落語教育委員会 in 市川:柳家喬太郎、三遊亭歌武蔵、三遊亭兼好
こんにちは、アマチュア落語家のおさむ家太助です。2018年2月5日、市川市文化会館で開催された、落語教育委員会に足を運びました。
落語教育委員会は、柳家喬太郎、柳家喜多八、三遊亭歌武蔵、三人の落語会としてスタートしました。新作と古典を語れる人気者の喬太郎、元相撲取りの歌武蔵、古典の演者で玄人受けする喜多八という、少し毛色の変わった落語家の取り合わせで、当初から注目されました。また毎回、出演者三人によるコントも好評でした。
2016年、柳家喜多八師匠が亡くなり、会の存続が危ぶまれていましたが、三遊亭兼好師が新メンバーとして加わり、再開されました。
お約束のコントは、肩の力が抜けた「刑事殉職編」
会場は、総武線・本八幡駅から徒歩10分のところにある市川市文化会館。幕が開くと、お約束のコントで、今回は「刑事殉職編」。犯人役が歌武蔵、追いかける警官が兼好。設定は現代ですが、兼好は時代劇の岡っ引きのような恰好をしていて笑わせます。大柄な歌武蔵と小柄な兼好の取り合わせがコミカルです。犯人に撃たれて兼好が倒れると、同僚刑事の喬太郎が登場。「しっかりしろ」と助け起こすのですが、携帯が鳴り、呑気に日常会話を始めます。電話が終わると、慌てて兼好を助け起こすのですが、また電話が鳴り、のんびりと会話を始めます……。
コントが終わると、三遊亭歌武蔵師匠の登場です。元相撲取りの歌武蔵師は、高座に上がると「ただいまの協議について、ご説明します」というセリフから入ります。マクラは必ず相撲ネタ。自身の相撲体験談や相撲界の内幕話、噂話などを繰り広げます。昨年末より、日馬富士の引退騒動や行司の不行跡、貴乃花親方VS相撲協会など、相撲界は事件が目白押しですから、歌武蔵師匠も絶好調です。このまま相撲ネタで終わるのかと思ったほど舌も滑らかでしたが、古典落語の「後生鰻(ごしょううなぎ)」をしっかり聞かせてくれました。
仲入り(休憩)をはさんで登場したのは、柳家喬太郎師匠。「トリじゃないのは、気が楽でいいな~」と言いながら高座につきます。マクラでは、北朝鮮、恵方巻き、バレンタインデーなどをテーマに笑わせます。恵方巻きについて「なぜ、みんなが同じ方向を向いて、黙って、のり巻きを1本食べなきゃいけないんでしょうか? のり巻きは切って食べましょうよ!」と語ると、場内は大拍手!。みんなが、うまく言えないけれどモヤモヤと感じている身の回りの出来事を、スパッと切り取って、語ることのできる喬太郎師。この辺りのうまさが、当代一の人気落語家のゆえんでしょう。
バレンタインデーのマクラから、新作落語「白日の約束」に。バレンタインデーがテーマの短編ですが、時節にマッチしていて微笑ましい小噺でした。
落語教育委員会に新加入の三遊亭兼好は、いかに?
トリを務めるのは、落語教育委員会の新入生、三遊亭兼好師匠。渋い語り手だった喜多八師の印象が強いので、その後釜を務めるのは大変だと思いますが、兼好師の魅力は何といっても「明るさ、元気のよさ、声の大きさ」。「市川市文化会館が、なぜ市川駅ではなく本八幡駅にあるのか」というネタや、交番の標語に見る各地の泥棒観というネタで笑わせておいて、泥棒噺の「締め込み(しめこみ)」に入ります。
長屋に忍び込んだ泥棒が、風呂敷に着物を包もうとしたところで、主人が帰ってくる。泥棒は風呂敷包みはそのままに、台所の床下に慌ててもぐり込む。亭主は、この包みを見て、かみさんが間男と駆け落ちするつもりだと勘違いし、湯から帰ってきた女房と大喧嘩になる。亭主が煮えたぎったヤカンを投げつけたところで、泥棒は我慢ができず、床下から飛び出し、止めに入る……。まぬけな泥棒と、「夫婦の危機を救ってくれた」と泥棒に感謝する夫婦が登場する噺です。
今回、つくづく感じたのは、三遊亭兼好師匠には、やはり独特の華と艶があります。前職は魚河岸で働いていたので少しダミ声ですが、女性を演じても独特の艶っぽさがにじみ出ます。本編もセリフの細部まで手を加え、兼好流の「締め込み」に仕上がっていました。現在、トップクラスの人気があるのも納得できる高座でした。
落語教育委員会は、兼好師が参加して、また新しく楽しい会に生まれ変わったというのが、太助の感想です。
残念ながら、平日の月曜日、市川市で初めての開催という理由もあるのか、空席が目立ちました。兼好師も「隣の席が空いていたら、コートを遠慮なく置いてください。冬は空席ではなく、クロークと我々は呼んでいますから」と笑わせていましたが。
新メンバーで、新たな笑いの空間を生み出してくれることを期待します!
(参考図書)
落語教育委員会
東京書籍
関連記事