落語はビジネスにも役立つ!「笑う力」を身につけたい

アマチュア落語家・太助が、落語の魅力を考えます。

古今亭の次世代を担う落語家は?「古今亭ねくすと」VOL.4

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。2018年6月7日、古今亭の二つ目落語家による落語会「古今亭ねくすと VOL.4」に足を運びました。場所はお江戸日本橋亭日本橋三越のすぐ近くにある、とても便の良いホールです。

 

落語家は亭号(ていごう)というものを使います。名前の苗字にあたるもので、三遊亭、柳家、古今亭(ここんてい)、林家、立川、春風亭、桂などがあります。プロの落語家の場合、弟子入りというかたちで落語界に入ります。同じ師匠の流れをくむ人たちを一門といい、基本的に同系の亭号を名乗ります。落語は師匠から弟子へ受け継がれる芸なので、各一門には独自の芸風があり、得意とする噺(お家芸)があります。

 

古今亭は由緒ある一門で、昭和の名人と呼ばれる古今亭志ん生、その実子である金原亭馬生(きんげんてい・ばしょう)、古今亭志ん朝によって、盛名を確立しました。現在、亭号は古今亭、金原亭が使われています。

 

しかし、近年、古今亭一門は、往年の勢いを失っているようにもみえます。この日、出演した志ん松さんも、「長い間、新人が入らない、落語会の絶滅危惧種と呼ばれています」とマクラで笑わせていました。はたして、古今亭の次世代の担い手は誰なのか!?  期待を持って、観に行きました。

 

笑いを巻き起こす古今亭駒次の力技

 

この日の出演は、金原亭馬久、古今亭志ん吉、古今亭志ん松、古今亭駒次さん。

 

トップバッターは金原亭馬久(ばきゅう)さん。演目は「強情灸」。声に張りがあり、とても聞き取りやすい落語家さんです。

 

2席目は、古今亭志ん吉さん。早稲田大学文学部の出身で、役者を目指してテアトル・エコーの研修生に。レッスンの中に落語があり、講師として来ていたのが古今亭志ん橋師匠。志ん橋師匠の「キミ、たいしたもんだ」というヨイショを真に受けて、落語家に転身したという異色の経歴の持ち主です(本人HPより)。2017年のNHK新人落語大賞のファイナリストとして高座が全国放送されたので、顔を覚えている方も多いと思います。

 

今回のネタは、古今亭のお家芸ともいえる「火炎太鼓(かえんだいこ)」。道具屋の甚平さんは、売れないものばかり仕入れてくるので、カミさんからドヤされてばかりいる。今日も汚い、埃だらけの太鼓を仕入れてきたので、カミさんはおかんむり。この太鼓、小僧がはたきをかけていると、フチを叩いているのに音が鳴る。その音を聞きつけて、通行中の大名が、屋敷に持参せよと申しつける。甚平さんは太鼓が売れたと喜ぶが、おカミさんは信じない。「太鼓があまりに汚いから、お殿様はお怒りになって、百叩きにされるよ」と脅かす始末……。

 

「火焔太鼓」は、あまり魅力のない噺だったものを、志ん生志ん朝が磨き上げて絶品にしたといわれる落語です。この作品は、おカミさんが旦那のダメさ加減を、威勢よくあげつらうシーンから始まります。志ん吉さんは細面でスリムなので、おカミさんも若奥さんという感じ。若夫婦のような火焔太鼓でしたが、それはそれで楽しく聴くことができました。

 

休憩をはさんで、3席目は古今亭志ん松さん。ネタは「巌流島」。隅田川渡し船で、威張りくさった武士がキセルの雁首を水中に落としてしまう。屑屋が、キセルの残り部分を売ってくれと頼んだことで、立腹する武士。無礼打ちにすると息巻く。見かねて老侍が仲裁に入るのだが……。志ん松さんの気弱そうな顔つきと口調が、この噺とアンバランスで妙に笑えます。

 

古今亭の落語家さんは、落語の途中におかしなギャグをあまり入れないので(江戸時代なのにスマホが出てくるような)、安心して古典落語の世界に浸ることができます。ただ、3席聴いて、あまりに皆さん、生真面目すぎて、少し爆発力に欠けるような物足りなさを感じ始めてもいました。

 

本日のトリは、古今亭駒次さん。登場しただけで、場をサッと明るくする華やかさがあります。駒次さんは鉄道オタクで知られていて、鉄道ネタの新作落語を数多く作っています。

 

今回のネタは、鉄道とは関係ない新作落語すももの思い出」。リストラにあい、離婚も経験した運のない四十男が、故郷に帰ってきます。子供の頃に通った駄菓子屋が、いまだにあることに感激し、中に入ってみると、店のおばさんも健在。並んでいる駄菓子を眺めていると、いじめっ子に、すももの赤いジュースを無理やり飲まされた苦い思い出がよみがえってきます。そこへ、子供の頃、憧れだった女性が子連れで入ってきます。主人公は、その女性の家に招かれ、訪問することに。ところが出てきた旦那は、自分をいじめたガキ大将……。

 

聴衆に、駄菓子屋のなつかしさを思い出させてくれる新作落語です。ストーリーは二転三転し、最後のオチもひねりがきいて、最後まで大笑いしながら楽しめました。平日の夜のため、客数は少なかったのですが、全員が一斉に笑うので、ホットな空間が作り出されていました。

 

そういえば、柳家喬太郎師匠はウルトラマン林家彦いち師匠はアウトドア、春風亭昇太師匠の城巡りのように、おもしろい新作を作る落語家は、何かこだわるものを持っているな、と思い当たりました。

 

現代の若者は、欲望が淡泊になったと言われます。お金に対しても淡泊で、落語に出てくるような「飲む・打つ・買う」にはまってしまう人も、あまりいません。しかし、何か1つのことに対しては、徹底的にこだわり、突き詰めていく人が多いという印象があります。

 

そのような「こだわり方」を、観客と共鳴できたとき、新しい次世代の落語が生まれていくのかもしれない。ふと、そんな感想が頭に浮かびました。古今亭ネクストというより、落語ネクストを考えさせてくれた楽しい落語会でした。

 

古今亭駒次「公園のひかり号」

 

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