落語はビジネスにも役立つ!「笑う力」を身につけたい

アマチュア落語家・太助が、落語の魅力を考えます。

病院の落語会に出演させていただきました!

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。9月2日(土)、浅草病院内で開催された落語会に、落語教室の仲間と出演させていただきました。

 

浅草病院は、浅草からバスで約10分。隅田川沿いにある、とてもきれいな総合病院です。長期入院の患者さんを主な対象に、「隅田川寄席」という名前で落語鑑賞会をスタートし、今回は第2回となります。太助は、前回に引き続き、出演させていただきました。

 

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初回は日曜日に、総合受付ロビーに高座を作って行われました。大変に広々としたロビーで、全面ガラス張りの窓からは、東京スカイツリーが大きく望める素晴らしいロケーションです。

 

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車椅子の方がそのまま楽しめるようにスペース作り

 

今回は土曜日のため、診療科受付前に高座を作りました。待合用の椅子を並び替えてスペースを作り、車いすの方はそのまま観られるようにします。

 

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入院中の患者さん、付き添いの職員さん、病院の方のご家族などで、総勢35名もの方が集まっていただきました。

 

上演時間は4席で、1時間。噺が1席終わるたびに、トイレなどの休憩が必要かどうかを確認します。

 

演目は、

おさむ家蛸蔵「出来心」

おさむ家太助「狸の札」

おさむ家あーか「お菊の皿

おさむ家りん生「火炎太鼓」

 

今回は、みなさん楽しんでいただけたようで、アンケートも好評だったと聞きました。患者さんだけでなく、職員の方々、そのご家族も一緒に楽しんでいただけたようで、嬉しい限りです。

 

高齢化社会におけるリクレーションの取り組みとは?

 

病院で落語会を開催するのは、いろいろな意味でとても大変なことだと思います。ただでさえ忙しい職員さんの仕事が増えますし、患者さんの容態も含めて、気がかりなことは沢山あると思います。

 

ただ、急速な高齢化が進む日本において、病院は、高齢者の方々が、これまで以上に長い長い時間を過ごす場になっていくことは間違いありません。特に入院されている方にとっては、気の晴れない長い時間を過ごす場所です。新たなリクレーションへの取り組みが、ますます必要になってくるでしょう。今後、そうした試みが、病院と地域、あるいは若い世代をリンクさせていくのかもしれません。

 

残念ながら私たちは素人なので、プロの落語家さんのようにドッと笑っていただけるような技量はありません。ただ、初回の公演で、入院患者さんから「みんな楽しそうだなぁ、俺も仲間に加えてくれよ」と声をかけていただきました。

 

 力量不足ですが、楽しく一生懸命やっていれば、それなりに意味があるのかなぁ、と思っています。

太助セレクト落語 見逃したくない!10月のお勧め落語会(1)

こんにちは、太助です。2017年10月上旬の、太助お勧めの落語会をピックアップしました。ぜひ、参考にしてください! 秋は独演会も多くなる季節。落語初心者の方は、ホール落語をいろいろ見て、好きな落語家さんを見つけてくだい。

 

日本橋 市馬落語集

日時:10月2日(月) 開演:18:45

料金:2,900円他

出演柳亭市馬(りゅうてい・いちば)

場所日本橋劇場(水天宮前)

問い合せ:03-6277-7403

⇒高座姿がきれいで声が良い、市馬師匠。誰に勧めても、間違いありません。

 

柳家三三独演会「横浜三三づくし 豚ざんまい」

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日時:10月2日(月)開演19:00

料金:3,100円

出演柳家三三(やなぎや・さんざ)

場所横浜にぎわい座

問い合せ:045-231-2515

柳家三三師匠は古典落語の名手という印象がありますが、新作落語も手掛けます。この豚ざんまいは、三遊亭白鳥による創作落語「任侠 流れの豚次伝」のシリーズ作品です。

 

待ってました! 人気花形競演会

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日時:10月5日(木)、開演19:00

料金:3,600円

出演柳家権太楼、三遊亭白鳥桃月庵白酒

場所北とぴあつつじホール(王子)

問い合せ:03-6240-1052

⇒人気の落語家が3人共演する落語会。柳家権太楼師匠は、寄席の爆笑王とも呼ばれる落語家さん。3人とも個性派なので、自分の目で見て、好き嫌いを決めてください(笑)

 

