落語はビジネスにも役立つ!「笑う力」を身につけたい

アマチュア落語家・太助が、落語の魅力を考えます。

第132回 江戸川落語会:柳家三三、春風亭一之輔 二人会

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。2018年3月14日、江戸川落語会を観るために、総武線新小岩駅にある「江戸川区総合文化センター」に足を運びました。

 

今回は、柳家三三春風亭一之輔の二人会。しかも、この日はホワイトデーということで、副題は「男女にまつわる噺をテーマに二人が話す」とあります。

 

「落語に男女の噺はごまんとありますが、二人はなぜその噺を選んだのか?」そこを推測するのも楽しみの1つらしいのです。期待に胸をふくらませ、駅から15分以上かかる道のりを歩きました。

 

二人が選んだ男女にまつわる噺とは?

 

開口一番のあとに、柳家三三師匠の登場。春風亭一之輔が楽屋に入ったのが開演5分前で、「男女にまつわる噺」についてなんの打ち合わせもしていないとマクラで笑わせて、始めたのが「元犬」。え……!?

 

蔵前神社に迷い込んだ白犬が、人間に生まれ変わって、奉公に出るという落語。元は犬なので、着物の着方も分からないし、足をふいた雑巾の水も飲んでしまう。しかし、変り者が好きだという隠居のところで働くことになる……。

 

三三師匠の「元犬」は何回か生で聞いたことがあるのですが、やっぱりおもしろい。犬が帯を首に巻いて、喜んで遊んでいる様子などが、楽しく描かれます。しかし、この噺は女性は出てこないはず。どうするのかと思ってみていたところ、「うちにはお元という女中がいる。お元は女だよ」と念押しを……。どうやら、これで「男女にまつわる噺」の条件はクリアらしい。とってもユルいが、おもしろかったので良しとしましょう。

 

一之輔師匠が登場し、麻生財務大臣の悪口をひとしきり語って、笑わせてから、「お見立て」に。吉原の花魁・喜瀬川(きせがわ)は、客で田舎者の杢兵衛(もくべえ)大尽が嫌でたまらない。杢兵衛に会いたくないので、若い衆に「病気だから会えない」「入院したので、ここにはいない」など、いい加減なことを言って応対させるのだが、とうとう「死んでしまった」ことになる……。これは間違いなく男女にまつわる噺です。杢兵衛の生真面目だが、しつこい田舎者の雰囲気が上手に演じられ、笑いを誘っていました。

 

仲入りのあとには一之輔師匠が、再び高座へ。2席目は「寄合酒」。長屋の若い衆が、つまみを持ち寄って酒を飲もうということになる。しかし金がないので、乾物屋や魚屋からチョロまかしてきたりと大騒ぎ。一之輔師匠は、ぶっきらぼうな口調で、ときに大声でメリハリをつける話し方。元気のよい若い衆を登場させ、笑わせます。と、ここまで書いてきて、「寄合酒」には、女性が出てこないことに気づきました。条件をクリアしてないじゃん!

 

巡り巡って三三かな

 

トリは三三師匠で、演目は「不孝者(ふこうもの)」。道楽者の若旦那が、柳橋で芸者遊びをしている。怒った旦那が、下男になりすまして若旦那を迎えに行く。若旦那はもう少し遊びたくて、空き部屋に旦那をほうり込んでしまう。女中が、「若旦那の差入れだ」と酒と肴を持ってくる。物置のような部屋で文句を言いながら酒を飲んでいる旦那。すると、酔った芸者が間違えて入ってくる。それが昔馴染みの欣弥(きんや)という女。昔語りをするうちに、懐かしさと共に恋情が、少しずつ蘇ってくる……。

 

最後で、ようやく「男女にまつわる噺」を、じっくり聞くことができました。大変にめずらしい噺で、私も初めてです。物置部屋のような狭い座敷で、昔出会った男女が静かに昔語りをする。まさに、大人の落語です。落ち着きのある風貌と声を持つ三三師匠ならではの噺を、満喫しました。

 

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帰り道。カミさんがポツリと「巡り、巡って三三だな」とつぶやきました。私もまったく同感でした。これまで、いろいろな落語家さんを観てきました。とにかく明るい人。大声を出す人。客いじりばかりしている人。古典落語に、スマホなど現代の風俗をいれる人。たくさんの落語家さんの芸風に触れてきました。

 

いろいろ観て、その結果、やはり柳家三三が聞きたくなるのです。あざとく笑いを取ろうという落語家が増える中、古典落語の世界をきちんと浮かび上がらせて、スッと酔わせてくれる。まさに大人の落語。

 

巡り、巡って三三です。

 

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