落語はビジネスにも役立つ!「笑う力」を身につけたい

アマチュア落語家・太助が、落語の魅力を考えます。

落語の登場人物:八っつぁん、熊さんのエネルギーが「笑い」を巻き起こす!

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。落語によく出てくる登場人物は、大体決まっています。長屋の八っつぁん、熊さん、ご隠居さん、おかみさんと子供。商家の大旦那、若旦那、番頭さん。廓噺(くるわばなし)の花魁(おいらん)や幇間(ほうかん)。おなじみのメンバーですが、あなたの周りにも、きっと似たような人がいるはずです。ぜひ、探してみてください。今回紹介する登場人物は、八っつぁん八五郎)、熊さん熊五郎)です。

 

落語には長屋を舞台にした噺が多いのですが、この長屋の住人の代表格が八っつぁん、熊さんです。八っつぁん、熊さんという具体名が出てくる噺もあれば、ハッキリと名前は出てこないものもあります。

 

落語になくてはならない登場人物、八っつぁん、熊さんの特徴を列記してみましょう。

 

1)職人である

 

大工、左官、植木屋、魚屋など、職業はいろいろですが、長屋に住んでいる腕のいい職人です。

 

2)学がなく、礼儀作法などの知識がない

 

職人としての腕はいいのですが、学がなく、礼儀作法などの知識がありません。文字も漢字が混ざったりしていると、あまり読めません。

 

3)おっちょこちょいである

 

性格は、基本的におっちょこちょいで、直情径行(ちょくじょうけいこう)型です。相手や周りの状況を気にすることなく、自分の感情のおもむくままに行動します。

 

ただし、分からないことはご隠居さんに聞きに行き、「なるほど」と思うことには素直に感心します。しかし、よく理解しないまま、かたちばかり真似ようとして失敗することが多々あります。

 

4)言葉遣いが乱暴

 

江戸っ子の職人なので、いわゆる下町の江戸言葉「べんらんめえ口調」で話します。これは巻き舌の早口で、とても乱暴に聞こえる口調です。怒った時の啖呵などは、まさに「立て板に水」というやつで、べらんめえ口調で一気にまくし立てます。また、長屋の住人は基本的に口が悪く、人の悪口もずけずけと言います。

 

落語をやっていて困るのは、この「べらんめえ口調」が無意識に口をついてしまうことです。日常生活で「てやんでえ、この野郎」とか「うるせえ、このクソ婆あ」などの言葉が出てしまうことがあり、周りからギョッとされることがあります(汗)。悪気はないのです、八っつぁんも、熊さんも、私も。

 

5)道楽に夢中になっている

 

必ずしも、そうではないのですが、いわゆる「飲む(酒)、打つ(博打)、買う(女)」の道楽にはまっているケースも多くあります。

 

八っつぁん、熊さんの登場する噺は、小噺が多いような印象がありますが、長編のネタも結構あります。「妾馬(めかうま)」という噺では、八っつぁんは妹のおかげで出世して、ついには武士にまでなってしまいます(妾馬の別タイトルは「八五郎出世」)。熊さんが主役の噺では、長編人情噺の「子別れ」、シュールな味わいの「粗忽長屋(そこつながや)」、その他「大山詣り」「崇徳院(すとくいん)」などがあります。

 

八っつぁん、熊さんの過剰なエネルギーが、笑いを引き起こす

 

八っつぁん、熊さん噺の中でも傑作なのは「崇徳院」です。

 

ある大店の若旦那が、原因不明の病で寝込んでしまい、生死をさまよっている。医者が診ても原因が分からないのだが、若旦那は「熊さんになら打ち明ける」という。やってきた熊さんが聞き出すと、「恋わずらい」だという。若旦那が一目惚れした相手は、どこかのお嬢さんで名前も分からない。そのお嬢さんは、桜の枝に短冊をかけて去っていった。短冊には、百人一首でおなじみの崇徳院の「瀬を早み 岩にせかるる滝川の」と書かれている。下の句は「われても末に 逢はむとぞ思う」。手掛かりはこれだけ。

 

息子の身を案じる大旦那は、熊さんにそのお嬢さんを探してくれるように頼む。見つけることができたら、褒美として、いま住んでいる三軒長屋を熊さんにあげると言う。このとてつもない褒美に、熊さんは大発奮。「瀬を早み~」と大声を出しながら、湯屋や髪床を探し回るのだが……。

 

今回、八っつぁん、熊さんのキャラクターについて列記していると、突然、漫才のやすしきよし横山やすしが脳裏に浮かびました。直情径行(ちょくじょうけいこう)型で、相手や周りの状況を気にすることなく、自分の感情のおもむくままに行動し、道楽(ボートレース)に夢中。言葉遣いは乱暴だけど、根は素直。おっちょこちょいで失敗することも多いけれども、職人(漫才師)としての腕は最高。「横山やすしという人は、実に落語の世界を地でいくような芸人だったのだなぁ」と感慨にふけりました。

 

八っつぁん、熊さんは、ときに過剰すぎるほど過剰なエネルギーで、落語の世界の中を走り回ります。そのエネルギーが、落語に大きな笑いを引き起こします。落語「崇徳院」をお楽しみください。

 

古今亭志ん朝崇徳院

 

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