落語はビジネスにも役立つ!「笑う力」を身につけたい

アマチュア落語家・おさむ家太助が、落語の魅力を考えます。

落語の「ちょいと一杯ひっかける」は、酒飲みにとても便利な言葉

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。太助は、はっきり言って酒好きです。ちなみに落語教室に来る中高年のおじさんは、ほぼ間違いなく酒好きです(笑)。いま「夢の酒」という落語を稽古しています。これは男の願望が、夢の世界に現れるような噺ですが、「落ち」のひと言は、まさに酒飲みならではのつぶやき。もう、たまりません。

 

酒呑噺が上手な落語家さんを聴くと、本当に飲みたくなる

 

男の道楽は昔から「飲む・打つ・買う」、つまり「酒、博打、女」と言われます。落語には、酒を題材にした噺(はなし)がたくさんあり、酒呑噺(さけのみばなし)という一大ジャンルを作っています。

 

落語家さんは、それぞれ得意なジャンルを持っていますが、酒呑噺を得意とする方もいらっしゃいます。私は酒飲みなので、酒を飲む仕草には厳しいのですが、先代の柳家小さん師の酒呑噺はまさに絶品でした。「んぐ、んぐ、んぐ」と喉を鳴らして飲み、飲み終わると、スッ~と顔色が赤らみます。あれは本当に不思議でした。

 

酒呑噺が上手な落語家さんの一席を聴くと、お酒が飲みたくなります。芸の力というのは凄いな、と思います。

 

最近の若手の落語家さんには、酒呑噺のうまい人があまりいない、という印象があります。今の若い人は日本酒よりも、ビールやサワー、ハイボールなど炭酸系のアルコールを主に飲むようになったことが原因かもしれません。サワーやビールは、ジョッキのような大き目のグラスを、グイっと持ち上げるようにして飲みます。日本酒は小ぶりのグラスやおちょこで、口を近づけるようにして飲みます。この辺りが、仕草のリアリティに差を生むのではないかと考えています。

 

日本酒のおいしい季節になりました。酒がうまくなる酒呑噺を紹介します。

 

猫の災難

 

文無しの熊さん、隣りのおかみさんから、鯛の頭と尻尾だけをもらう。猫の病気見舞いに貰ったもので、身を食べさせた残りもの。ここに訪ねてきたのが兄貴分。真中にすり鉢がかぶせてある鯛を見て、「いい魚がある」と勘違いして、酒を買いに行ってしまった。困った熊は、酒を買って戻ってきた兄貴分に「猫が身だけ、持って行ってしまった」と嘘をつく。どうしても鯛が食べたくなった兄貴分は、今度は魚屋へ。その間に、酒の味見を始めた熊だが、飲みだすと止まらない。とうとう、買ってきた酒を飲みきってしまった熊は、また猫のせいに……。

 

親子酒

 

大酒飲みの親子が、「これではいけない」と禁酒の誓いを立てる。ところが父親は、息子の留守に「内緒で一本だけ」と飲むうちに、一本が二本、三本となり、ベロンベロンに。そこへ息子が帰って来たので、必死で酔っていない振りをする。実は息子のほうも出先で酒を勧められ、ひどく酔っぱらっている。酔っ払い親子の会話が楽しい噺です。

 

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替り目(かわりめ)

 

ベロベロに酔っぱらって帰って来た亭主。自分の家の前で車屋を拾ったりと大変な酩酊状態。そんなありさまにもかかわらず、女房に寝酒を出せ、ツマミを買ってこいと、わがまま放題。仕方なく、女房がおでんを買いに出かけると、亭主はそっとつぶやく。「出てけ、お多福!って言ってるけど、本当は感謝しているよ。いつもこんな酔っ払いの面倒をみてくれて、本当に有難うございますって、いつだって拝んでるんだから……」。実生活でも大変な呑兵衛で、貧乏暮らしを続けた古今亭志ん生の代表作の1つです。

 

この他にも、「居酒屋」「一人酒盛(ひとりさかもり)」「試し酒」「夢の酒」「寄合酒」など、酒をテーマにした噺はたくさんあります。

 

落語には、「ちょいと一杯ひっかける」というセリフが、よく登場します。太助はこの言葉が大好きです。仕事が終わったあとのスイッチオフに、何かやる前の景気づけに、うまいサカナが手に入ったタイミングでと、いつでも使える便利な言葉。ほんの少量を、短時間で、お金をかけずに「ひっかける」。日本の居酒屋文化を育んだ言葉ではないかと、ひそかに思っています。