落語はビジネスにも役立つ!「笑う力」を身につけたい

アマチュア落語家・太助が、落語の魅力を考えます。

落語の名作「芝浜」~よそう。また、夢になるといけねえ

f:id:osamuya-tasuke:20180429092737j:plain

 

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。今回は落語の名作と呼ばれる「芝浜」を紹介します。「よそう。また、夢になるといけねえ」というオチのセリフは、とても有名です。『笑点』でもギャグで使われているので、みなさんも耳にしたことがあるかもしれませんね。

 

芝浜のあらすじ

 

1)魚屋の勝五郎(魚勝)は酒におぼれて、しばらく仕事をさぼっている。女房に尻を叩かれ、魚を仕入れに芝の河岸(かし)に来てみると、まだ早すぎて開いていない。仕方がないので芝の浜で一服していると、流れ着いた財布を見つける。開けてみると、なんと五十両もの大金が入っていた。勝五郎は長屋に戻り、仲間を集めて、大酒を飲み、ご馳走をふるまって、その日は寝てしまう。

 

2)翌朝、「酒代はどうするのか」と尋ねる女房に、勝五郎は昨日の大金の入った財布の話しをする。ところが女房は「大金って何の話しだい? 夢でも見たんじゃないか」という。どこを探しても財布は見つからない。「あれは夢だったのか」とあきらめ、それ以来、勝五郎は心を入れ替え、酒を断ち、仕事に打ち込むようになる。その結果、表通りに店を構え、人を使うまでになる。

 

3)三年後の大みそか。女房が勝五郎に、ぶつなり殴るなりしていいからと、財布を差し出し、いきさつを話し始める。財布の横領は死罪。このまま大金を手にしたら、亭主は本当にダメな人間になってしまう。困った女房は大家と相談のうえで、役所に届け、亭主には夢だと話すことにした。三年後、落とし主が不明で財布は下げ渡されたのである。

 

4)三年間、隠していたことを詫びる女房に、勝五郎は自分を立ち直らせてくれたと感謝する。女房は、勝五郎の労をねぎらって、久しぶりに酒でもつけようかと言う。勝五郎は喜んで、一度は盃に手をつけるが、それをおろしてひと言。

 

「よそう。また、夢になるといけねえ」

 

落語の成立

 

古典落語の祖と言われる三遊亭円朝が、「酔っ払い・芝浜・革財布」という客からのお題で作った三題噺ともいわれます。円朝以降、さまざまな落語家によって継承され、磨き抜かれた人情噺(にんじょうばなし)です。また、この落語をもとに、芝居も作られています。

 

三代目・桂三木助は、芝浜の情景描写に文芸的な色合いを付けて、高い評価を得ました。例えば、夜明け前の芝浜の光景を、三木助はこのように語ります。

 

「いやー、いい色だなあ。よく空色ってえと青い色のことをいうけれど、いや朝のこの日の出の時には空色ったって一色だけじゃねえや。五色の色だ。小判みてえな色をしているところがあると思うと、白っぽいところがあり、青っぽいところがあり、どす黒いところがあり……」

 

三木助以外にも、古今亭志ん生金原亭馬生三笑亭可楽古今亭志ん朝立川談志など名人・上手と呼ばれる落語家が、この噺を演じてきました。

 

ちなみに芝浜の舞台は、JR田町駅の西口から5分程度のところにある本芝公園の辺りだったようです。いまは埋め立てられていますが、昔は一帯が海岸で、雑魚場(ざこば)と呼ばれていたそうです。

 

f:id:osamuya-tasuke:20180429092815j:plain

芝公園

 

好みの分かれる落語「芝浜」

 

名作と呼ばれる芝浜ですが、聞き手の好みの分かれる噺でもあります。女房の愛情と機転によって、飲んだくれの魚屋が立ち直るという人情噺ですが、「夫婦愛」+「ダメな男の再生」というテーマが古くさく通俗的で嫌いという人もいるようです。

 

また、落語家さんの中でも、芝浜の筋立てについて

・飲んだくれが、あんなに簡単に酒をやめられるのか?

・魚屋のような職人が、女房に嘘をつかれて、怒ったり、殴ったりしないのはおかしいのではないか?

と感じる方もいるようです。このため、落語家によってラストのシーンの演じ方などが少し異なります。

 

年末・年始の寒い時期に演じられることの多い作品です。芝浜の世界が好きか、嫌いか、ぜひ一度、ご自分で味わってみてください。

 

三代目 桂三木助「芝浜」

www.youtube.com

 

関連記事

osamuya-tasuke.hatenablog.com