落語はビジネスにも役立つ!「笑う力」を身につけたい

アマチュア落語家・おさむ家太助が、落語の魅力を考えます。

ズブズブと沈んでいく業界で働くあなたへ「誰がアパレルを殺すのか」

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。最近、落語業界のことを調べていて、「つくづく不思議な業界だなあ」と感じています。そんな折に手に取ったのが『誰がアパレルを殺すのか』という本でした。これが、ズブズブと沈んでいく業界の構造を的確に描いていて、大変に興味深い書籍でした。

 

そこで、今回は落語とかけ離れますが、ダメになっていく業界の構造を考えてみたいと思います。

 

この本は、不振にあえぐアパレル(衣料品)業界の様々な問題点を分析したものです。タイトルは、2001年に出版された『だれが「本」を殺すのか』(佐野眞一)を意識して付けられたものでしょう。アパレル(衣料品)と出版という業界の違いはありますが、「沈んでいく業界というのは、とてもよく似ている」ことを痛感します。

 

本書で指摘されている業界の問題点を挙げてみましょう。

 

1)業界構造の各所で問題を抱え、不況の要因が複合的になっている

 

この図はアパレル業界のサプライチェーンです。サプライチェーンとは、衣料品が消費者に届くまでの流れのことです。様々はプレイヤーが存在し、商品が製造され、消費者の手に届けられています。しかし、この各プレイヤーは分断されています。

 

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「誰がアパレルを殺すのか」p.18図より作成

 

景気の低迷などで、消費者は衣料品に対しての支出を抑えるようになり、ブランド品や流行に簡単には飛びつかなくなりました。また、ネットの普及により、ネットで衣料品を買うことも当たり前になりました。このような変化に伴い、様々な問題が生まれているのですが、各プレイヤーが一体となって、その解決に取り組むことができないのです。

 

2)無駄を承知で大量に生産を続ける

 

国内のアパレルの市場規模は、1991年に15.3兆円あったのが、2013年には10.5兆円と、20年で3分の2まで縮小しています。にもかかわらず、市場に出る商品は倍増しているのです。当然、大量の売れ残りが出ます。

 

衣料品は季節性や流行が重視されるので、定価で売れなかった商品は、店舗内でのセール、店舗以外でのファミリーセール、各地のアウトレットモール、最後はバッタ屋と、値段を下げながら、場所を変えて販売されます。問題は、大量の売れ残りを前提として価格設定をして、大量の無駄な商品を作っていることです。

 

無駄を承知で生産しているのは、出版業界も同じです。本屋さんは、店頭で売れなかった本を返品することができます。この返品率は現在、約40%にもなっています。出版社は100冊印刷したら、40冊前後は売れ残ることを前提に出版していることになります。

 

どちらの業界も、無駄を前提に商品を作り、流通させる構造が、長い年月の中で強固に作り上げられ、簡単に変えることができません。

 

3)時代遅れの商習慣や制度が存在する

 

では、本屋さんで、売れなかった本を値引きして販売できるかというと、これが不可能なのです。再販制度(再販売価格維持制度)というものがあり、出版社が決めた価格でしか販売ができないのです。売れない本は、値引きはできないが、返品は可能です。新刊も大量に入ってくるので、売れそうにない本はどんどん返品されるのです。

 

アパレル業界には「消化仕入れ」という独特の商習慣が存在します。これは、以下のようなものです。

 

百貨店は売り場をアパレル企業に提供するが、商品の所有権はアパレル企業が持ったまま。販売員の確保までアパレル企業が負担する。販売員の確保まで含めて、アパレル企業が負担する。そして、店頭で商品が売れた分だけ「百貨店がその商品を仕入れた」と見なし、アパレル企業に仕入れ代金を支払う。つまり百貨店は在庫リスクを負わない。 

「誰がアパレルを殺すのか」p.56より

 

仕入れても不良在庫になるリスクがなければ、危機感もなくなり、本当に売れる良いものを仕入れる力は落ちていくはずですよね。

 

出版やアパレルには、このように他業界から見ると不思議な制度や商習慣が存在するのです。これらは、もちろん必要性があって作られ、続いているものです。しかし、環境の変化と共に、業界の変革を妨げる存在になっているのです。そして、この慣習により、既得権益を享受する層も確実に存在します。この人達も、変革を妨げる勢力となります。

 

4)そして、破壊者(Disruptor)がやってくる!

 

業界が既得権益や内輪の論理にとらわれ、矛盾に気付きながらも変革できないでいると、破壊者(ディスラプターと呼ばれる新興プレイヤーが、外から参入してくるのです。これら破壊者の特徴は、業界の構造や習慣を気にせず、さらにネットなどの最新テクノロジーを使い、参入してきます。

 

出版業界、アパレル業界の破壊者といえば、ネット販売業者でしょう。Amazonは新書の販売だけでなく、中古書籍の販売も仲介しています。中古書籍は前述した再販制度の対象とはなりません。書店に足を運ばなくても、膨大な書籍データベースから商品を探すことができ、さらに低価格の中古品を見つけることが可能となりました。

 

アパレル業界では、ネット販売のZOZOTOWNなどでの購入が当たり前になりましたし、中古品をスマホで売買するメルカリも広く利用されるようになりました。このような新興のサービスは、業界の慣習で作られているわけでなく、使いやすさや価格などが消費者のメリットになるように作られています。だから、急速に普及していくのです。

 

 

ズブズブと沈んでいく業界で働いているあなたは、今後どうすればよいのか?

 

業界全体の構造が多くの課題を抱え、ディスラプターの脅威にさらされている業界は、アパレル業界だけではなく、旅行業界、ホテル業界、タクシー業界、印刷業界、着物業界、映画業界など、いくらでもあります。この話を読んで、「自分のいる業界も同じだ」と思われる方がいるかもしれません。そこで働いている方々は今後、どうすれば良いのでしょうか。

 

大きな船だと思って安心して乗船していたら、気付けば、船底に穴が開いている。それも1つではなく、数えきれないほど……。あなただったら、どうしますか? 自分だけは助かるために真っ先に逃げる? 穴が開いていることを知らせるために、バケツを叩きながら大声を出す? 取りあえず、目の前の穴から塞いでいく?

 

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色々な行動が想定できますが、最もよくないのは、思考停止・行動停止の状態になることでしょう。「自分一人が騒いでも、どうにもならないから」「もう少しで自分は定年だから、そのくらい持ってくれれば十分」「難しいことは、上が考えてくれるから」……。船が沈んでいくときに、何も考えず、何も行動しない人はいませんよね。

 

自分なりに考えて、自分で動くべきなのです。沈んでいく業界を助けに来てくれる救助船など、存在しないのですから。

 

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osamuya-tasuke.hatenablog.com

 

 

誰がアパレルを殺すのか

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著者:杉原 淳一 、染原 睦美

日経BP