落語入門:東京の落語界は4つの団体に分かれている
こんにちは、アマチュア落語家の太助です。寄席に足を運んでも、テレビで見かける立川志の輔師匠を見ることはできません。これは東京の落語界が4団体に分かれていることに関係があります。
現在、東京の落語界は、落語協会、落語芸術協会、落語立川流、円楽一門会の4団体に分かれています。今日は、この辺の事情を簡単にご説明しましょう。
落語業界は明治時代から、落語家の芸風などによって、いくつかの団体(流派)に分かれていました。戦後になると、古典落語中心の落語協会、新作派が多い芸術協会(現在、落語芸術協会)の2派体制に落ち着きました。しかし、昭和53年、三遊亭円生一門が、落語協会から離れて落語三遊協会を設立。円生の没後も円楽一門会として独立しています。昭和58年には立川談志一門が独立して落語立川流を設立。現在、この4団体が継続しています。
各団体の特徴と代表的な落語家
現在、東京の落語家は560名前後です。調べたところ、所属団体別では以下のような構成になっています(2017年 太助調べ)。
落語協会: 51%
落語芸術協会: 27%
落語立川流: 11%
円楽一門会: 11%
各団体の簡単な紹介と、代表的な落語家を紹介しましょう(落語家は現存の方のみ)。
落語協会
戦後、古典落語中心の流派として、八代・桂文楽、五代・古今亭志ん生、六代・三遊亭圓生、三代・古今亭志ん朝などの名人を輩出。現在、所属の落語家は280名前後で、全体の5割を占める最大の団体。古典だけでなく、新作落語中心の落語家も所属する。
代表的な落語家:柳家小三治、柳亭市馬、春風亭小朝、柳家さん喬、柳家権太楼、五街道雲助、柳家喬太郎、春風亭一之輔、柳家三三、桃月庵白酒、古今亭菊之丞、柳家花緑、林家彦いち
落語芸術協会
戦後、春風亭柳橋、柳家金語楼が設立。新作派の多い流派として、桂米丸、春風亭柳昇など人気者を生み出す。テレビへも積極的に進出。現在は、新作派だけでなく、古典落語中心の噺家も多い。
代表的な落語家:桂歌丸、三遊亭小遊三、昔昔亭桃太郎、瀧川鯉昇、春風亭昇太、桂文治
落語立川流
立川談志一門が独立して設立。談志を家元として、所属落語家は上納金をおさめる家元制をとっていた(談志の没後、廃止)。寄席に出演することができないため、ホール落語が活動の場となっている。
代表的な落語家:立川志の輔、立川談春、立川志らく、立川談笑、立川談四楼、立川談修、立川生志、立川こしら
円楽一門会
三遊亭円生一門が、落語協会から離れて設立。円生の没後も円楽一門会として活動を続ける。落語立川流と同じく寄席に出演することができないため、ホール落語が活動の場になる。
代表的な落語家:三遊亭鳳楽、三遊亭円楽、三遊亭好楽、三遊亭兼好
寄席に出られる団体と出られない団体
年中無休で、毎日落語を観ることができる寄席は、落語家にとって大切な仕事場です。東京には現在、新宿末廣亭、池袋演芸場、鈴本演芸場(上野)、浅草演芸ホールの4か所がありますが、出演できるのは、落語協会と落語芸術協会のみです(鈴本演芸場は落語協会のみ)。
落語立川流と円楽一門会は寄席に出られないため、ホール落語で観ることになります。ただし、現在では、団体の枠を超えた落語会も増えてきています。また、両団体とも定期的に一門会を開催しています。
長らく、落語家としての修行は、前座として、毎日寄席に通い、師匠や先輩の芸を見たり、出演することでした。しかし、寄席に出演できない落語立川流から、志の輔や談春などの人気落語家が生まれたことで、この考え方も少し変わりつつあります。
東京の落語会は、このように4団体に分かれているのですが、団体としての特色はそれほど明確ではありません。団体としての活動も、年1、2回のイベントを除けば、それほど積極的には行われていません。団体でくくるには、落語家さんの数が多すぎるのでしょうね。
以前にもお話ししましたが、落語初心者の方は、団体に関わらず、お気に入りの落語家さんを見つけて、自分の好きなタイプを見つけていくのが良いと思います。
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