(日) 開演:14:00

料金:3,000円

出演柳亭市馬桂雀々、三遊亭遊雀柳家三三

場所:厚木文化会館 小ホール(本厚木)

問い合せ:046-224-9999

⇒協会の枠を超えた実力派が勢ぞろい。このメンバー4人が揃う落語会には、なかなか出会えませんよ。お近くの方はぜひ!

 

三三・左龍の会

日時:3月10日(日) 開演:19:00

料金:2,800円

出演柳家三三柳亭左龍

場所:内幸町ホール

問い合せ:0422-53-0817

柳家三三柳亭左龍。現在の落語界で、古典落語だったらこの二人は間違いなくトップクラス。練達の二人が腕を競う人気の落語会です。チケットはお早めに! 昨年、台風で中止になり残念だったので、今年は足を運びます。

 

深川亭砥寄席「扇辰、菊之丞二人会」

日時:3月19日(火) 開演:19:00

料金:3,000円

出演:入船亭扇辰、古今亭菊之丞

場所:深川江戸資料館

問い合せ:03-5332-6396

⇒深川江戸資料館は、江戸時代の長屋や船宿、茶屋などが忠実に再現されています。実際の長屋を眺めてから落語を聴くと、より臨場感も増します。しっとりした噺も得意な扇辰、菊之丞師匠。どんな高座を展開してくれるのか楽しみです。

 

*情報内容は、変更等の可能性があります。購入前に確認をお願いします。問い合せの番号は、お間違えないようにお願いします。

 

関連記事

osamuya-tasuke.hatenablog.com

糸井重里『すいません、ほぼ日の経営。』:「おもしろいことないかなぁ」が口ぐせのあなたに

f:id:osamuya-tasuke:20190125150523j:plain

 

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。あなたの身の回りにいませんか? 「何かおもしろいことないかなぁ」が口ぐせの人。もしかしたら、あなたもそうだったりして……。

 

このフレーズをよく口にする人は、自分にとっての「おもしろいこと」が何か、はっきりしていないことが多いようです。

 

自分にとっておもしろいことを挙げて、なぜ好きなのか考える

 

私は登山が好きです。しかし山登りの経験がない人を、「おもしろい」からと言って、山に誘うことはしません。なぜなら、ある程度の体力や技術、知識を持っていないと、山登りはつらいばかりで、おもしろくもなんともないからです。また山は過酷ですから、体力や装備が伴っていないと危険が生じます。

 

体力を使い、へとへとになって、それでも高みを目指すことにおもしろさを感じる人もいますし、「ばかばかしい」と感じる人もいます。何をおもしろいと思うかは、人それぞれです。自分にとっておもしろいことがはっきりと分からない方は、「自分は、どんなことにおもしろさを感じるのか」を考えてみてください。いくつか挙げていくと、自分のおもしろいと感じるものの傾向がつかめるはずです。そして「なぜ、おもしろいと感じるのか」も考えてみるとよいでしょう。そこから、自分の気質が見えてくるはずです。

 

私は山登りや落語を話すことが好きです。なぜ好きなのかを考えてみると、努力して上達していく過程が好きなのだ、ということに気づきました。頑張っても上達しない趣味は長続きしません。また上達が止まってしまったら、興味がなくなってしまいます。こういうことは全て、自分の気質にかかわっているのだと思います。

 

おもしろさを追求する会社・ほぼ日の独自性

 

おもしろさを徹底的に考え、追求している会社があります。それが、糸井重里さんが社長を務める株式会社ほぼ日です。糸井重里氏のインタビューをまとめた『すいません、ほぼ日の経営。』は、この会社のユニークな事業コンセプトや人材戦略などの一端がうかがえる一冊です。

 

ほぼ日では、おもしろいアイデアを生み出すことが事業の出発点になります。おもしろいかどうかを、どのように判断するかというと

 

―― おもしろいかどうかは、なにがものさしになるんですか。

糸井 とりたててありません。「おもしろい」は主観ですから。「あれは客観的におもしろかった」ということはありませんね。

 ただ、おもしろいと思ったからなんでもいいわけではなくて、じぶんがおもしろいと考えた要素はなんなのかを深く考えたり、探ったりしておくことは大切ですね。(p.20)

 

 

ほぼ日では、おもしろいアイデアを商品化していくのですが、マーケティングリサーチに頼らず、社員の「好き」「嫌い」を徹底的につきつめていきます。

 

「どうして好きなのか」「どこが好きなのか」を、じぶんと仲間に問い続ける。(p.27)

 

商品開発においては消費者調査を重ね、そのニーズを探ったうえで企画・開発していくマーケットインの手法が採られることが多いのですが、この手法で生まれた商品は似たようなものになりがちです。しかし、ほぼ日の手法は、社員の発想力が鍛えられ、向上していくので、独自性を確保していく手段としては有用だと思います。

 

人材確保、育成もユニークです。採用基準は「いい人」です。

 

糸井 一緒に働いていて「いい人とったね」「いい人に来てもらったね」とも言います。(中略)これから仲間になる人と、これから仲間を迎え入れようとしている人たちとの両方にとって、「心で一致するいい人物像があるんじゃないかと思うんです。(p.111)

 

 

しかし、「いい人」は定義したくないと言います。定義すると、それに合わせた人がやってきてしまうから、だそうです。

 

では、どんな人がほしいか、もう少し具体的に言うと

 

糸井 「どこか旅行に行こう、遊びに行こう」というときに、「あいつも呼ぼうよ」と呼ばれる人がいますよね。その「あいつ」が、うちがほしい人です。(p.155)

 

呼びたくなる「あいつ」。なるほど、おもしろい基準ですね。

 

本書では、その他にも組織、上場、社長業などについて、ほぼ日らしいとてもわかりやすい言葉で語られています。ほぼ日の上場も、なんとなく軽い気持ちで株式公開したような印象がありましたが、実は10年以上も考え続けていたと知り、驚きました。

 

会社としての理念や方向性を伝えるためのコピーの分かりやすさは、「さすが」と思わせるものがあります。また、事業や開発、組織の方向性をあえて大企業の対極に置くという差別化も、したたかなものを感じさせます。

 

おもしろさを追求するほぼ日という会社、しばらく目が離せそうにありません。

 

「何かおもしろいことないかなぁ」が口ぐせのあなた。こんな会社に注目してみるも、おもしろいかもしれませんよ!?