鎌倉はなし会「柳家さん喬柳家権太楼・桃月庵白酒三人会」

日時:10月9日(月)祝日、開演:15:00

料金:4,000円

出演

柳家さん喬「妾馬」

柳家権太楼「猫の災難」

桃月庵白酒厩火事

場所鎌倉芸術館小ホール

問い合せ:0467-23-0992 

⇒円熟の域に入った柳家さん喬柳家権太楼師匠の二枚看板に、芸歴25周年を迎えて、今、脂の乗り切った(体型じゃないですよ)桃月庵白酒さんを加えた3人会。

 

深川亭砥寄席「古今亭菊之丞隅田川馬石 二人会」

日時:10月11日(水)、開演:19:00

料金:3,000円

出演古今亭菊之丞隅田川馬石

場所:深川江戸資料館

問い合せ:03-5332-6396

⇒江戸の風俗や暮らしを知りたいなら深川江戸資料館は、絶対にお勧めです。実際に長屋が作られているので、長屋の広さなど実感できます。併設されているホールでは、定期的に落語などが行われています。

 

*情報内容は、変更等の可能性があります。購入前に確認をお願いします。

なぜ、姿勢が良い人の話しは、とても聞きやすいのか?

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。色々な落語家さんを見ていると、噺(はなし)が聞きやすい方は、姿勢がとても良いことに気が付きます。そこで今回は、話をする姿勢について考えてみたいと思います。

 

落語を始めて、和服を着るようになってから、プロの落語家さんの着物や着付けが、とても気になるようになりました。それまでは気が付かなかったのですが、高い着物を着ている人・安物ばかり着ている人、色や柄のセンスが良い人・センスの悪い人、着付けのうまい人・すぐに着付けが乱れてしまう人など、落語家さんでも、こと着物に関しては、かなり差があるのです。

 

また、着物姿がキレイに見えるためには、姿勢がとても大切なことに気付きました。姿勢が、噺の聞きやすさに、かなり関係があるのです。

 

太助の選ぶ、話す姿のきれいな落語家さんBEST 9

 

落語は、正座で話しをします。この姿が(高座姿とも言われます)、とてもきれいな落語家さんが何人かいます。太助が、「話す姿がきれいだなあ」と思う落語家さんは、以下の方です。

 

柳家小三治

柳亭市馬(りゅうてい・いちば)

柳家三三(やなぎや・さんざ)

立川談春

立川談修

金原亭馬生(きんげんてい・ばしょう)

入船亭扇遊(いりふねてい・せんゆう)

林家彦いち

三遊亭歌奴(さんゆうてい・うたやっこ)

(*すべて当代)

 

姿勢の良い方は、背筋がスッと伸びて、頭のてっぺんから、正座したお尻の穴までが一直線になっています。それでいて、体には余計な力が全く入っていないのです。膝の上に置いた手先もきれいです。そして何より、姿勢のきれいな落語家さんの噺は、とても聞きやすいのです。

 

姿勢の悪い落語家さんは、大概、背筋が曲がっていて、体が右か左に少し傾いています。そして、若手の落語家さんに多いのですが、熱演するあまり、体が前後左右に揺れ、落ち着きがありません(太助もそうなのですが……)。結果、着物も乱れてしまいます。

 

もちろん、姿勢が悪くても、面白い落語家さんはいます。ただ、長時間見るのはつらかったり、独演会で数席見るのはきつい、という方が多いのは事実です。

 

この理由を考えると、姿勢の良い方は清潔感や安定感があります。加えて、視線の位置(特に高さ)が安定していることも大切なポイントではないでしょうか。安心して、長い時間、見ていられるのです。

 

演者が消えて、噺がスッと前に出て、引き込まれる

 

柳家系の噺家さんは、「身振り手振りは最小限に」と教えられるそうです。身振り手振りを抑えることで、より噺そのものに引き込ませるのでしょう。

 

それに比べ、身振り手振りの大きな、オーバーアクションの落語家さんもいます。例えば、三遊亭白鳥師匠などは、時には座布団の上で立ち上がったりもします。

 

この身振り手振りに関しては、どちらが良い、悪いという比較はできません。落語家さんの話すスタイルであったり、噺の種類によっても異なるからです。

 

ただ、太助の印象では、姿勢が良くて、身振り手振りを最小限にしている落語家さんの場合、噺の途中で演者がスッと消えるように感じることがあります。ストーリーが前面に出て、際立ってくるのです。柳家三三師匠の噺などで、時々、このように感じる瞬間があります。

 

落語を見るときには、高座姿や着物にも気を付けてみると、色々な発見がありますよ。

 

ビジネスのシーンでも、大勢の前でプレゼンテーションをすることはあります。その際、姿勢に気を付けてみるのは、とても大事だと思います。背筋をスッと伸ばして、視線をふらつかせないだけでも、落ち着いた印象を与え、聴衆に安心感を与えるものです。

 

と言っても、太助は猫背なので、気が付くと背筋が曲がっているのですが(笑)。シャンとしなくちゃ!

