落語はビジネスにも役立つ!「笑う力」を身につけたい

アマチュア落語家・太助が、落語の魅力を考えます。

落語の名作「子別れ(下)」:子は夫婦の鎹(かすがい)ですね

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。今回は落語の名作と呼ばれる「子別れ」を紹介します。この落語は、夫の浮気で別れた夫婦が、幼い息子が縁結びとなってよりを戻す人情噺です。上、中、下の三話に分かれる大作で、通しで語ると1時間近くになります。一般的に、「子別れ」というと「下」の『子は鎹(かすがい)』をさします。

 

あらすじ

 

上:腕はいいのに大酒飲みで遊び人の熊さん。ご隠居の葬式の手伝いに来たのだが、大酒飲んでいい気持ちになり、吉原に繰り出そうということになる。仕事の前金を貰ったので、気が大きくなっているのだ。「銭がないから」としぶる紙屑屋さんを無理やり連れ出し、吉原で居続けのどんちゃん騒ぎを繰り広げる。別題『強飯の女郎買い(こわめしのじょろうかい)』

 

中:この店で昔なじみの女郎に会った熊さんは、いい気になって4日間も居続けて、ようやく帰宅する。家ではしっかり者の女房と息子の亀吉が待っている。熊さんは、何日も家をあけた後ろめたさで素直に詫びることができない。あれこれ言い訳をしているうちに、女郎ののろけ話を始めてしまう。夫婦喧嘩のあげく、女房は離別を申し出て、息子を連れて出て行ってしまう。熊さんは、なじみの女郎を後添えにしたが、これが何もしない、だらしのない女。その女もやがて姿をくらましてしまう。別題『子別れ』

 

下:自分の行いを深く反省した熊さんは、酒を絶って仕事に励み、いまでは立派な棟梁になっている。ある日、道で息子の亀吉に出会う。いろいろと話しを聞いてみると、母親はどこにも再婚せずに、手間賃仕事をして質素に亀吉を育てているという。男親がいないため、時には情けない思いをするという話しを聞いて、「みんな自分の飲んだくれから出たこと」と、思わず涙する熊さん。亀吉に小遣いを渡し、翌日に鰻をご馳走する約束をして別れるが、「おとっつぁんに会ったことは内緒だ」と言い添える。

 

しかし、家に帰った亀吉は、母親に小遣いを見つけられ、問い詰められる。人様のものに手をかけたと考えた母親は、「どうしても言わないなら、おとっつぁんの玄翁(げんのう:大型の金づち)で叩くよ」と玄翁を振りあげる。亀吉は、父親に貰ったこと、鰻を明日、ご馳走になることを白状してしまう。

 

翌日、母親は、亀吉にこざっぱりとした着物を着せて送り出すが、気になってしかたない。鰻屋の前で行ったり来たりしていると、亀吉が座敷に招き入れた。久しぶりに再会した元夫婦。堅くなっている二人だが、子供の手引きで、めでたく親子三人出直そうということになる。母親が「夫婦がこうして元のようになれるのも、この子があればこそ。本当に子供は夫婦の鎹(かすがい)ですね」と言うと、亀吉が「あたいは鎹かい。どうりで昨日、玄翁で頭をぶつと言った」。

別題『子は鎹』

 

名作人情噺の必須の三要素とは

 

初代・春風亭柳枝の作といわれ柳派系統の屈指の人情噺といわれます。名人・上手が手がける大作で、現在、上中下を通しで語る落語家はほとんどいません。過去には、古今亭志ん生三遊亭円生三笑亭可楽古今亭志ん朝などの名人が手がけました。近年では、柳家小三治柳家さん喬柳家権太郎、柳亭市馬などが手がけています。

 

飲んだくれの職人が、心を入れ替え働くようになり、親子三人が新たに出直すことになるというハッピーエンドの人情噺です。「芝浜」もそうですが、駄目な人間の再生、夫婦愛や親子愛、ハッピーエンドなどの要素は、名作人情噺には必須の要素ですね。

 

再会した夫婦が堅くなってぎごちなく会話しているのを、息子の亀吉が引っ張っていき、結びつけるラストが聴きどころ。時間のあるときに、ゆっくりと楽しんでいただきたい名作落語です。

 

古今亭志ん朝「子別れ」

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