 

『すいません、ほぼ日の経営。』

聞き手:川島蓉子

語り手:糸井重里

日経BP

 

関連記事

osamuya-tasuke.hatenablog.com

 

落語の名作「子別れ(下)」:子は夫婦の鎹(かすがい)ですね

f:id:osamuya-tasuke:20190112115630j:plain

 

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。今回は落語の名作と呼ばれる「子別れ」を紹介します。この落語は、夫の浮気で別れた夫婦が、幼い息子が縁結びとなってよりを戻す人情噺です。上、中、下の三話に分かれる大作で、通しで語ると1時間近くになります。一般的に、「子別れ」というと「下」の『子は鎹(かすがい)』をさします。

 

あらすじ

 

上:腕はいいのに大酒飲みで遊び人の熊さん。ご隠居の葬式の手伝いに来たのだが、大酒飲んでいい気持ちになり、吉原に繰り出そうということになる。仕事の前金を貰ったので、気が大きくなっているのだ。「銭がないから」としぶる紙屑屋さんを無理やり連れ出し、吉原で居続けのどんちゃん騒ぎを繰り広げる。別題『強飯の女郎買い(こわめしのじょろうかい)』

 

中:この店で昔なじみの女郎に会った熊さんは、いい気になって4日間も居続けて、ようやく帰宅する。家ではしっかり者の女房と息子の亀吉が待っている。熊さんは、何日も家をあけた後ろめたさで素直に詫びることができない。あれこれ言い訳をしているうちに、女郎ののろけ話を始めてしまう。夫婦喧嘩のあげく、女房は離別を申し出て、息子を連れて出て行ってしまう。熊さんは、なじみの女郎を後添えにしたが、これが何もしない、だらしのない女。その女もやがて姿をくらましてしまう。別題『子別れ』

 

下:自分の行いを深く反省した熊さんは、酒を絶って仕事に励み、いまでは立派な棟梁になっている。ある日、道で息子の亀吉に出会う。いろいろと話しを聞いてみると、母親はどこにも再婚せずに、手間賃仕事をして質素に亀吉を育てているという。男親がいないため、時には情けない思いをするという話しを聞いて、「みんな自分の飲んだくれから出たこと」と、思わず涙する熊さん。亀吉に小遣いを渡し、翌日に鰻をご馳走する約束をして別れるが、「おとっつぁんに会ったことは内緒だ」と言い添える。

 

しかし、家に帰った亀吉は、母親に小遣いを見つけられ、問い詰められる。人様のものに手をかけたと考えた母親は、「どうしても言わないなら、おとっつぁんの玄翁(げんのう:大型の金づち)で叩くよ」と玄翁を振りあげる。亀吉は、父親に貰ったこと、鰻を明日、ご馳走になることを白状してしまう。

 

翌日、母親は、亀吉にこざっぱりとした着物を着せて送り出すが、気になってしかたない。鰻屋の前で行ったり来たりしていると、亀吉が座敷に招き入れた。久しぶりに再会した元夫婦。堅くなっている二人だが、子供の手引きで、めでたく親子三人出直そうということになる。母親が「夫婦がこうして元のようになれるのも、この子があればこそ。本当に子供は夫婦の鎹(かすがい)ですね」と言うと、亀吉が「あたいは鎹かい。どうりで昨日、玄翁で頭をぶつと言った」。

別題『子は鎹』

 

名作人情噺の必須の三要素とは

 

初代・春風亭柳枝の作といわれ柳派系統の屈指の人情噺といわれます。名人・上手が手がける大作で、現在、上中下を通しで語る落語家はほとんどいません。過去には、古今亭志ん生三遊亭円生三笑亭可楽古今亭志ん朝などの名人が手がけました。近年では、柳家小三治柳家さん喬柳家権太郎、柳亭市馬などが手がけています。

 

飲んだくれの職人が、心を入れ替え働くようになり、親子三人が新たに出直すことになるというハッピーエンドの人情噺です。「芝浜」もそうですが、駄目な人間の再生、夫婦愛や親子愛、ハッピーエンドなどの要素は、名作人情噺には必須の要素ですね。

 

再会した夫婦が堅くなってぎごちなく会話しているのを、息子の亀吉が引っ張っていき、結びつけるラストが聴きどころ。時間のあるときに、ゆっくりと楽しんでいただきたい名作落語です。

 

古今亭志ん朝「子別れ」

www.youtube.com

 

関連記事

osamuya-tasuke.hatenablog.com

みなと毎月落語会「白鳥、彦いち、白酒三人会」:白鳥よ、より高みへ!

f:id:osamuya-tasuke:20181230221911j:plain

 

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。2018年12月11日、赤坂区民ホールで開催されたみなと毎月落語会に行ってきました。出演は三遊亭白鳥林家彦いち桃月庵白酒(とうげつあん・はくしゅ)。人気落語家の三人会なので、期待が高まります。

 

みぞれ交じりの雨が降る平日の夜、会場の赤坂区民ホールには、たくさんの人が集まってきます。仕事帰りの方や、1人で来ている方も多く、この落語会の人気の高さがうかがえます。区民ホールは、客席にかなりの傾斜がつけられた見やすい会場です。開演時間の7時には満席となりました。

 

トップバッターは、林家彦いち師匠。落語家のダブルブッキング、レベルの低い高校での落語公演など、マクラでたっぷり笑わせます。

 

彦いち師匠の本編は、新作落語つばさ」。舞台は、誰もがつばさを持っている世界。主人公の彦いち師匠も、自分の翼で寄席から寄席へと移動している。しかし、この世界の隣りには普通の世界も存在していて、なにかの拍子に移動してしまうことがある。翼を持った彦いち師匠が、浅草の言問橋の欄干で羽休め(ひと休み)していると、突然、普通の世界に移動してしまい大慌てするというお話し。

 

彦いち師匠の創作落語には、タイムトラベルやパラレルワールドなどが登場するSF的な作品がいくつかあります。「つばさ」もそのひとつ。白鳥師匠のSF的な新作落語と違い、主人公が等身大なのが彦いちワールドの特徴です。異世界でも、セコいことや、ささいなことを悩んだりする主人公が笑えます。

 

白鳥師匠よ、より高みへ!

 

仲入り後に登場したのは、三遊亭白鳥師匠。彦いち師のマクラを受けて、自身のダブルブッキング体験を話し始めます。地震で新潟に来られなくなった柳家小三治師匠の代演を急きょやることになって、「詐欺!」と言われたという体験で、場内を沸かせます。

 

三遊亭白鳥師匠といえば、いまや新作落語界の巨人と言っても過言ではありません。SF的な作品から任侠もの、女性落語家向け、古典の大胆な改作など、尽きることのない発想力と構想力。「落語中興の祖・三遊亭円朝の名を継ぐのは白鳥」とまで言われる存在です。

 

この日のネタは、「シンデレラ伝説」。20年前に作ったという落語で、父親が息子に色々な名作童話を適当につなげて話していくという内容。この後に登場した白酒師匠も「ある意味、滅多にお目にかかれないものに出会えた」と言っていましたが、残念ながら、この日は首をかしげたくなる出来栄えでした。

 