 

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高座姿の素敵な柳家三三師匠の「橋場の雪」

www.youtube.com

ラサール石井が志ん生を演じる演劇「円生と志ん生」

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。井上ひさし作の演劇「円生と志ん生」で、ラサール石井さんが古今亭志ん生役を演じるそうです。ある雑誌で、ラサール石井さんが、志ん生役を演ずるにあたり、「頭をつるつるに剃り上げるかどうか、悩んでいる」という記事を読みました。

 

井上ひさしには、評伝劇という実在の人物を主人公にした劇作が数多くあります。宮沢賢治石川啄木林芙美子小林多喜二樋口一葉平賀源内夏目漱石、等々。井上戯曲の特徴は膨大な資料から、主人公の歴史を丹念に辿り、ある一時期に焦点を当てます。例えば、宮沢賢治を主人公にした「イーハトーボの劇列車」という演劇では、賢治が上京する列車の中という極めて限定された時間が舞台となっています。

 

また、喜劇として作られるものが多く、劇中歌も豊富に入ります。評伝劇と聞くと、伝記のようなものを想像しがちですが、明るく楽しい作品が多いのも特徴です。また、史実をベースにフィクションも織り込まれ、劇世界が作られていきます。

 

古今亭志ん生三遊亭円生満州暮らし

 

この「円生と志ん生」は、昭和の名人と呼ばれた古今亭志ん生三遊亭円生が主人公。敗戦の近い満州国に巡演にやって来た二人が、敗戦により足止めされ、大連(だいれん)の街で過ごした六百日に焦点が当てられています。

 

国内では空襲も増え、寄席もほとんど無くなってしまった昭和二十年。飯も酒もたらふく食べられて、高額な給金も貰えるという言葉につられて、妻子を置いて満州に旅立つ志ん生と円生。しかし、敗戦により大連の街は、ソ連兵に取り囲まれ、文化戦犯とされた二人は逃避行を続けることになります。

 

食うや食わずの日々の中、それでも落語を忘れずに、日々の体験をネタにしながら、日本に帰る日を待ち続けます。

 

この作品のクライマックスは、終盤近くの修道院のシーンでしょう。極貧生活でボロをまとい、ひげを生やした志ん生が、修道女から蘇った救世主と勘違いされます。

 

このシーンで、落語を知らない修道女たちに、二人はこんな説明をします。

 

たとえば、貧乏を笑いのめしてステキな貧乏にかえちまう。(中略)災難であれ、厄介ごとであれ、なんでも、ワア、ステキーって見ちゃうわけね。(中略)この世が涙の谷なら、どうせ災難がつづけざまに襲いかかってくるんでしょう。それならその災難を、ステキだなと思って乗り越えちまうんですよ。

p.172「円生と志ん生井上ひさし 

 

 

「笑い」に何の意味があるのか? 繰り返し、繰り返し問い続けた、井上ひさしのテーマが、ここでも語られます。

 

「笑い」に変えることで、人生のいろいろなものを乗り越えていける。太助もそう思います。

 

ラサール石井さんは、頭を剃るべきか?

 

この作品が井上ひさしの評伝劇の中で、他の作品と比べてやや異質なのは、志ん生と円生の落語の残像が、多くの人の脳裏に強く残っていることです。樋口一葉夏目漱石といっても、教科書にあったポートレートが浮かぶ程度です。しかし、志ん生、円生となると、特に落語ファンならば、二人の口調や姿、特徴的な噺の数々がすぐに浮かんできます。

 

さて、ラサール石井さんは、頭を剃るべきかって? 

 

私は、そんな必要は全くないと思います。なぜなら演劇は、形態模写ではないからです。志ん生のモノマネをする必要はありません。もちろん時代や落語家の空気を感じさせる必要はあります。しかし、ラサール石井さんは、石井さんなりの、独自の志ん生像を作り上げれば良いのです。それが演劇というものだと思います。

 

円生と志ん生

2017年9月8日(金)〜9月24日(日)

紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA

問い合せ:03-3862-5941

www.komatsuza.co.jp

 

円生と志ん生

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井上ひさし(著)

集英社

江戸時代は、金を貯めたり、出世するのは、みっともない?「三方一両損」

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こんにちは、太助です。暑い日が続きますが、いかがお過ごしですか? 太助は「三方一両損(さんぽういちりょうぞん)」という落語を演じたくて、いま一生懸命、調べているところです。

