落語はビジネスにも役立つ!「笑う力」を身につけたい

アマチュア落語家・太助が、落語の魅力を考えます。

落語を続ける人、落語をやめてしまう人

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。落語教室に通い始めて3年目となり、いまではベテランと呼ばれるようになってきました。

 

落語を始めようという方はとても多いのですが、1、2回でやめてしまう人もたくさんいます。続ける人とやめてしまう人の違いは何でしょうか?

 

落語を長く続ける方は、当たり前のようですが落語好きです。お気に入りの落語家がいて、好きな演目があり、いつかその演目をやってみたいという人は、かなりの確率で落語を続けていきます。

 

落語を始める場合、最初は登場人物も少なく、場面転換もない、いわゆる前座噺から入ります。そして、いろいろな噺に挑戦することで、演じられるキャラクターが少しずつ増えていき、登場人物や場面転換の多い長編噺も語れるようになっていきます。

 

それは、登山を始めた人が低い山からスタートし、しだいに憧れの高い山に登れるようになっていくのにも似ています。

 

落語をまったく聞いたことがないという方が、教室に入ってくることもあります。しかし、なかなか長続きはしないようです。1、2回で「自分は落語に向かない」と決めてしまう方も多いのですが、次の演目選びに困ってやめてしまう方も大勢います。師匠が演目選びのアドバイスをしてくれることもありますが、言われるがままやっている人は、たいてい長続きしません。

 

落語に対して好き嫌いやこだわりのない人は、どうも長続きしないようなのです。

 

「いつの日にか、やりたいことがある」ことの大切さ

 

「いつか、やりたいことがある」ことは、何かを継続していくことの大きな原動力になると思います。演劇、映画、テレビなどで活躍する三谷幸喜氏のインタビュー集三谷幸喜 創作を語る』という本を読んでいると、このことを痛感します。

 

ハリウッド映画のようなオシャレなコメディーや「シットコム」と呼ばれる舞台的な作りのシチュエーションコメディに対して、三谷氏はとても強い愛着を持っています。シットコムとは聞きなれない言葉ですが、昔テレビで放映されていた『アイ・ラブ・ルーシー』や『奥様は魔女』のようなアメリカのコメディーを指すそうです。

 

シットコムの約束事は“登場人物が誰も成長しない”こと。毎週、事件が起こるけど、翌週には登場人物がみんな事件を忘れてまた同じようなことで大騒ぎをする。成長したらいけない。さすがに『奥さまは魔女』みたいに笑い声を入れたり出来ないけど、ドタバタコメディードラマをやりたいと。(p.88)

 

 

三谷氏のシットコムに対する思い入れは強く、日本でなんとかシットコムをやりたくて、テレビドラマで何回も挑戦し、失敗を重ねます。

 

私は、『奥様は魔女』のような笑い声の入る昔のアメリカのコメディーは嫌いなので、三谷氏の思い入れは、いまひとつピンときません。しかし、このような強い愛着が、彼の創作の原動力になっていることは間違いありません。

 

訴えたいテーマありきで作品を作るのではなく、かつて自分が楽しんだ世界をなんとか伝えたい、再現したいという気持ちが、三谷氏のドラマ作りの強力なエンジンになっているのです。

 

三谷氏は経験と実績を積むことで、「次はこの役者に、こんなコメディーをやらせたい」というように願望をさらに膨らませていきます。それがまた、次の創作の原動力になっていくのです。

 

落語でもスポーツでも、何か憧れるものや愛着するものがあり、そこに近づくための目標ができたとき、人はコツコツと、地道な努力を継続できるのではないでしょうか。

 

私は、古今亭志ん朝『品川心中』という噺を、いつの日にか語ってみたいと思っています。そのためには廓(くるわ)の描写、落ち目になった女郎の悲哀、心中の道連れにされてしまう間抜けな男、ばくちをやっている若い衆たち(=集団シーン)、そして品川の光景、そういったたくさんのものを語れなければなりません。しかし、こうしたいくつもの山を超えてでも、ぜひこの噺を演じてみたいという強い欲求があります。この欲求がある限り、まだまだ落語を続けられそうな気がしています。

 

 

三谷幸喜 創作を語る』

三谷幸喜松野大介(著)

講談社

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