北斗の拳」など、20年前の流行や風俗で作ったギャグは、いま聴くと、非常に古びたものに思えます。これは新作落語の宿命であり、白鳥師匠だけの問題ではありません。その時代の流行や風俗を取り入れたギャグは、しばらくすると古典落語以上に古びたものになってしまいます。新作落語ではストーリーの着想と骨格は残し、ギャグは年月と共に修正していく作業が必要ではないかと思います。

 

またこの日、もう1つ残念だったのは、噺の途中で「このギャグを浅草ホールでやったんだぞ、半分くらいの客はポカーンとしてたんだ」など傍白を多用していたことです。最近の白鳥師匠は、噺の途中での傍白が多いのですが、やはり残念。傍白はストーリーを断ち切ります。その類まれなる発想力から生み出されたストーリーを、私たち観客は、しっかりと聴き、その世界を脳裏に繰り広げたいのです。

 

白鳥師匠は、稀代のストーリーテーラーであり、円朝の大名跡を継ぐ方と私は信じています。ギャグをリバイスして、ストーリーをしっかりと聴かせ、将来に残る名作を生み出していただきたいと思います。

 

トリは桃月庵白酒師匠。彦いち、白鳥が場内をドカン、ドカンと笑わせてからの登場で、演目は古典落語の「禁酒番屋」。風貌に似合わない美声の持ち主・白酒師匠の落語が始まると、場内にホッとした空気が流れます。巧みな酔っ払い芸で、存分に楽しませてくれました。

 

この夜のお客さんは、目当ての演者がいて、笑おうと思って集まっている方ばかり。大声で楽しそうに笑う方も多く、盛り上がった落語会でした。業界トップクラスの人気を持つ三人。共通しているのは、マクラが抜群に面白く、また話し方、笑顔や体形になんともいえない愛嬌があります。人気の秘密を垣間見たような気がしました。

 

関連記事

osamuya-tasuke.hatenablog.com

 

太助セレクト落語 2019年2月のお勧め落語会

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。2019年2月のお勧めの落語会をピックアップしました。年始興行も一段落した2月は、じっくりと落語を楽しめる季節です。二つ目さんの落語を聴きに行って、未来の名人を探すのも楽しいものですよ!

 

雲助・一朝・小里ん「立春 雲一里」

f:id:osamuya-tasuke:20181226231157j:plain

日時:2月4日(月) 開演:19:00

料金:3,500円

出演

五街道雲助「居残り佐平治」

春風亭一朝「火事息子」

柳家小里ん「猫の災難」

場所日本橋劇場(水天宮前)

問い合せ:03-5809-0550

⇒達者な師匠が3人そろい踏み。高座名の頭文字を取って「雲一里」。江戸の風情を感じさせてくれる公演会になること間違いなし。雲助師匠の「居残り佐平治」を聴けるなんて嬉しいです!

 

深川落語倶楽部

日時:2月6日(水) 開演:18:45

料金:3,000円

出演柳家喬太郎古今亭志ん輔春風亭一之輔林家時蔵春風亭ぴっかり

場所:深川江戸資料館

問い合せ:03-3633-7961

⇒深川江戸資料館のホールで開催される落語会。落語の前にぜひ館内も見学してください。リアルな江戸の町を体験できますよ。

 

鎌倉はなし会「柳家三三独演会」

f:id:osamuya-tasuke:20181226231235j:plain

日時:2月11日(月) 開演:15:00

料金:3,600円

出演柳家三三、悠玄亭玉八、桂宮治

場所鎌倉芸術館

問い合せ:0467-23-0992

⇒古典だけでなく新作もこなす柳家三三師匠。故・柳家喜多八師匠から直伝の「二番煎じ」を掛けてくれます。幇間の悠玄亭玉八師匠も登場。陽気な桂宮司さんも加わって、楽しい高座が繰り広げられそうです。

 

白鳥トリビュート「こみち・こはる二人会」

f:id:osamuya-tasuke:20181226231301j:plain

日時:2月14日(木) 開演:19:30

料金:2,000円

出演

柳亭こみち「鉄火のお千代」、他古典一席

立川こはる「女泥棒」、他古典一席

場所:Koenji HACO(高円寺)

問い合せ:090-4249-0852

⇒鬼才・三遊亭白鳥創作落語を女性落語家が手掛けます。キレのいいセリフまわしが特徴のこみち、こはるの二人会。

 

長講激突! ぜん馬・扇遊二人会

f:id:osamuya-tasuke:20181226231321j:plain

日時:2月17日(日) 開演:13:00

料金:3,000円

出演:入船亭扇遊、立川ぜん馬

場所お江戸日本橋亭三越前

問い合せ:046-876-9227

⇒なかなか聴くことのできない長尺の落語をたっぷりと聴かせてくれる落語会。入船亭扇遊師匠は「付き馬」、立川ぜん馬師匠は「ちきり伊勢屋」を掛けてくれますよ。

 

 *情報内容-は、変更等の可能性があります。購入前に確認をお願いします。問い合せの番号は、お間違えないようにお願いします。

 

太助セレクト落語 2019年1月のお勧め落語会

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。2019年1月のお勧めの落語会をピックアップしました。年末年始は、観客も増え、落語がいちばん活気づく季節です。正月気分で、のんびりと聴く落語は最高。ただし、年末年始の寄席はとても混むので、入場はお早めに!

 

特撰落語名人会「さん喬、菊之丞、白酒」

f:id:osamuya-tasuke:20181129160309j:plain

日時:1月6日(日) 開演:13:00

料金:3,600円

出演柳家さん喬古今亭菊之丞桃月庵白酒

場所江東区文化センター

問い合せ:03-6240-1052

https://www.eifuru.com/ticket/534

⇒年明け最初の日曜日は、古典落語の練達による三人会。年初の落語会として、間違いのないメンバーです。華やかで、しっかりとした高座を楽しみましょう。

 

大古今亭まつり

f:id:osamuya-tasuke:20181129160354j:plain

日時:1月14日(月)~18日(金)

開演:14日 13:00、15~18日 18:30

料金:3,800円(1階席)、3,500円(2階席)

出演古今亭菊之丞(14日主任)、金原亭馬生(15日主任)、桃月庵白酒(16日主任)、五街道雲助(17日主任)、古今亭菊之丞(18日主任)

場所日本橋劇場(水天宮前)

問い合せ:050-3497-5500

http://www.nihonbasikokaido.com/event/5296.html

⇒サブタイトルが「志ん生のDNAを受け継ぐ者たち」。古今亭のいまを伝える演者が勢ぞろい。日替わりゲストも、柳家喬太郎柳家権太楼、柳家さん喬師匠など豪華メンバーが登場。本寸法の古今亭の芸を堪能できる5日間です。

 

朝日名人会

f:id:osamuya-tasuke:20181129160429j:plain

日時:1月19日(土) 開演:14:00

料金:4,300円

出演:入船亭扇遊「鼠穴」

古今亭文菊「七段目」

柳家喬太郎「偽甚五郎」

三遊亭萬橘「堪忍袋」

柳家喬の字「千早ふる」

場所有楽町朝日ホール

問い合せ:03-3267-9990(朝日ホール・チケットセンター)

https://www.asahi-hall.jp/yurakucho/concert/#02

⇒第186回を数える朝日名人会。年明けに扇遊師匠の「鼠穴」が聴けるなんて最高です。喬太郎師匠は、珍しい噺「偽甚五郎」をかけてくれます。

 

笑福亭たま深川独演会ファイナル

日時:1月25日(金) 開演:19:00

料金:2,500円

出演:笑福亭たま、(ゲスト)三遊亭萬橘、春風亭昇也

場所:深川江戸資料館

問い合せ:080-8515-1810

⇒古典だけでなく、新作落語、ショート落語も手掛ける笑福亭たま。笑いに引き込む腕力はとにかくすごいものがあります。2019年、東京でもブレイクなるか!?