 

この落語は、江戸っ子の金銭観が表れていて、とても興味深い噺なので、ご紹介しましょう。

 

拾った金を押し付けあう、おかしな二人

 

三方一両損」は、左官職人の金太郎が財布を拾うシーンから始まります。財布に入っていたのは三両のお金と印形(印鑑)、名前・住所を書いた書付け。この書付けで、財布を落としたのが神田の大工、吉五郎だと分かります。

 

金太郎は親切心で、この財布を吉五郎に届けに行きます。喜んでくれると思いきや、吉五郎は「余計なことをしやがって」と怒り出し、印形と書付けは受け取るが、金を要らないから金太郎にやると言い出します。

 

「せっかく届けに来たのに、なぜ金を受け取らないんだ」と怒る金太郎。

 

落とした金を届けてもらって、『ありがとうござんす』なんてんで、こいつを大事にしまっとくなんて、そんな、さもしい料簡は俺にはねえんだ」と返す吉五郎。

 

 

金太郎も受け取らない。「受け取れ」「要らねえ」を繰り返したあげく、とうとう二人は大喧嘩に。仲裁に入った大家の言うことも聞かない吉五郎。「後日、必ずお礼に行かせるから、今日は引きとってくれ」と大家に懇願され、帰宅する金太郎。

 

ところが、金太郎が住む長屋の大家が、このいきさつを聞いて、いきり立ち、とうとう奉行所に訴え出ることに。

 

これを裁くのが名奉行・大岡越前(おおおか えちぜんのかみ)。大岡越前守は、問題の三両を預かったうえで、二人の正直さへの褒美に、二両ずつ与え、この裁きを「三方一両損」と説明します。

 

吉五郎は届けられた金を受け取っていれば、三両を手にしていた。金太郎は、要らないと言って返された金を受け取っていれば、三両手にしていた。大岡越前守は預かった三両に、自分の一両を足して二人に与えた。つまり三方が一両ずつ損をして、丸く収まるという裁きだったのです。

 

あなたは「イエス」それとも「ノー」?

 

さて、現代に生きる皆さんから見て、この二人の金銭に関する潔癖感は、違和感のあるものでしょうか? あまりに馬鹿げたものですか?

 

この落語のマクラでは、

 

江戸っ子というものは、どうも金に執着がなかった、なんて言いますな。今日稼いだ金は、今日中に使ってしまう。宵越しの銭は持たないなんてことを自慢にしていたそうです。江戸っ子の代表というと職人でございますから、商人(あきんど)と違って金を蓄えるということをしない。金は腕の中に入っている。金が欲しいときには仕事をすればいい。確かに腕のいい職人になると、仕事が降るほどあったんだそうです。だから、宵越しの銭は持たないという手合いが、いくらでも居たんだそうですな。

 

と、江戸っ子の金銭感覚と金に対する美学が語られています。

 

太助が面白いと思うのは、取り調べを受けている金太郎が、

 

三両ばかりの金を拾って、ネコババするような、そんなさもしい了見を持ってるんだったら、とうの昔に、こっちゃあねえ、立派な親方になってるんでい。こっちゃあ、生涯、親方なんぞにはなりたくねえ。人間というものは出世するような、そんな災難に遭いたくねえ

 

と語るところです。

 

「大企業に入って、年収1000万以上が勝ち組だ」と言っている現代と違いすぎるでしょ? 出世するのは災難なんです。

 

しかし、近頃は、災難に遭いたくないのか、出世を拒む人が増えているのも事実。

 

あなたは、金太郎の考え方はイエスですか? それともノーですか?

 

www.youtube.com

太助セレクト落語 見逃したくない!9月のお勧め落語会(3)

こんにちは、太助です。2017年9月下旬の、太助お勧めの落語会をピックアップしました。ぜひ、参考にしてください! 落語初心者の方は、まずチケットを購入して足を運んでみるといいですよ!

 

爆笑! 特撰落語三人会

日時:9月21日(木)18:30開演

料金:3.200円

出演三遊亭白鳥桃月庵白酒桂宮治

場所さいたま市文化センター

問い合せ:03-6240-1052

⇒白鳥、白酒、宮治師匠の3人会ときたら、思いっきり弾けて、遊んでくれそうです!

