落語をやって初めて分かった! 男着物の魅力と面白さ(1)
こんにちは、アマチュア落語家の太助です。落語を始めるようになって、必要になったのが着物です。
これまでの人生で、着物を着たことなど一度もありません。そこで実家の母親に「落語を始めるので、着物が必要」と告げたところ、「取りあえず、一揃い、作ってやる」と頼もしい言葉。
実は、うちの母親、着物販売会社で長らく働き、和服をバンバン売りまくる、やり手婆さんなのです。
で、送られてきたのが、羽織、着物、帯、白足袋、稽古用の浴衣、稽古用のマジックテープで留める帯でした。この着物を見たとき、素人目にも「これは相当、高価なものだ」と分かりました。帯も博多帯だそうで、金糸で模様が縫い込まれているかなり豪華なもの。着物は、黒茶で実にどっしりしています。
「師匠の着物より、高価かも……」と思いながら、初高座にあがりました。落語教室で着付けを教えてくれる訳もなく、事前に本など見ながら何回も着付けを練習しました。
2着目の着物が無性に欲しくなる
次の発表は春で、私は「湯屋番(ゆやばん)」という落語をやる予定でした。
湯屋番は、道楽が過ぎて勘当になった若旦那が主人公。いまは、知り合いの大工、熊の家で居候の身。「少し働いてみたら」と熊が持ってきた仕事が、銭湯の奉公人。この若旦那が、銭湯の番台で、誰もいない女湯を眺めながら、妄想を果てしなく膨らませていく、というストーリーです。
ここで気になってきたのが、着物です。私の持っている着物は、どっしりとした黒茶のもので、とても若旦那が着るという感じではありません。また、私は汗かきなので、春に着るには生地が厚すぎる気もしました。
そこで、春物の着物を探すことに。若旦那が着そうな紺系の着物、あるいは「笑点」メンバーが着ているような派手な単色の着物にしようと考え、浅草の着物屋さんを何件か、まわりました。この初めての着物選びで、いくつかのことが分かりました。
・着物は、価格差がかなりある。素材も色々。
・実際に着てみると、全く似合わないものがある。笑点メンバーが着ているような単色で派手な着物もあったが、私には全然、似合わなかった。
容姿、肌の色合い、体格など人それぞれなので、着物の合う・合わないは、実際に着てみないと分からない。これが分かっただけでも、大きな発見でした。
その後、落語家の着物を観察するようになりました。その結果、古典落語が専門の落語家さんは、時代設定やストーリーに引き込むために派手な着物はあまり着ない、新作落語系や漫談系の落語家さんは、けっこう派手な着物を着る人もいる、などが分かってきました。
着物って、素材などで随分、違うんだ
何軒か見て歩き、濃いブルーの地に細いストライプが入っている着物を選びました。そして、遅まきながら気付くのです。持っている金糸の帯に、このブルーの着物は全く合わない。……併せて、白い帯も購入しました。
さらに、この後、下に着る襦袢の襟の色も気になり始めるのです。単品ではなく、コーディネートが気になり始めたのです。「なるほど、これはうちの母親が、色々売りまくるはずだ」と合点がいきました。
ただ、配色を含めたコーディネートを考えることは、面倒なことではなく、むしろ楽しいものでした。私はファッションやオシャレに全く関心・興味のない人間ですが、オシャレが好きな人の気持ちが少し分かるような気がしました。
写真は、この時、買った着物です。着付けは、まだ本を見ながらです。
着物は素材によって着心地や見た目が全然、違うことも分かってきました。なんだか、着物の奥深い沼にズブリと足を踏み入れたような気がしたのを覚えています。
私の男着物放浪記は、ここから始まるのです(以下、続く)。