 

広小路亭立川流夜席

日時:1月11日(金)~15日(火) 開演:18:45

料金:1,500円(前売)、2,000円(当日)

出演

11日(金)立川志の太郎、立川志奄、立川雲水立川談吉立川談修

12日(土)立川志ら乃立川ぜん馬土橋亭里う馬立川談四楼立川志らべ

13日(日)立川志ら門、らく兵、立川小談志、立川三四楼、立川左平次

14日(月・祝)立川只四楼、立川らく人、立川談之助、立川志ら玉、立川キウイ

15日(火)立川寸志、立川こはる立川龍志立川談慶立川志らら

場所:お江戸上野広小路亭

問い合せ:rakugotatekawaryu@gmail.com

落語立川流の定期落語会です。立川流は、出演者がきちんと落語を聴かせてくれるのが特徴。このお値段で、しっかりと落語が聴けるのは本当にお得です。お江戸日本橋亭や日暮里でも定期的に落語会を開催していますので、要チェックです。

 

落語立川流一門会情報http://tatekawa.info/2019-01/

 

*情報内容-は、変更等の可能性があります。購入前に確認をお願いします。問い合せの番号は、お間違えないようにお願いします。

落語の登場人物:おかみさん~亭主を支えるしっかり者

f:id:osamuya-tasuke:20181122155223j:plain

 

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。落語によく出てくる登場人物は、大体決まっています。長屋の八っつぁん、熊さん、ご隠居さん、おかみさんと子供(金ぼう、亀という名が多い)、商家の大旦那、若旦那、番頭さん。廓噺(くるわばなし)の女郎や幇間。今回は、名バイプレーヤーというべきおかみさんを取り上げます。

 

落語には夫婦をテーマにしたものがいろいろあります。夫はボンヤリしていたり、なまけ者だったりですが、それを支えているのが、しっかり者のおかみさんです。

 

落語の貧乏夫婦ものの傑作は、なんと言っても「火焔太鼓」でしょう。道具屋の甚平さんは、ボ~としていて商売が下手。つまらないガラクタを高値で仕入れてきたり、自分のうちで使っている火鉢を売ってしまったりと、へまばかりしています。女房はしっかり者で、口が達者。甚平さんに「お前さんは、世の中ついでに生きているような人」「馬鹿がこんがらがっちゃったね」など、言いたい放題。しかし、甚平さんが商売下手でも暮らしていけるのは、しっかり者のおかみさんが居ればこそ。

 

「火焔太鼓」を聴くなら、何といっても古今亭志ん生です。自身も貧乏生活が長く、借金から逃れるために18回も改名をした志ん生。しっかり者のりん夫人に支えられ、50代でようやく花開いた遅咲きの名人です。まるで志ん生と夫人が投影されているようなこの噺は、志ん生のベストともいわれる一席です。

 

「火焔太鼓」古今亭志ん生

www.youtube.com

 

女房のかわいらしさ、いじらしさが描かれる落語が「厩火事」。腕のいい髪結いのお崎が、仲人のところに相談にやってくる。お崎の夫は、7歳年下で遊び人。結婚して8年になるが、夫の本心がいまひとつ分からない。そこで仲人はお崎に2つのエピソードを話し、夫の心を試してみることを勧める……。亭主の悪口をさんざんまくし立てるのに、仲人に亭主の悪口を言われるとむきになって反論するお崎が、なんともかわいらしく、いじらしい噺です。

 

厩火事桂文楽

www.youtube.com

 

落語に登場するおかみさんは、いい人ばかりではなく、ちょっと危ないタイプも登場します。

 

紙入れ」の出てくるおかみさんは、亭主の留守に小間物屋の新吉を引っ張りこんでいる。亭主は泊まりだからと、ご馳走を用意してゆっくり楽しもうとしているところへ、亭主が突然、帰ってきたから大慌て。間一髪のところで裏口から逃がすのだが、新吉は紙入れを忘れていってしまう。この中には、おかみさんからの呼び出し状が入っている。紙入れを置き忘れたことに気付いた新吉は、翌朝、恐る恐る様子を見に行くのだが……。腹の座ったおかみさんの登場する不倫噺。同じジャンルとして「風呂敷」「包丁」という噺もあります。

 

「紙入れ」桂歌丸

www.youtube.com

 

しっかり者のおかみさんが登場する噺で傑作と呼ばれるのが、ご存知「芝浜」です。

 

魚屋の勝五郎は酒におぼれて、しばらく仕事をさぼっている。女房に尻を叩かれ、魚を仕入れに芝の河岸(かし)に来てみると、まだ早すぎて開いていない。仕方がないので芝の浜で一服していると、流れ着いた財布を見つける。開けてみると、なんと五十両もの大金が入っていた。勝五郎は長屋に戻り、仲間を集めて、大酒を飲み、ご馳走をふるまって、その日は寝てしまう。翌朝、「酒代はどうするのか」と尋ねる女房に、勝五郎は昨日の大金の入った財布の話しをする。ところが女房は「大金って何の話しだい? 夢でも見たんじゃないか」という。どこを探しても財布は見つからない。「あれは夢だったのか」とあきらめ、それ以来、心を入れ替え、酒を断ち、仕事に打ち込むようになる勝五郎。しかし、これは女房がとっさに機転をきかせて、夢物語に仕立て上げたのであった……。

 

年末の寒い時期に高座にかけられることが多い人情噺「芝浜」を、ぜひご堪能ください。

 

「芝浜」古今亭志ん朝

www.youtube.com

 

関連記事

osamuya-tasuke.hatenablog.com

深川江戸資料館:落語の風景を実感したいなら、ぜひ訪れたい!

f:id:osamuya-tasuke:20181114165435j:plain

 

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。落語を聴いていると、長屋や宿屋、廓など、いろいろな場所が登場します。しかし自分の想像力だけでは、リアルに情景が浮かばないこともあります。そこでお勧めしたいのが「深川江戸資料館」です。