 

Tatekawa Blood 志らく・談笑二人会

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日時: 9月23日(土)開演13:30

料金:4,200円

出演立川志らく立川談笑、他

場所:よみうりホール

問い合せ:03-5785-0380(夢空間

⇒「江戸の風」と「イリュージョン」。立川談志が思い続けた落語の本質を引き継ぐ落語会。江戸の風を感じることができるかな。

Tatekawa Blood 立川志らく・談笑 二人会 | よみうりホール

 

なかの・らくご長屋

日時:9月24日(日)

料金:2,700円 他

出演:12:30 春風亭一朝/15:00 入船亭扇遊(入れ替え)

場所なかの芸能小劇場

問い合せ:03-6304-8545

⇒日曜日にフラッと出かけて、お気に入りの落語家さんの噺を聴くなんて、結構、贅沢。らくご長屋は、気軽に落語を楽しめる落語会です。

 

らくご街道 雲助五拾三次 大詰

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日時:9月26日(火) 開演19:00

料金:一階指定席3,000円(前売)/3,500円(当日)

※当日のみ 二階自由席2,500円/仲入り後1,500円

出演五街道雲助

場所日本橋劇場(日本橋公会堂4F)

問い合せ:03-5809-0550

紫綬褒章を受賞した五街道雲助師匠の一人会。聞きやすく、分かりやすいので雲助師匠は、初心者にもお勧めです。ときには、珍しい噺も演じられます。

中央区立日本橋公会堂 - « らくご街道 雲助五拾三次 大詰

 

落語研究会

日時:9月29日(金)

料金:指定A:3,800円/指定B:3,300円(当日券のみ)

出演

柳亭小痴楽「干物箱」

鈴々舎馬るこ「鮑熨斗」

入船亭扇遊「文違い」

橘家文蔵「試し酒」

柳家三三五貫裁き

場所:国立小劇場

問い合せ:03-3746-6666

⇒当日券のみ。旬の噺家さんが勢ぞろい。これは行くしかないでしょう。

 

*情報内容は、変更等の可能性があります。購入前に確認をお願いします。

ズブズブと沈んでいく業界で働くあなたへ「誰がアパレルを殺すのか」

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。最近、落語業界のことを調べていて、「つくづく不思議な業界だなあ」と感じています。そんな折に手に取ったのが『誰がアパレルを殺すのか』という本でした。これが、ズブズブと沈んでいく業界の構造を的確に描いていて、大変に興味深い書籍でした。

 

そこで、今回は落語とかけ離れますが、ダメになっていく業界の構造を考えてみたいと思います。

 

この本は、不振にあえぐアパレル(衣料品)業界の様々な問題点を分析したものです。タイトルは、2001年に出版された『だれが「本」を殺すのか』(佐野眞一)を意識して付けられたものでしょう。アパレル(衣料品)と出版という業界の違いはありますが、「沈んでいく業界というのは、とてもよく似ている」ことを痛感します。

 

本書で指摘されている業界の問題点を挙げてみましょう。

 

1)業界構造の各所で問題を抱え、不況の要因が複合的になっている

 

この図はアパレル業界のサプライチェーンです。サプライチェーンとは、衣料品が消費者に届くまでの流れのことです。様々はプレイヤーが存在し、商品が製造され、消費者の手に届けられています。しかし、この各プレイヤーは分断されています。

 

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「誰がアパレルを殺すのか」p.18図より作成

 

景気の低迷などで、消費者は衣料品に対しての支出を抑えるようになり、ブランド品や流行に簡単には飛びつかなくなりました。また、ネットの普及により、ネットで衣料品を買うことも当たり前になりました。このような変化に伴い、様々な問題が生まれているのですが、各プレイヤーが一体となって、その解決に取り組むことができないのです。

 

2)無駄を承知で大量に生産を続ける

 

国内のアパレルの市場規模は、1991年に15.3兆円あったのが、2013年には10.5兆円と、20年で3分の2まで縮小しています。にもかかわらず、市場に出る商品は倍増しているのです。当然、大量の売れ残りが出ます。

 

衣料品は季節性や流行が重視されるので、定価で売れなかった商品は、店舗内でのセール、店舗以外でのファミリーセール、各地のアウトレットモール、最後はバッタ屋と、値段を下げながら、場所を変えて販売されます。問題は、大量の売れ残りを前提として価格設定をして、大量の無駄な商品を作っていることです。

 

無駄を承知で生産しているのは、出版業界も同じです。本屋さんは、店頭で売れなかった本を返品することができます。この返品率は現在、約40%にもなっています。出版社は100冊印刷したら、40冊前後は売れ残ることを前提に出版していることになります。

 

どちらの業界も、無駄を前提に商品を作り、流通させる構造が、長い年月の中で強固に作り上げられ、簡単に変えることができません。

 

3)時代遅れの商習慣や制度が存在する

 

