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『徳川家康』山岡荘八を読み終えて:現代の「戦争と平和」を考える

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。昨年12月より、山岡荘八(著)『徳川家康』を読み始め、3月末に、ようやく読了しました。

 

この本を開く気になったのは、韓国の元大統領である朴槿恵(パク・クネ)が、拘置所で熱心に読んでいるというニュースを知って、興味を持ったからです。

 

山岡荘八は、第二次大戦後の平和を、戦争と戦争のはざまの「小休止」ではないか、ととらえました。そして、「戦いのない世界を作るための条件は何か」を探るために書き上げたのが本著です。

 

戦いのない世界を作るためにはまず文明が改められなくてはならず、文明が改められるには、その背景となるべき哲学の誕生がなければならない。新しい哲学によって人間革命がなしとげられ、その革命された人間によって社会や政治や経済が、改められたときにはじめて原子科学は「平和」な時代の人類の文化財に変わってゆく

 

徳川家康』第1巻 あとがきより

 

 戦いのない世界を作るための哲学を、年頭にもう一度考えてみたくなり、読み始めました。1冊500ページ以上ある文庫本で全26巻。まさに大作であり、読み終えるまでに約3か月かかりました。

 

戦いの時代を終わらせるための条件とは?

 

読み進めるのが大変だったかというと、そんなことはありません。なにしろおもしろいのです。国民文学といわれる『宮本武蔵吉川英治(著)や『竜馬がゆく司馬遼太郎(著)なども同様ですが、多くの層から支持される小説は、やはり群を抜くおもしろさがあります。読み始めたら、ページをめくる手が止まりません。「桶狭間の戦い」や「関ケ原の合戦」など、史実として結果を知っていても、おもしろいのです。

 

20代で読んだときには、さまざまな合戦の展開にハラハラ、ドキドキしながら一気読みしたのを覚えています。30年経って読み直し、改めて『徳川家康』という小説の優れた点に気付きました。この小説は、徳川家康の一代記というより、同時代に生きた人々の群像劇です。例えば、政略の道具とされる女性たちが多数登場することも、本書の特徴です。彼女たちが、自分の生涯の意味を考えるという部分にも、かなりのページが割かれ、それぞれの「戦いと人生の意味」が問われます。

 

本書で家康は、さまざまな戦乱を生き抜きながら、人間として、あるいは覇者としての成長を遂げていきます。家康の守るべきものは、「自分」から「家」、「家」から「領土」、最終的には「国家」へと広がります。日本という国全体の幸福を考えたとき、国内での戦いを終息させ、泰平の世を作り出すことの重要性に気づいていくのです。

 

豊臣家を滅亡させた大阪夏の陣、冬の陣も、泰平を希求する心から生まれた「やむを得ない戦い」として描かれます。こうした山岡史観に違和感を覚える方もいるかもしれません。

 

しかし、戦いの時代を終わらせるためには、それぞれの領土の利害・対立を超越する意識が必要だったことに間違いはないでしょう。

 

山岡荘八は、巻末で「世界の平和は訪れるのか」というテーマについて、一抹の希望を述べ、筆を置いています。

 

まだ家康の欲したような「泰平―」は、今日の世界には根づいていない。依然として、人間の頭上から戦乱をなくするためには、どのような努力をなすべきかというテーマは重苦しく残っている。しかし(中略)世界の叡智と云われる人々は、地球を打って一丸とした法による支配の世界国家、世界連邦をつくるべきだと唱えだしている。(中略)この小説を契機にして、いよいよ家康の構想した「戦のない世界(当時の日本)」が、いろいろと世界の照明をあてられることになればうれしい。

(第26巻 あとがき)昭和42年

 

 

残念ながら世界は、現在、地球を一丸とするような考え方や行動から逆行しています。世界一の強国であるアメリカは、トランプ大統領により、自国主義へと舵を切り始めました。自国を守ろうという考えで、物理的、経済的な壁を築こうとしています。イギリスのEU脱退、米中経済戦争、ロシアの強国復活への願望など、それぞれの国が、自国のためと称して高い高い壁を作り始めています。

 

本書では、戦いが延々と繰り返されます。非常に興味深いのは、ほとんどの争いが、不信感から生まれた小さな疑念から始まることです。

 

――相手は、自分を殺そうとしているのではないか? 滅ぼされる前に、家を守るために、戦おう。

 

北朝鮮情勢などは、まさにこの心理構造ですよね。根強い不信感が根底にあります。そして、いつの時代でも戦いは、領土を守り、家族を守り、平和を守るためという名目で始まります。

 

山岡荘八が巻頭で述べたように、現在は、戦いと戦いの間の「小休止」の時期にすぎないのでしょうか?

 

徳川家康』は、日本の戦国時代を通して、改めて現代の「戦争と平和」を考えさせてくれる好著でした。繰り返しますが、読み始めたらページをめくる手が止まらなくなるような、おもしろさのある本です。世界情勢への不安が高まっている今こそ、お勧めしたい一冊です。

 

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