 

都営大江戸線清澄白河駅より、歩いて5分。江東区深川江戸資料館の魅力は、何といっても江戸時代末(天保年間)の深川の町並みを実物大で再現していることです。

 

地下1階から地上2階までの空間に作られた町並みには、表通りには大店(肥料問屋)や白壁の土蔵、船宿が並んでいます。通りに沿って猪牙舟の浮かぶ掘割も作られています。

 

f:id:osamuya-tasuke:20181114165725j:plain

 

深川の大店といえば、木場材木問屋、米問屋、そして干鰯・魚〆粕(しめかす)・魚油を扱う問屋でした。佐賀町は隅田川河口にあって大船の出入りに便が良く、小名木川の水運もありこうした大店と倉庫が並ぶ町でした。

(深川江戸資料館ホームページより)

 

 船宿は、もとは船で遊びに行く客を送り迎えするところで、落語「船徳」などにも登場しますね。通りには八百屋やつき米屋も並んでいます。

 

f:id:osamuya-tasuke:20181114165830j:plain

f:id:osamuya-tasuke:20181114165857j:plain

 船宿の帳場。大福帳やそろばんも触ることが可能

 

f:id:osamuya-tasuke:20181114170340j:plain

 

表通りを抜けて火の見櫓のある広場に出ると、よしず張りの水茶屋や天麩羅の床店、二八そばの屋台などがあります。「時そば」などの落語が頭に浮かびます。八百屋とつき米屋の間の長屋木戸をくぐると、路地をはさんで長屋が軒を連ねています。

 

この資料館の魅力は何と言っても、店や長屋に実際に上がって生活用具などに触れられることです。長屋や船宿にあがってみると、その狭さや天井の低さに驚きます。長屋は本当に必要最低限の生活空間だったのだな、と実感できます。

 

展示は、そこに住む人々の家族構成や職業、年齢まで細かく設定され、それぞれの暮らしぶりにあった生活用品が展示されているそうです。例えば長屋の1つは、木場の木挽職人の家という設定。木場で働く職人なので大鋸や鳶口、大工道具が置かれてて、箱膳や女房の化粧道具も置かれています。水瓶(みずがめ)やかまどなどの大きさもリアルに知ることができます。

 

f:id:osamuya-tasuke:20181114170101j:plain

木挽職人の家。正面にかけられた大鋸が目を引く

 

f:id:osamuya-tasuke:20181114170030j:plain

 

また、一日の移り変わりが音響・照明などで情景演出されるのも面白い趣向です。時刻によって変わる町の風景を楽しむことができます。

 

深川江戸資料館には、この江戸の町を再現した常設展示に加え、小劇場とレクレーションホールも備わっていて、落語を含め様々な催し物を定期的に開催しています。

 

落語好きの方は、ぜひ一度、足を運んでみてください。落語の世界の想像力が広がるはずです。清澄庭園と組み合わせれば、のんびりとした散歩も楽しめますよ。

 

江東区深川江戸資料館

住所江東区白河1-3-28 アクセス

TEL:03-3630-8625

展示室観覧料:400円(大人)

開館時間 展示室 9:30~17:00(入館は16:30まで)

小劇場・レクホール 9:00~22:00

休館日:第2・4月曜日(ただし祝日の場合は開館)

https://www.kcf.or.jp/fukagawa/

太助セレクト落語 2018年12月のお勧め落語会

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。2018年12月のお勧めの落語会をピックアップしました。年末は恒例の落語会などが目白押し。冬にピッタリの落語を聴いて、一年を締めくくりましょう。

 

 

文京らくご会「扇遊・兼好二人会」

日時:12月8日(土) 開演:14:15

料金:3,500円

出演:入船亭扇遊、三遊亭兼好

場所:文京シビック・小ホール(春日)

問い合せ:03-6304-8545

⇒江戸の粋を感じさせてくれる扇遊師匠と、いつも元気いっぱい兼好師匠。二人のコラボレーションが、どんな世界を生み出してくれるのか、期待大です!

 

COREDO落語会

日時:12月9日(日) 開演:17:00

料金:5,000円

出演柳家さん喬三遊亭小遊三柳家喬太郎、神田松之丞

場所日本橋三井ホール

問い合せ:03-6263-0663

⇒さん喬、小遊三喬太郎、松之丞と華のある演者が、豪華なホールに勢ぞろい。日本橋で賑やかな高座を見せてくれそうです。このメンバーを日本橋で見るなら、料金が高いのも仕方ないか……。(入場時にドリンク代金が別途必要です)

 

みなと毎月落語会「白鳥、彦いち、白酒三人会」

日時:12月11日(火) 開演:19:00

料金:3,500円

出演三遊亭白鳥林家彦いち桃月庵白酒

場所赤坂区民センター

問い合せ:03-6452-5901

⇒落語初心者にもお勧めしたい落語会。白鳥、彦いち、白酒の三人だったら間違いなく大笑いできますよ。新作落語を聴いたことのない方も、これを機会にぜひ楽しんでみてください。

 

年忘れ市馬落語集

f:id:osamuya-tasuke:20181030154313j:plain

日時:12月27日(木) 開演:18:30

料金:S席6,000円、A席5,500円

出演柳亭市馬柳家三三三遊亭兼好春風亭一之輔林家たけ平桂夏丸林家つる子、春風亭一花、林家なな子

場所大井町きゅりあん(大ホール)

問い合せ:03-6277-7403

⇒いまや年末は第九ではなく、市馬の落語集と呼ばれるまでになった(?)年末の恒例イベント。国民的行事となる日も近い!? オーケストラも入って、お祭りのような賑やかさ。ぜひ、楽しみに出かけましょう!

 

*情報内容は、変更等の可能性があります。購入前に確認をお願いします。問い合せの番号は、お間違えないようにお願いします。

落語『棒鱈』:芋侍を笑い飛ばす江戸っ子の心意気

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。いま『棒鱈(ぼうだら)』という噺を稽古しています。

 

料理屋の二階で江戸っ子が二人で飲んでいる。一人は酒癖が悪く、すでに酩酊状態。芸者を呼んで待っていると、隣の座敷に芸者が大勢入って、大騒ぎしているのが聞こえてくる。隣ではしゃいでいるのは薩摩侍。マグロの刺身を「赤べろべろの醤油漬け」と呼んでみたり、野暮ったい歌ばかりうたうので、酔った江戸っ子は腹が立って仕方ない。相方が止めるのも聞かず、隣の侍の顔を覗きに行くのだが、酔っているのでふすまごと座敷に転がり込んでしまう……。

 

この田舎侍が噺の中で、国元の歌(?)をいろいろと歌います。

 

もずの口ばし

♪もずの口ばし 三郎兵衛のなぎなた 差せやから傘 ワッキリ チャッキリ~

 