では、本屋さんで、売れなかった本を値引きして販売できるかというと、これが不可能なのです。再販制度(再販売価格維持制度)というものがあり、出版社が決めた価格でしか販売ができないのです。売れない本は、値引きはできないが、返品は可能です。新刊も大量に入ってくるので、売れそうにない本はどんどん返品されるのです。

 

アパレル業界には「消化仕入れ」という独特の商習慣が存在します。これは、以下のようなものです。

 

百貨店は売り場をアパレル企業に提供するが、商品の所有権はアパレル企業が持ったまま。販売員の確保までアパレル企業が負担する。販売員の確保まで含めて、アパレル企業が負担する。そして、店頭で商品が売れた分だけ「百貨店がその商品を仕入れた」と見なし、アパレル企業に仕入れ代金を支払う。つまり百貨店は在庫リスクを負わない。 

「誰がアパレルを殺すのか」p.56より

 

仕入れても不良在庫になるリスクがなければ、危機感もなくなり、本当に売れる良いものを仕入れる力は落ちていくはずですよね。

 

出版やアパレルには、このように他業界から見ると不思議な制度や商習慣が存在するのです。これらは、もちろん必要性があって作られ、続いているものです。しかし、環境の変化と共に、業界の変革を妨げる存在になっているのです。そして、この慣習により、既得権益を享受する層も確実に存在します。この人達も、変革を妨げる勢力となります。

 

4)そして、破壊者(Disruptor)がやってくる!

 

業界が既得権益や内輪の論理にとらわれ、矛盾に気付きながらも変革できないでいると、破壊者(ディスラプターと呼ばれる新興プレイヤーが、外から参入してくるのです。これら破壊者の特徴は、業界の構造や習慣を気にせず、さらにネットなどの最新テクノロジーを使い、参入してきます。

 

出版業界、アパレル業界の破壊者といえば、ネット販売業者でしょう。Amazonは新書の販売だけでなく、中古書籍の販売も仲介しています。中古書籍は前述した再販制度の対象とはなりません。書店に足を運ばなくても、膨大な書籍データベースから商品を探すことができ、さらに低価格の中古品を見つけることが可能となりました。

 

アパレル業界では、ネット販売のZOZOTOWNなどでの購入が当たり前になりましたし、中古品をスマホで売買するメルカリも広く利用されるようになりました。このような新興のサービスは、業界の慣習で作られているわけでなく、使いやすさや価格などが消費者のメリットになるように作られています。だから、急速に普及していくのです。

 

 

ズブズブと沈んでいく業界で働いているあなたは、今後どうすればよいのか?

 

業界全体の構造が多くの課題を抱え、ディスラプターの脅威にさらされている業界は、アパレル業界だけではなく、旅行業界、ホテル業界、タクシー業界、印刷業界、着物業界、映画業界など、いくらでもあります。この話を読んで、「自分のいる業界も同じだ」と思われる方がいるかもしれません。そこで働いている方々は今後、どうすれば良いのでしょうか。

 

大きな船だと思って安心して乗船していたら、気付けば、船底に穴が開いている。それも1つではなく、数えきれないほど……。あなただったら、どうしますか? 自分だけは助かるために真っ先に逃げる? 穴が開いていることを知らせるために、バケツを叩きながら大声を出す? 取りあえず、目の前の穴から塞いでいく?

 

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色々な行動が想定できますが、最もよくないのは、思考停止・行動停止の状態になることでしょう。「自分一人が騒いでも、どうにもならないから」「もう少しで自分は定年だから、そのくらい持ってくれれば十分」「難しいことは、上が考えてくれるから」……。船が沈んでいくときに、何も考えず、何も行動しない人はいませんよね。

 

自分なりに考えて、自分で動くべきなのです。沈んでいく業界を助けに来てくれる救助船など、存在しないのですから。

 

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誰がアパレルを殺すのか

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著者:杉原 淳一 、染原 睦美

日経BP

落語で「笑わせる力」を身につける。笑わせる人の4つの特徴とは!? (1)

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笑ってもらえるとビジネスシーンは劇的に変わる

 

こんにちは。アマチュア落語家の太助です。この連載のタイトルは、『落語はビジネスにも役立つ「笑う力」を身につけたい』です。

 

営業やプレゼンテーションなど、様々なビジネスのシーンにおいて、「相手に笑ってもらう」ことは、とても重要な意味を持ちます。

 

営業の下手な人は、自分の会社の商品やサービスのことばかり話しがちです。いかに優れているかを延々と語ります。営業の上手な人は、相手の話しを引き出せる人です。お客様の本当に悩んでいること、困っていることを聞き出すことができる人です。

 

さらにハイレベルな人は、そのコミュニケーションの中に、「笑い」を混ぜることができます。「笑い」が起こることによって、場がなごみ、話しが弾むことは、皆さんご存知だと思います。

 

これはプレゼンテーションでも同じです。優れたプレゼンテーターは、必ずジョークを上手に織り込み、笑いを取り、雰囲気を盛り上げていきます。

 

しかし、「笑ってもらう」とひと口に言っても、簡単ではありませんよね。そこで、落語家さんの「笑わせる」テクニックを少し考えてみたいと思います。

 

優れた落語家は、「マクラ」が面白い!

