新潮文庫 解説目録をチェックする静かな喜び
こんにちは、アマチュア落語家の太助です。先日、ある書店に入ったところ、「ご自由にお持ちください」と書かれた『新潮文庫【解説目録】』が平積みされていました。黄色い表紙で、680ページ以上ある大冊です。
1冊いただいて持ち帰り、久しぶりに熟読しました。解説目録は、著者別に作品が並べられ、60字程度の内容紹介が書かれています。作品紹介だけで485ページもあるのですが、色々な発見があり、ページをめくる手が止まりません。
解説目録を読んでいると、自分が読んでない本や知らない分野が、まだまだたくさんあることに気付かされます。新たに登場している作家が、どのような作品を書いているのか傾向をつかむこともできます。また、以前は読んでいたけれど、追いかけるのをやめてしまった作家が、その後どのような作品群を発表したのかを知ることも可能です。
世界には、自分の知らない英知が山ほど眠っている
思えば、太助は小学生の頃から読書好きで、新潮文庫の解説目録を読むことが好きでした。新潮文庫の特徴は、古典と現代文学が程よいバランスで収録されていることです。その解説目録は、児童書から大人の本を読むようになった時期のまさに「道しるべ」でした。日本だけでなく世界中には、大作家と呼ばれる人がいて、不朽の名作と呼ばれる作品群があることを、この本で知りました。
自分のまだ知らない英知が、世の中にはたくさんあることを知り、とても興奮したことを覚えています。目録をめくっては、次に読む本を決め、丸印をつけていきました。
ドストエフスキー、カフカ、ディケンズ、トルストイ、パスカル、亀井勝一郎、夏目漱石、太宰治……、手当たりしだいに読んでいきました。小学生なので分からないこともたくさんあるのですが、気にせず乱読していました。
そして、ほとんどの方がそうだと思いますが、学生から社会人になり、年を重ねていくごとに文学や哲学からは遠ざかっていきます。「時間がないから」「仕事で忙しいから」「お金がないから」「役に立たないから」、いろいろな理由をつけて、人は本を読まなくなります。
50歳を過ぎてからは、現役作家の執筆年齢を超えてしまったためか、作者の考え方や描写が幼く思えてしまい、ますます文学からは遠ざかってしまいました。
しかし、最近、つくづく思うことがあります。不朽の名作文学や哲学は、中高年世代こそ読むべきなのです。ドストエフスキーや夏目漱石が描こうとしたテーマは、大人が長い人生経験を経たうえで、読み、考えるものではないでしょうか。学生時代に読んでも、頭では理解できても、実感としては分からないのです。
高齢化社会になり、中高年になってから、また次の長い人生が始まります。これまでの人生をリセットして、次の一歩を踏み出すにあたり、名作文学を開いてみるのも大切なことではないでしょうか。
分厚い新潮文庫の解説目録をめくりながら、そんなことをツラツラと考えていました。
そして現代の有難いところは、目録で注目した作家をネットで調べると、すぐに全作品の情報が分かり、Amazonで即日買えることです。しかも、廉価な中古本で買うことも可能です……。
今回、読みたい本や、読み忘れていた本がたくさん見つかりました。さっそく、いろいろと購入して読み進めています。目録で見つけた大崎善生(著)「赦す人―団鬼六伝」は、久しぶりに巡り合えた良書でした。また、機会があればお話ししますね!