落語はビジネスにも役立つ!「笑う力」を身につけたい

アマチュア落語家・太助が、落語の魅力を考えます。

なぜ野球の応援は、同じ振り付けで歌って、踊るのだろうか?

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。落語会に行くと、落語家さんは素晴らしいのに観客がとても少ないことがよくあります。そんな時、「落語にもっと観客が来るには、どうすればいいのだろうか?」と考えます。

 

現在、観客の動員数が多い娯楽は、プロ野球や人気ミュージシャンのコンサートなどが頭に浮かびます。人気のある球団やミュージシャンは、何万人という単位での観客動員が可能です。

 

野球やコンサートで、ファンはなぜ同じ振りで動き、声を揃えるのか?

 

私はプロ野球では、ヤクルトロッテを長年、応援してきました。この2球団の組み合わせを「なぜ?」と思う方がいるかもしれません。私は生まれも育ちも東京です(現在は千葉県在住)。東京生まれでアンチ巨人派は、ヤクルトファンに結構、流れます。またロッテは、その昔、東京・南千住にあった東京スタジアムというおんぼろ球場をホームとする在京球団でした(当時はロッテ・オリオンズ)。小学生の時分、都電荒川線というチンチン電車に乗って、オリオンズの応援に通ったものです。

 

ヤクルトとロッテは、たまに強くなる時もありますが、基本的にBクラスが定位置の弱小球団です。長年付き合っているファンは、あまり勝ち負けに一喜一憂しません。この淡々としている感じが好きで、応援してきました。

 

その後、千葉県に移住すると共に、千葉ロッテマリーンズの応援を続けました。しかし、何度か球場に足を運ぶうちに、ファンの応援に違和感を感じるようになりました。

 

そこでは、みんなが同じ格好をし、同じ振りで動き、声を揃えて応援するのです。

 

落語はなぜ、数万の観客を動員できないのか?

 

写真入りのファン冊子を見て分かったのですが、レギュラーメンバーごとに細かく振りや声援が決められているのです。この選手がバッターボックスに立った時にはタオルを振りながらジャンプする、この若手選手が登場したら名前で呼んで「ゴー、ゴー」と叫ぶ、のように定まっています。初めて応援に行った人は、一緒に応援はできません。決められた振りや声援するタイミングが分かりませんから。

 

みんなと同じ振りができないと、まるで自分が「にわかファン」のように思えてしまいます。数十年、ロッテを応援してきているのに……。

 

いつから野球は、このように、みんなが同一の振りと発声で応援するようになったのでしょうか? アメリカで野球を観戦したことがある方はご存じと思いますが、みんなが同じ振り付けで飛んだり、歌ったりすることはほとんどありません。球団のユニホームを着ている人はいますが、基本的にみんな勝手に楽しんでいます。

 

日本では、人気ミュージシャンのコンサートでも、みんなが同じ振り付けで、ジャンプしたり、タオルを振ったりするようになりました。

 

野球を観戦したり、音楽を聴くという本来の目的以外に、みんなが同じ振り付けで動き、声援することが、観客動員の必須要素になっているような気がします。

 

同じ対象を一緒に応援するという仲間意識、声を揃えて同じ行動をする参加意識、さらに細かい振り付けまで覚えているという優越感。単なる観戦だけでなく、そのようなものを味わいたいがために、球場に足を運ぶ人も多いのでしょう。

 

インターネットやモバイルの普及と共に、このような傾向が、より強まって来たような気がします。リアルな人間関係で、一体感や参加意識を感じられる場がなくなってきているせいかもしれません。サッカーのワールドカップの時期になると、渋谷の交差点に大勢が集まり、嬉しそうにハイタッチしているニュースを見ると、そのような感が強まります。

 

そして、娯楽でさえも日本人は統制された同じ動きをするのが好きなのだなぁ、と感じます。

 

このように考えると落語は、現代の日本において数万という観客を集めるには、不向きな娯楽といえるでしょう。なぜなら、落語は「笑い」を強制するものではありません。観客それぞれが、場面や登場人物を勝手に空想して好きな個所で笑う、ある意味、自由度の高い娯楽です。そこでは、拍手や立ち上がることを強要されることはありません。

 

あるプロの落語家さんに聞いたところ、「観客は100名くらいがちょうどよい」とおっしゃっていました。マイクやライトのない時代に生まれた落語は、肉声が全員に行き渡る、大きな車座ができるくらいのサイズが適当な芸能なのかもしれません。

 

しかし……、みんなで声を揃えて歌ったり、手拍子する必要はないのですが、「もう少し観客が入らないかなぁ」と思う今日この頃なのです。

 

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