落語はビジネスにも役立つ!「笑う力」を身につけたい

アマチュア落語家・太助が、落語の魅力を考えます。

落語ディーパー:東出昌大の落語への熱愛ぶりが微笑ましい落語番組

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http://www4.nhk.or.jp/P4544/

 

こんにちは、アマチュア落語家の太助です。NHK不定期に放映されている『落語ディーパー』をご存知でしょうか。サブタイトルには、「東出・一之輔の噺(はなし)のはなし」と銘打たれています。

 

NHKのホームページには、このように番組紹介されています。

 

落語に魅せられた東出昌大が、「若い世代が落語を知らないなんてもったいない」と立ち上がり、毎回ひとつの演目をとりあげ、春風亭一之輔柳家わさび、柳亭小痴楽、立川吉笑、雨宮萌果アナウンサーと深―く語り合います。

 

落語を深く掘り下げて、解説していく番組

 

この番組では、毎回、落語1話を取り上げ、ストーリーを紹介し、噺の聴きどころを解説していきます。また、過去の名人のお宝映像も数多く放映されます。例えば、「居残り佐平治」を紹介した回では、主人公の佐平治が客をヨイショする場面での、古今亭志ん朝立川談志五代目・三遊亭円楽それぞれの高座を流してくれました。各回の噺は、出演の落語家が演じてくれ、番組内では見ることができませんが、ネットで視聴することが可能です(放映後、1週間程度の期間限定)。

 

2017年に放映された第1弾では、「目黒のさんま」「あたま山」「お菊の皿」「大工調べ」。2018年に放映された第2弾では、「地獄八景亡者戯」「明烏」「鼠穴」「粗忽長屋」「居残り佐平次」が取り上げられました。

 

NHKの落語関連の番組では「超入門!落語THE MOVIE」を、以前、紹介したことがあります。「超入門!落語THE MOVIE」は、落語の演目を映像化しているのですが、この番組の特徴は、落語家の喋りに合わせて、俳優がいわゆる「口パク」で登場人物を演じていることです。俳優は、自分のスピードでセリフを言えないので、何回も撮り直しをするそうです。その制作エピソードを聞いたとき、「どれだけ贅沢な番組なんだ!?」と驚きました。

 

民放と違い、視聴率や広告クライアントの意向などに振り回されることの少ないNHKならではの贅沢な番組作りです。この落語ディーパーも、「よくぞここまでマニアックに作り込んだ」といえる番組です。通常、夜11時から30分の番組ですが、視聴率を考えると、ここまで凝った番組作りは民放では難しいでしょう。「目黒のさんま」って、30分語るほどの深い噺でもない気がするし……。

 

この番組で、各演目に対する落語家さん、それぞれの捉え方の違いを聞いていると、落語は解釈によって随分と変わるものだということを実感します。

 

名人・上手の落語家が作り上げる独自の人物像

 

古典落語の場合、台本は存在します(通常、口伝というかたちをとりますが)。それを落語家は自分なりに解釈して演じます。つまり演出家と役者を兼ねているようなものです。基本的な噺の骨格と登場人物は設定されていますが、その登場人物の性格や各場面での感情のあり方などは落語家の手にゆだねられています。解釈しだいでは、独自の性格を作り上げることもできます。

 

前述した「居残り佐平治」は、主人公の佐平治が金もないのに遊郭で仲間と豪遊し、金を返すためにその店に居残る噺です。仕事にそつがなくて愛嬌のある佐平治は、客からも大変に可愛がられるようになります。仕事や祝儀を奪われた店の連中は、店の主人に佐平治を追い出すように頼み込みます……。実はこの佐平治、居残りを稼業とする悪い奴。この主人公を、談志や円楽は「調子のいい人間」として描き、志ん朝は「愛想のよい憎めない」という人物像に仕上げました。落語ディーパーで春風亭一之輔は、かなりの悪漢にして演じていました。

 

名人・上手と呼ばれる落語家は、噺を師匠から教わったとおりに演じるだけでなく、必ず自分なりの人物像にまで練り上げていきます。この辺りが凡庸な落語家との大きな差なのです。

 

この番組のもう1つの魅力といえば、何といっても進行役の東出昌大の落語への熱愛ぶりでしょう。落語にはまると、いっとき高座に足しげく通い、落語のCDやDVDを視聴しまくり、自分のお気に入りの噺や落語家を見つけていきます。彼もいまそのような狂熱の季節にいるのでしょうか。番組の中で落語への熱い思いがストレートに伝わってきます。その純粋さは、とても気持ちの良いものです。

 

NHKならではの贅沢番組、「超入門!落語THE MOVIE」と「落語ディーパー」は、落語に興味がある方、落語への理解を深めたい方にお勧めの放送です。どちらも不定期放送なのでお見逃しなく!

 

NHKホームページ

www4.nhk.or.jp

 

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