老人ホームの落語会に参加させていただきました!
こんにちは、アマチュア落語家の太助です。先日、浅草にある老人ホームの落語会に参加させていただきました。この落語会は、同じ落語教室に通う方が、ホームに交渉して始めたもので、今回が2回目となります。
9階建てのとても立派な施設で、総ベッド数が161もある大きな特別養護老人ホームです。
私は初参加なのですが、初回の落語会は、なかなか大変だったそうです。参加意思や落語を聞いた経験のある・なしに関わらず集まってもらったため、途中で口喧嘩が始まったり、ヤジが飛んだり……。落語を楽しむという雰囲気ではなかったようです。
その経験を踏まえ、今回は、人数は少なくてもよいので、ショートステイの方を中心に、落語を聞きたいという意向のある方だけにお集りいただきました。開催場所も大きな部屋を使わずに、談話スペースで行われました。
お集りいただいたのは、約20名。3名の演者で30分~40分程度、落語をさせていただきました。
演目は
おさむ家太助「粗忽の釘」
おさむ家かいかい「寿限無」
おさむ家りん生「親の顔」
前回、いろいろ大変だったと聞いていたのですが、今回は、みなさん、かなり集中して聞いていただき、笑いも起こり、なごやかな雰囲気の中で終えることができました。最初から最後まで寝ている方もいましたが、それはそれで良いのだと思います。大勢の中で、のんびりとした時間を過ごされたのですから。
高齢の方に楽しんでもらえる落語とは?
老人ホームなどで、かなり高齢の方に聴いてもらう落語は、演じ方が違うのだなと感じます。
落語は基本的にストーリーがあります。場所や登場人物を想像してもらいながら、物語を理解し、ときに笑ってもらうというものです。しかし、高齢になると、噺(はなし)の展開や会話のスピードについていけない方が増えてきます。このため、場面転換や登場人物が少ない噺のほうが向いていますし、できる限りゆっくりと話したほうがよいでしょう。
私は、とても早口で演じるほうなので、今回は意識的にゆっくりと話してみました。しかし、あとで聞いたところ、やはり早かったようです。自分の持っているリズムを変えるのは、なかなか難しいものがあります。
浅草演芸ホールなどに行くと、身の周りの出来事や話題ばかり話して、本編の落語をまったく演じずに高座を降りてしまう落語家さんがいます。あるいは、客いじりばかりしている落語家さんもいます。私のようなマニア的・落語ファンは、「また、ネタをやらないのかい」と、まゆをひそめたりします。
しかし、あれも落語の1つのテクニックなのだな、と気づかされます。浅草演芸ホールは観客の大半が高齢者。観光バスツアーのコースにもなっているので、普段、落語をほとんど聞いていない方も大勢来ます。短時間で、複雑な物語を理解してもらい、笑いを引き出すのは困難です。
「将棋の藤井聡太くん、すごいですよね。あんな孫がいたら、うれしいですよね~」と話題を投げて、うん、うんと頷いてもらうほうが、手っ取り早く、確実です。つまり共感してもらうのですね。
老人ホームで落語をさせていただくと、噺を理解してもらい笑いを引き出すよりも、まず共感してもらい、頷いてもらうことが出発点であることに、改めて気づきます。落語の基本は、やはり観客とのコミュニケーションなんですね。
老人ホーム落語は、施設の方の準備や気配りが、とても大変だと思います。今回も、自力歩行の難しい方が大半だったので、談話室に集まるにも職員さんの介助が必要です。お集りのみなさんが、少しでも楽しい時間を過ごせていただけたなら、うれしい限りです。
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