落語はビジネスにも役立つ!「笑う力」を身につけたい

アマチュア落語家・太助が、落語の魅力を考えます。

糸井重里『すいません、ほぼ日の経営。』:「おもしろいことないかなぁ」が口ぐせのあなたに

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。あなたの身の回りにいませんか? 「何かおもしろいことないかなぁ」が口ぐせの人。もしかしたら、あなたもそうだったりして……。

 

このフレーズをよく口にする人は、自分にとっての「おもしろいこと」が何か、はっきりしていないことが多いようです。

 

自分にとっておもしろいことを挙げて、なぜ好きなのか考える

 

私は登山が好きです。しかし山登りの経験がない人を、「おもしろい」からと言って、山に誘うことはしません。なぜなら、ある程度の体力や技術、知識を持っていないと、山登りはつらいばかりで、おもしろくもなんともないからです。また山は過酷ですから、体力や装備が伴っていないと危険が生じます。

 

体力を使い、へとへとになって、それでも高みを目指すことにおもしろさを感じる人もいますし、「ばかばかしい」と感じる人もいます。何をおもしろいと思うかは、人それぞれです。自分にとっておもしろいことがはっきりと分からない方は、「自分は、どんなことにおもしろさを感じるのか」を考えてみてください。いくつか挙げていくと、自分のおもしろいと感じるものの傾向がつかめるはずです。そして「なぜ、おもしろいと感じるのか」も考えてみるとよいでしょう。そこから、自分の気質が見えてくるはずです。

 

私は山登りや落語を話すことが好きです。なぜ好きなのかを考えてみると、努力して上達していく過程が好きなのだ、ということに気づきました。頑張っても上達しない趣味は長続きしません。また上達が止まってしまったら、興味がなくなってしまいます。こういうことは全て、自分の気質にかかわっているのだと思います。

 

おもしろさを追求する会社・ほぼ日の独自性

 

おもしろさを徹底的に考え、追求している会社があります。それが、糸井重里さんが社長を務める株式会社ほぼ日です。糸井重里氏のインタビューをまとめた『すいません、ほぼ日の経営。』は、この会社のユニークな事業コンセプトや人材戦略などの一端がうかがえる一冊です。

 

ほぼ日では、おもしろいアイデアを生み出すことが事業の出発点になります。おもしろいかどうかを、どのように判断するかというと

 

―― おもしろいかどうかは、なにがものさしになるんですか。

糸井 とりたててありません。「おもしろい」は主観ですから。「あれは客観的におもしろかった」ということはありませんね。

 ただ、おもしろいと思ったからなんでもいいわけではなくて、じぶんがおもしろいと考えた要素はなんなのかを深く考えたり、探ったりしておくことは大切ですね。(p.20)

 

 

ほぼ日では、おもしろいアイデアを商品化していくのですが、マーケティングリサーチに頼らず、社員の「好き」「嫌い」を徹底的につきつめていきます。

 

「どうして好きなのか」「どこが好きなのか」を、じぶんと仲間に問い続ける。(p.27)

 

商品開発においては消費者調査を重ね、そのニーズを探ったうえで企画・開発していくマーケットインの手法が採られることが多いのですが、この手法で生まれた商品は似たようなものになりがちです。しかし、ほぼ日の手法は、社員の発想力が鍛えられ、向上していくので、独自性を確保していく手段としては有用だと思います。

 

人材確保、育成もユニークです。採用基準は「いい人」です。

 

糸井 一緒に働いていて「いい人とったね」「いい人に来てもらったね」とも言います。(中略)これから仲間になる人と、これから仲間を迎え入れようとしている人たちとの両方にとって、「心で一致するいい人物像があるんじゃないかと思うんです。(p.111)

 

 

しかし、「いい人」は定義したくないと言います。定義すると、それに合わせた人がやってきてしまうから、だそうです。

 

では、どんな人がほしいか、もう少し具体的に言うと

 

糸井 「どこか旅行に行こう、遊びに行こう」というときに、「あいつも呼ぼうよ」と呼ばれる人がいますよね。その「あいつ」が、うちがほしい人です。(p.155)

 

呼びたくなる「あいつ」。なるほど、おもしろい基準ですね。

 

本書では、その他にも組織、上場、社長業などについて、ほぼ日らしいとてもわかりやすい言葉で語られています。ほぼ日の上場も、なんとなく軽い気持ちで株式公開したような印象がありましたが、実は10年以上も考え続けていたと知り、驚きました。

 

会社としての理念や方向性を伝えるためのコピーの分かりやすさは、「さすが」と思わせるものがあります。また、事業や開発、組織の方向性をあえて大企業の対極に置くという差別化も、したたかなものを感じさせます。

 

おもしろさを追求するほぼ日という会社、しばらく目が離せそうにありません。

 

「何かおもしろいことないかなぁ」が口ぐせのあなた。こんな会社に注目してみるも、おもしろいかもしれませんよ!?

 

『すいません、ほぼ日の経営。』

聞き手:川島蓉子

語り手:糸井重里

日経BP

 

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