落語はビジネスにも役立つ!「笑う力」を身につけたい

アマチュア落語家・太助が、落語の魅力を考えます。

お勧めの落語家:三笑亭夢丸 愛らしい童顔から繰り出す練達の芸

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。2018年6月19日、三笑亭夢丸師匠の独演会に足を運びました。

 

蕎麦屋さんで開催され、蕎麦も楽しめる落語会

 

場所は、日本橋蕎麦屋藪伊豆総本店」。この老舗の蕎麦屋さんは、3階の大広間で定期的に落語会を開催しています。このお店の嬉しいところは、落語のあとに、「おアトもよろしくセット」という、つまみとお蕎麦のセットが楽しめることです。

 

三笑亭夢丸師匠は、平成14年に三笑亭夢丸(初代)に入門、平成27年に真打昇進して二代目・三笑亭夢丸を襲名。落語芸術協会(以下、芸協)に所属する30代半ばの落語家さんです。80代の落語家がいまだに現役として君臨する芸協では、若手に位置する夢丸師匠。しかし、その芸は達者であり、人気の春風亭一之輔と二人会を開催するなどで、注目が高まっています。

 

藪伊豆の会場は畳敷きで、40人程度のキャパです。開演までに満員となりました。ここでの独演会は12回目になるそうです。

 

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「本日は夏の三席というテーマなんですが、とても涼しい日でして。私だけでも熱くやらせていただきます」という語り出しで始まったのが「ちりとてちん」。ある旦那が、会を催したが、中止となり、食事がたくさん余ってしまった。知り合いの熊さんに食べてもらうことに。普段、食べたことのないウナギのかば焼きや鯛の刺身、灘の酒に舌鼓を打つ熊さん。旦那が、酒に合う珍味を探して、女中に数日前の豆腐を持ってこさせると、これが夏の暑さでカビだらけの、ひどい状態。これを見た旦那、近所に住むひねくれ者の虎さんにいたずらしてやろうと思い立つ。空き瓶にこの豆腐を移し、大量のトウガラシを加えて、すさまじい珍味の出来上がり。虎さんを呼び出し、台湾の珍味だと言って食べさせると……。

 

この噺の見せ場は、虎さんが腐った豆腐を口に入れて、目を白黒させるところです。あまりにえげつなく演じると、観客に不快感を与えてしまうため、加減が難しいところです。夢丸師匠は、熱演ながら汚らしくならず、とてもよいバランスでした。また、先にご馳走になる熊さんを、なんでも大げさに褒める、たいこ持ちのようなキャラ設定にしてあるのも楽しい演出でした。熊さんと虎さんの対比が鮮明になり、大きな笑いをとっていました。

 

駄々をこねる「船徳」の若旦那に大笑い

 

二席目は夏にぴったりの「船徳」。実家を勘当されて、船宿に転がりこんでいる若旦那の徳さん。この若旦那、箸より重いものを持ち上げたこともないのに、「自分も船頭になりたい」と言い出して、周囲をあわてさせる。今日は浅草観音様の四万六千日(しまんろくせんにち:この日に参詣すると、4万6000日参詣したのと同じ功徳があるといわれた日。7月9,10日)。あまりに暑いので、船で行こうと考えた二人連れの客が、船宿にやってくる。あいにく船頭は出払っていて、残っているのは若旦那、一人。船宿のおかみの制止を振り切って、徳さんは、客を乗せて船を出すことに。しかし、同じところをまわったり、石垣にぶつかったりと、大変な船旅となる……。

 

思うように船が進まず、焦り、混乱する若旦那と、どんどん不安がつのっていく客。このシーンが、船徳のクライマックスです。船がクルクルと回る光景を、夢丸師匠は、二人の客を使い描写していました。これはとても臨場感があり、楽しい演出です。また、若旦那が途中から、「なんで汗だくになって、叱られなきゃならないんだ。もう、ヤダ!」と、ガキのようにダダをこねます。夢丸師の子供のような顔立ちと相まって、本当に楽しく、大笑いしました。

 

休憩をはさんで、三席目は上方落語の「次の御用日」。小僧の常吉は、主人に「娘のお糸が、縫い物の稽古に行くから供をしてくれ」と頼まれる。稽古場への道筋は日中でも人通りが少なく気味が悪いので、二人は急いで通り過ぎようとする。そこへ、向こうから法被(はっぴ)を頭の上にかざした大男が歩いてくる。常吉は、お糸を天水桶の陰に隠れさせ、その上に覆いかぶさり、男をやり過ごそうとする。

 

大男は、火消し人足の藤吉。顔見知りである家主の娘と丁稚に気づき、さらに自分の格好を怖がっていることに気づいた藤吉は面白がって、ふたりに近づくと、法被を覆い被せて「エヒャ!!」と奇声を浴びせかける。お糸はショックのあまり、その場で気を失って倒れてしまう。その後、店に連れ戻されたお糸は、目を覚ましたが、健忘にかかってしまう。怒り狂った主人は、奉行所へ訴えを出す。奉行は、被告・藤吉に対し、「お糸の上にてエヒャ!!(奇声)と申したであろう」などと尋問していくが、この奇声を連発しすぎて、奉行はとうとう普段の声が出せなくなってしまい、ひと言。

「一同、次の御用日を待て」。

 

この噺は、まさに奇声を連発するというおかしさだけで聴かせる上方らしい落語です。めずらしい噺を楽しめました。

 

愛らしい童顔から繰り出す練達の芸

 

三笑亭夢丸師匠の魅力は、何と言っても、声の良さと活舌(かつぜつ)のなめらかさでしょう。目のクリクリとした小僧さんのような風貌ながら、旦那やご隠居、娘などを見事に演じ分けます。体を大きく使う所作も、とてもキレイです。また特筆すべきは、三席・1時間半の高座で、セリフをかむことが一度もありませんでした。全身を使った熱演は、もっと大きな会場でも、そのまま通用するレベルの高さ。贅沢な時間を過ごさせていただきました。

 

落語のあと、「おアトもよろしくセット」を味わっていると、夢丸師匠も合流。一杯やりながら、色々とお話しできました。山形との県境に近い新潟県のご出身。江戸言葉の流暢さを褒めると、「第二外国語のように覚えろ」と師匠から教わったというエピソードを、面白おかしく話してくれました。

 

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日常的に和服で過ごし、趣味は銭湯巡り。パソコンは全く使えないと語る夢丸師匠。まさに落語の時代からタイムスリップしてきたような落語家さん。現在、35歳ながら、その芸は見事です。今後、間違いなく芸協の大看板になっていく逸材だと思います。

 

落語初心者にも、間違いなくお勧めできる噺家さんです!

 

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