 

落語は、一般的にマクラと本編で構成されます。マクラとは、本編に入る前の小噺です。通常、本編のテーマに関係ある話題が語られます。例えば、「替り目」など酔っ払いが主人公の噺であれば、酒にまつわる体験談、見聞したこと、最近のニュース(酒税が上がった等)などで小噺にします。

 

いきなり本題に入るのではなく、関連する話題で、これから始める落語への興味を持ってもらうのですね。また、現代とは風俗が違うため、理解できない習慣や言葉などを、マクラで簡単に説明する場合もあります。

 

優れた落語家さんは、このマクラがとても面白いのです。マクラで笑いを起こすことを「温める」などと言いますが、最初に観客が少しでも笑ってくれると、本編ではよりスムーズに笑いが生まれます。柳家小三治師匠のマクラの面白さは有名で、マクラだけを集めた書籍やCDも発売されているほどです。

 

マクラの面白い落語家の4つの特徴は!?

 

マクラの面白い落語家さんの特徴は、何と言っても、好奇心旺盛なことです。色々なことを積極的に見聞し、情報収集しています。柳家小三治師匠は、この典型と言えるでしょう。

 

二つ目の特徴は、趣味を含めて、何か強いこだわりのあるものを持っています。柳家喬太郎師匠の「ウルトラマン」や春風亭昇太師匠の「城巡り」など、ファンの間では有名です。

 

三つ目の特徴としては、観察眼に優れていることが挙げられます。例えば、訪れた街の様子や暮らし向きなど、とても細かく観察しています。ある落語会で、春風亭一之輔師匠が、駅から会場の途中にある24時間営業のジーンズショップについて「24時間営業する必要ってあるんですかね?」と、ボソッと話したところ大受けでした。

 

私も含めて多くの人が、同じような疑問を、ボンヤリと感じていたのだと思います。観察眼に優れている人は、「何でだろう?」という疑問を抱くことを習慣化しています。この観察眼によって、普通、見過ごしてしまうことにも面白さを発見できるのだと思います。

 

特徴として最後に挙げたいのは、どんなことでも、「笑い話」に変える力を持っていることです。落語家さんの周りにだけ、面白いことがたくさん起きるわけではありません。失敗や嫌なこと、頭にくることもたくさんあるはずです。そういうことも含めて、笑いに変えてしまおうと、日々、努力されているのではないでしょうか。

 

好奇心や観察眼などは、自分の努力や心がけ次第で身につけていけそうです。そして、嫌なことも笑い話に変える力が備わったら、とても生き方がラクになると思います。

 

太助も「笑わせる力」は、まだまだですが、日々、精進したいと思っています!

 

柳家小三治トークショー 3 ~玉子かけ御飯

ソニー・ミュージックレコーズ

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落語家は、YouTubeに高座の動画をアップすべきなのか?(2)

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。以前、落語家はYouTubeに高座の動画をアップすべきか? というテーマを考えてみました。今日は、その続編になります。

 

(前回の記事)

osamuya-tasuke.hatenablog.com

 

第1回では、「売れる」という要素を以下の5つに分解してみました。

 

 売れる=知名度×実力×評判×新規客×固定客

 

 

1)知名度(見たこと、聞いたことがある)

2)落語家としての話芸の実力

3)評判(面白かった、感動した、お客が入っていた、など)

4)新規客をつかむ

5)固定客(ファン、常連さん、リピーター)を増やす

 

落語のメインターゲットである中高年層に知ってもらうには、テレビへの露出が一番良いのですが、テレビで落語家が登場できる枠は限られています。そこで、

 

自分の高座の動画を、YouTubeに戦略的にアップしていくこと

 

を提案しました。

 

ネットおよび動画の活用です。なぜネットを活用すべきなのか? それは、メディアの利用時間において、ネットはテレビに次ぐものになっているからです。下のグラフは、主なメディアの1日の平均利用時間を示したものです(総務省「平成29年版 情報通信白書」より抜粋)。

 