十二か月

♪1月 1がち~は 松飾り、2月 2月はひなまちゅり、3月 3月はテンテコテン~

 

琉球

琉球へおじゃるなら わらじ履いてや おじゃれ~

 

江戸っ子が粋な都々逸(どどいつ)で対抗しようとしてもお構いなし。嬉しそうに田舎侍は歌い続けます。

 

将軍のお膝元に暮らすことを誇りとした江戸っ子の心意気

 

この落語は、田舎侍の野暮ったさを、とことん強調して笑い飛ばす噺です。落語は基本的に町人が主人公であり、侍は威張りくさったイヤな奴という役どころです。これは江戸っ子の気分を表しているのでしょう。中でも馬鹿にしていたのが、地方から江戸に来ている各藩の侍です。江戸屋敷に住む彼らを「田舎侍」と呼び、その野暮ったさを笑い飛ばしていました。

 

しかし、ご存じのように慶応3年(1867)に大政奉還、翌4年には徳川家は新政府に江戸城を明け渡します。明治政府の中心メンバーである薩摩藩長州藩藩士たちが、わがもの顔で江戸に乗り込んできたのです。

 

徳川家は駿河遠江国など70万石に移封となります。800万石といわれた所領が10分の1以下になってしまったわけです。

 

『大奥の女たちの明治維新』という本によれば、この時期の幕臣の数は3万人強。70万石の大名として召し抱えられる藩士の数は5千人程度。2万人以上の幕臣には、徳川家の籍を離れてもらう必要がありました。このとき徳川家は、幕臣に3つの選択肢を提示したそうです。

 

①新政府に帰順して朝臣となる。つまり政府に出仕する。

②徳川家にお暇願いを出して、新たに農業や商売を始める。

③無禄覚悟で新領地の静岡に移住する。

 

新政府に仕えるか。武士を捨てて商売か農業を始めるか。それとも、藩主と共に無給を覚悟で静岡に移住するか。徳川家としては身上が10分の1以下になってしまうため、①の「新政府に仕える」を選んでもらいたかったはずです。しかし、新政府に仕えることを潔しとせず、静岡移住を選んだ幕臣は1万人以上になったそうです。

 

政府に仕えることを良しとしない空気は、幕臣の間で非常に強かった。朝臣となった幕臣を裏切り者扱いし、白眼視した。

 こうした空気は、魚屋や八百屋も共有していた。政府に身を売った幕臣の家には、魚も野菜も売らなかったという。将軍のお膝元に暮らすことを誇りとした江戸っ子の心意気といったところだ。(p.61)

 

 

政府への出仕を決めた幕臣にも後ろめたい気持ちがあり、人とはなるべく会わないように暮らしたそうです。しかし、結果として彼らの選択は賢明でした。農業や商売を始めた者は、「士族の商法」という言葉があるように大半が失敗。また武士の意地を貫き、静岡に無禄覚悟で移住したものは、ひどい生活難になり、ときには草まで食べるというような困窮生活を送ることになります。

 

ともあれ江戸っ子には、田舎侍、ましてや薩摩侍に対する強い侮蔑の感情があったようです。落語「棒鱈」は、そのような江戸っ子の心意気がうかがえる興味深い落語です。ぜひ、聴いてみてください!

 

参考文献

『大奥の女たちの明治維新

f:id:osamuya-tasuke:20181015151218j:plain

安藤優一郎(著)

朝日新聞出版社

 

柳家さん喬「棒鱈」

www.youtube.com

 

関連記事

osamuya-tasuke.hatenablog.com

落語ディーパー:東出昌大の落語への熱愛ぶりが微笑ましい落語番組

f:id:osamuya-tasuke:20181002104809j:plain

http://www4.nhk.or.jp/P4544/

 

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。NHK不定期に放映されている『落語ディーパー』をご存知でしょうか。サブタイトルには、「東出・一之輔の噺(はなし)のはなし」と銘打たれています。

 

NHKのホームページには、このように番組紹介されています。

 

落語に魅せられた東出昌大が、「若い世代が落語を知らないなんてもったいない」と立ち上がり、毎回ひとつの演目をとりあげ、春風亭一之輔柳家わさび、柳亭小痴楽、立川吉笑、雨宮萌果アナウンサーと深―く語り合います。

 

落語を深く掘り下げて、解説していく番組

 

この番組では、毎回、落語1話を取り上げ、ストーリーを紹介し、噺の聴きどころを解説していきます。また、過去の名人のお宝映像も数多く放映されます。例えば、「居残り佐平治」を紹介した回では、主人公の佐平治が客をヨイショする場面での、古今亭志ん朝立川談志五代目・三遊亭円楽それぞれの高座を流してくれました。各回の噺は、出演の落語家が演じてくれ、番組内では見ることができませんが、ネットで視聴することが可能です(放映後、1週間程度の期間限定)。

 

2017年に放映された第1弾では、「目黒のさんま」「あたま山」「お菊の皿」「大工調べ」。2018年に放映された第2弾では、「地獄八景亡者戯」「明烏」「鼠穴」「粗忽長屋」「居残り佐平次」が取り上げられました。

 

NHKの落語関連の番組では「超入門!落語THE MOVIE」を、以前、紹介したことがあります。「超入門!落語THE MOVIE」は、落語の演目を映像化しているのですが、この番組の特徴は、落語家の喋りに合わせて、俳優がいわゆる「口パク」で登場人物を演じていることです。俳優は、自分のスピードでセリフを言えないので、何回も撮り直しをするそうです。その制作エピソードを聞いたとき、「どれだけ贅沢な番組なんだ!?」と驚きました。

 

民放と違い、視聴率や広告クライアントの意向などに振り回されることの少ないNHKならではの贅沢な番組作りです。この落語ディーパーも、「よくぞここまでマニアックに作り込んだ」といえる番組です。通常、夜11時から30分の番組ですが、視聴率を考えると、ここまで凝った番組作りは民放では難しいでしょう。「目黒のさんま」って、30分語るほどの深い噺でもない気がするし……。

 

この番組で、各演目に対する落語家さん、それぞれの捉え方の違いを聞いていると、落語は解釈によって随分と変わるものだということを実感します。

 

名人・上手の落語家が作り上げる独自の人物像

 

古典落語の場合、台本は存在します(通常、口伝というかたちをとりますが)。それを落語家は自分なりに解釈して演じます。つまり演出家と役者を兼ねているようなものです。基本的な噺の骨格と登場人物は設定されていますが、その登場人物の性格や各場面での感情のあり方などは落語家の手にゆだねられています。解釈しだいでは、独自の性格を作り上げることもできます。

 

前述した「居残り佐平治」は、主人公の佐平治が金もないのに遊郭で仲間と豪遊し、金を返すためにその店に居残る噺です。仕事にそつがなくて愛嬌のある佐平治は、客からも大変に可愛がられるようになります。仕事や祝儀を奪われた店の連中は、店の主人に佐平治を追い出すように頼み込みます……。実はこの佐平治、居残りを稼業とする悪い奴。この主人公を、談志や円楽は「調子のいい人間」として描き、志ん朝は「愛想のよい憎めない」という人物像に仕上げました。落語ディーパーで春風亭一之輔は、かなりの悪漢にして演じていました。

 

名人・上手と呼ばれる落語家は、噺を師匠から教わったとおりに演じるだけでなく、必ず自分なりの人物像にまで練り上げていきます。この辺りが凡庸な落語家との大きな差なのです。

 

この番組のもう1つの魅力といえば、何といっても進行役の東出昌大の落語への熱愛ぶりでしょう。落語にはまると、いっとき高座に足しげく通い、落語のCDやDVDを視聴しまくり、自分のお気に入りの噺や落語家を見つけていきます。彼もいまそのような狂熱の季節にいるのでしょうか。番組の中で落語への熱い思いがストレートに伝わってきます。その純粋さは、とても気持ちの良いものです。

 

NHKならではの贅沢番組、「超入門!落語THE MOVIE」と「落語ディーパー」は、落語に興味がある方、落語への理解を深めたい方にお勧めの放送です。どちらも不定期放送なのでお見逃しなく!

 

NHKホームページ

www4.nhk.or.jp

 

関連記事

osamuya-tasuke.hatenablog.com

『マリア・シャラポワ自伝』トップの座に就き、トップであり続けるための条件

f:id:osamuya-tasuke:20180927163107j:plain

 

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。最近、「プロとアマチュアの差とは何だろう?」と考え続けています。そこへ飛び込んできたのが、テニスの大阪なおみ全米オープン制覇です。日本人初の快挙ということで、大きなニュースとなりました。テニス好きの太助はこのニュースを聞いて、17歳で全英オープンを制したマリア・シャラポワについて思い出しました。

 

プロになるまでの波乱万丈の人生

 

190cm近い身長とブロンドの髪を持つ端麗な容姿のテニスプレーヤー、マリア・シャラポワをご存じの方も多いと思います。17歳にして全英オープンを制覇し、その後、世界ランキング1位を獲得、生涯グランドスラム(4大大会をすべて制覇)も達成した、まさにテニス界のトッププレーヤーです。

 

試合中のシャラポワは、1球打つたびに大きなうなり声をあげ、獣のような眼光で相手をにらみつけてコートを走り回ります。容姿が端麗なだけに、プレースタイルとのギャップが際立ちます。優雅とはほど遠い、そのプレースタイルを嫌う人もいます。

 

彼女は、なぜ獣のように戦い続けるのか? その秘密はマリア・シャラポワ自伝』の中で解き明かされます。そこに描かれているのは、想像を絶するようなシャラポワの生い立ちです。

 

1986年ロシア・チェルノブイリ原発事故が発生。近隣に住んでいた両親はシベリア移住を決断し、その翌年、シャラポワが生まれます。テニス好きの父の影響により、4歳でテニスをスタート。6歳のとき、伝説的なテニス選手であるナブラチロワに見いだされ、アメリカに行き、テニス技術を磨くように勧められます。ここでシャラポワの父・ユーリは、仕事を辞め、娘を世界一のテニスプレーヤーにすることを決意します。

 

ビザを取ることさえ困難な時代に、父・ユーリは全財産と借金でこしらえた700ドルを持ち、6歳の娘とアメリカへ旅立ちます。しかし到着した空港には、迎えに来るはずのコーチは現れません。英語をひと言もしゃべれない親子は、たまたま知り合ったポーランド人夫婦の助けを借り、自分たちを受け入れてくれるテニスアカデミーを探し歩きます。

 

なんとか著名なアカデミーに入校でき、おんぼろアパートの一室を借り、親子のアメリカ生活はスタートします。セレブの娘たちが世界中から集まるアカデミーで、ロシアから来た貧しい6歳の娘は、戦う世界の掟を含め、いろいろなことに気付きます。

 

少女たちは世界中からこのアカデミーに来ていた。まあまあ上手な子もいた。かなり上手な子も。優秀な子もいた。でも大半はさほど上手ではなかった。こうしたプレーヤーたち、アカデミーに真の意味での利益をもたらしている生徒がいたのは、彼らの親が現実に向き合うことができなかったからだ。

 

この世界では、とても上手というものと、優秀というものの間にはグランド・キャニオン並みに大きな差があった。(p.51)

 

 

移民として生き残ろうとする父と娘には、苦難が次々に襲いかかります。なんとか入校したアカデミーも他のテニスママのいじめにより追い出され、別のアカデミーへ。しかし、ここでは英語が理解できないのにつけこまれ、ひどい条件の奴隷契約を結ばされそうになります。さらに父親は過酷な労働により体を痛め、家賃が払えなくなり、アパートを追い出されそうにもなります。

 

しかし、不運のあとには幸運が訪れます。たまたまテニストーナメントで知り合った人間に苦境を訴えたところ、契約書に詳しい知人を紹介してくれ、さらに自宅に住まわせてくれたのです。

 

戦場で友人を作ることに、わたしは関心がない

 

こうした苦境の中で、シャラポワはテニスの腕を上げるとともに、強固な性質を作り上げていきます。

 

ボールを打つとき、わたしは小さくうなった。子供のころでさえ、わたしはまわりから自分を切り離そうとしていた。感情を持たない。恐怖を感じない。氷のようになる。ほかの女の子と友達にならなかった。そんなことをすれば、わたしはさらに優しくなり、さらに負けやすくなるから。まわりの少女は世の中で最高に親切な子たちだったかもしれないが、わたしはそんなこと知ろうともしなかった。知らないでいようと決めたのだ。(中略)自分の最大の強みはそういう性質なのだ。だったら、それを捨てるべきではない。

 

戦場で友人を作ることにわたしは関心がない。友達になったら、武器を捨てることになる。(p.59)

 

 

こうしてテニストーナメントを戦い続ける中で、シャラポワは頭角を現し、スポーツエージェンシーにも見い出されて、スポンサーがつくようになります。

 

それにしてもテニスの世界は過酷です。

 

(父親と)ふたりだけでトーナメントからトーナメントへ、街から街へ、ホテルからホテルへと旅をした。北米からアジアやヨーロッパへ行き、また北米へ戻ってくるというように。強行軍だった。いつ終わるともわからないツアー。世界中を旅しながらも、何ひとつ見ることはない。(中略)いつも同じ顔ぶれ、同じライバル、同じ争い。毎日が同じ日。繰り返し、繰り返し。(p.154)

 

6歳からプロテニスプレーヤーの道を歩み始めたシャラポワは、16歳でツアー初優勝。17歳でテニスの聖地ウィンブルドンで、2004年の全英オープン優勝を成し遂げます。そして2005年には世界ランキング1位まで駆け上がります。

 

トップの座に就き、トップであり続けるための条件とは

 

2008年までに4大大会で3回の優勝を重ね、トッププレーヤーの座に就いたシャラポワ。しかし、彼女の波乱のキャリアはまだ続きます。この年、長年の蓄積疲労もあり、肩の手術に踏み切ることになり、長期の休養を余儀なくされます。手術後のリハビリを経て復活し、2012年には全仏オープンを制覇し、生涯グランドスラムを達成。その年のロンドンオリンピックでは、ロシアの旗手を務めます。

 

しかし、2016年に国際テニス連盟からドーピング疑惑の指摘を受けてしまいます。心臓疾患のため永年服用していたサプリメントが、2016年に禁止薬物に指定されたことに気付かず、使用を続けていたからです。シャラポワは、この疑惑を受けていることを自ら公表し、国際テニス連盟と争いますが、15か月の出場停止となってしまいます。彼女のスポンサークライアントは、この騒動ですべて離れていきます。

 

15か月に渡る出場停止期間を経て、2017年、シャラポワは再び、テニスプレーヤーとしてカムバックし、歩み始めます。

 

それにしても、なんという凄まじい人生でしょう。中高年世代は、マンガ「巨人の星」を思い出すかもしれません。貧しい家庭に生まれた星 飛雄馬(ほし・ひゅうま)が、父のスパルタ指導のもとプロ野球のエースピッチャーになり、ライバル達と戦い続けるというマンガです。現在、小説やマンガで、「巨人の星」のようなストーリーを展開したら、荒唐無稽と言われかねません。

 

巨人の星」は1960年代のマンガです。60年代の日本には、貧困が目に見えるかたちで、あちこちに数多く存在していました。貧困から抜け出すための1つの手段としてスポーツや芸能があり、漫画化もされていたのです。現代の日本においても、貧困はなくなったわけではありません。しかし、そこから抜け出すことをテーマにしたストーリーには、リアリティがなくなってしまいました。いまは、貧困など重たいものを背負わない、軽やかな天才がもてはやされる時代となりました。

 

しかし、この父娘を見ると、まだまだ世界には、何かを背負いながら戦い続けているアスリートがいることを実感します。

 

世界中を巡り、独りで戦い続けるプロテニスプレーヤーは、本当に過酷な職業です。20代中盤を過ぎると体はボロボロになり、20代後半には引退を考え始めます。世界中の天才たちと戦いを繰り広げ、トップの座に就いても、すぐに新たな天才が現れてきます。世界No.1の座に就き、生涯グランドスラムを達成し、目的を失いかけたシャラポワは、このドーピングによる出場停止により、新たな闘志を燃やし始めます。

 

この本の最後で、彼女はこのように結んでいます。

 

今はテニスをすることだけ考えている。できるだけ長く。できるだけ激しく。ネットが取り払われるまで。ラケットが焼き尽くされるまで。わたしが止められてしまう日まで。止められるものなら、やってみるがいい。

 

天才たちが集まるプロ集団の中で、トップの座に就き、トップであり続けるための条件。それを垣間見ることができる貴重な1冊でした。

 

マリア・シャラポワ自伝』

マリア・シャラポワ(著)

文藝春秋

 

関連記事

osamuya-tasuke.hatenablog.com

osamuya-tasuke.hatenablog.com

 

太助セレクト落語 2018年11月のお勧め落語会

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。2018年11月のお勧めの落語会をピックアップしました。暑さがやわらいできたと思ったら、早くも年末の情報をお届けする季節になってしまいました。11月はめずらしい組み合わせの落語会も登場します。チケット予約はお早めに!

 

道楽亭出張寄席

立川こはる春風亭百栄師の胸を借りる」

f:id:osamuya-tasuke:20180925155224j:plain

日時:11月4日(日) 開演:18:00

料金:2,500円

出演立川こはる春風亭百栄

場所お江戸日本橋亭三越前

問い合せ:03-6457-8366

⇒旬の若手噺家が,尊敬する師匠の胸を借りるシリーズ。今回は立川こはるが、古典・新作両刀遣いの爆笑王春風亭百栄師匠の胸を借ります。いつも元気いっぱいの立川こはるが、何かを得るのか? それとも叩きのめされるのか!

「道楽亭出張寄席」専用予約フォーム

http://dourakutei.com/schedule/reservation_a/

 

二人三客の会

f:id:osamuya-tasuke:20180925155306j:plain

日時:11月9日(金) 開演:19:00

料金:3,100円

出演:入船亭扇遊、瀧川鯉昇、ゲスト・三笑亭夢丸、江戸家小猫

場所横浜にぎわい座

問い合せ:045-231-2515

⇒先日の三越落語会でも、扇遊、鯉昇師匠の組み合わせのおもしろさを堪能しました。粋な古典落語の世界を楽しみたいのなら、ぜひこの落語会に足を運んでください。ゲストの夢丸師匠もいち押しです!

横浜にぎわい座チケット購入

http://nigiwaiza.yafjp.org/ticket/

 

新風落語会「めざせ! 芸能ホール独演会」

f:id:osamuya-tasuke:20180925155333j:plain

日時:11月13日(火) 開演:19:00

料金:3,100円

出演:三遊亭わん丈、立川こはる桂宮治、ゲスト・三遊亭兼好

場所横浜にぎわい座

問い合せ:045-231-2515

⇒のげシャーレで独演会を行っている若手精鋭が、芸能ホールでの独演会を目指して競います。ゲストは、のげシャーレから見事、芸能ホールでの独演会へとステップアップを果たした三遊亭兼好師匠です。

横浜にぎわい座チケット購入

http://nigiwaiza.yafjp.org/ticket/

 

談志まつり2018「立川談志追善 特別公演」

f:id:osamuya-tasuke:20180925155353j:plain

日時:11月20日(火)17:00、21日(水)12:00、21日(水)17:00

料金:各4,500円

出演

20日(火)立川談四楼立川談笑立川ぜん馬立川キウイ立川談慶、立川平林

21日(水)12:00 立川龍志立川談之助立川志らく立川雲水立川談修立川談吉

21日(水)17:00 土橋亭里う馬立川談春、立川生志、立川志の輔立川志遊立川小談志

場所:よみうりホール(有楽町)

問い合せ:03-5785-0380

⇒今年も立川談志の命日に合わせて「談志まつり2018」が開催されます。談志直弟子全員による追善落語会に加えて、さまざまなゲストも登場。今回のゲストは、Mr.マリック/超魔術(20日夜)、ピコ太郎/歌(21日昼)が出演します。

 

*情報内容は、変更等の可能性があります。購入前に確認をお願いします。問い合せの番号は、お間違えないようにお願いします。