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平日の全世代でも、テレビ(リアルタイム)視聴に次いでインターネット利用の時間が長く、毎年、増加傾向にあります。

 

10代、20代では、すでにネットの利用時間が、テレビの視聴時間を大きく上回っています。

 

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知名度を上げたり、新規客を獲得していくためには、ネットをメディアとして活用することが大切なことがお分かりいただけると思います。

 

さらに、ネットは「口コミの拡散効果」に優れています。特に若い世代は、「おもしろい」と思ったことを、SNS(LINEやInstagramなど)を利用して、友人に(あるいは不特定多数の人に)その場で伝えます。この友人が、また自分の周囲に伝える、というように、情報がスピーディーかつ広範囲に広まります。

 

落語会で観てもらい、固定客が「面白かった」と言って、次回に知人を連れてきてくれるという、リアルな評判の広げ方では、地域も限定されてしまいます。しかし、ネットであれば、日本全国で、自分の芸を見てもらうことが可能なのです。

 

ネットで動画を公開するメリットとデメリット

 

では、落語家が、ネットで動画や音源を公開するデメリットは何でしょうか? 太助の推測も交えて、以下のようなものがあると思います。

 

1)ネットで満足してしまい、実際の高座に足を運ばなくなる

2)CDやDVDの売上が下がる

3)不評、悪評が広がる可能性がある

4)芸やギャグを同業者に盗まれる可能性がある

 

2)は、音楽業界では長らく議論されているテーマです。違法に楽曲をネットに公開されることで、CDの売上が減ってしまうという問題です。難しい課題なのですが、現在、考え方が少しずつ変わってきています。積極的に楽曲をネットに公開することで、コンサートに来る観客を増やす、という戦略を採るミュージシャンが増えているのです。

 

ネットで知名度を上げ、実際のコンサートに足を運んでもらうという方法ですね。日本のONE OK ROCK(ワンオクロック)というバンドは、この手法で世界各地に進出しています。

 

現在、柳家喬太郎立川志の輔など、トップクラスの人気を誇る落語家さんの動画は、数多くアップされています。志の輔師匠は、「日本で最もチケットの取れない落語家の一人」と言われていますから、地方の方も含めて、動画や音声で視聴できることは、大変に嬉しいことです。ネットで視聴してみると、さすがに面白く、ぜひ「高座に行きたいな」という気持ちにさせてくれます。

 

3)についてですが、動画にはコメントが付けられるので、好評、不評が書き込まれるのは仕方ないですかねぇ。しかし、それはリアルな高座でも同じではないでしょうか(笑)。

 

4)は、太助の推測です。プロの世界では、他人のギャグは盗まない、という不問律があると聞いたことがありますが。どうなんでしょうか? ネットで先に広めたほうが、本家になりそうな気もしますが。

 

いろいろと書いてきましたが、結論としては、次世代を取り込むという意味においても、落語家さんは積極的にネットを活用すべきだと思います。立川談志師匠は、テレビの黎明期に、「笑点」などの企画をガンガン発案して、メディアとして上手に活用していました。これだけの数の落語家さんがいながら、現在、戦略的にネットを活用しようとしている方は、ほとんど見当たりません。実に、もったいない気がします。

 

さて明日は、落語教室の発表会。太助、頑張ってきます!

 

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猫好きのための落語って、あるのかニャ!?

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こんにちは、太助です。私は、自他共に認める猫バカ。街で猫を見かければ、「ニャ」と言って話しかけ、飼い猫が外で喧嘩をしていれば、必ず駆けつけて加勢します。いつでも、自分の飼い猫のほうが正しいと信じ込み、太助という名前も、実は昔の飼い猫の名前。

 

もう猫バカというより、ただの馬鹿という気もしますが……。

 

猫好きのための落語があるのか、気になったので探してみました。

 

猫の皿

 

骨董の仲買人が主人公。東京では掘り出し物が見つからないので、地方を回っている。街道の茶屋で休んでいて、ふと土間を見ると、猫が飯を食べている最中。その皿を見て、驚いた。絵高麗といって、三百両は下らない大変に高価なもの。この皿を、なんとか安く買い取ろうと考え、「自分は猫好きなので、猫を譲ってほしい」ともちかける。しぶる主人に、三両の値を提示して、なんとか承知をさせる。「ついでに、その皿も譲ってほしい」と言うと、主人は承知をしない。「この皿は絵高麗の大変、高価なものだから」と言う。「そんな高価もので、なぜ猫に飯を食わせてるんだ?」と尋ねると、主人の答えが……。

 

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猫久(ねこきゅう)

 

題名には、「猫」が入っているが、これは長屋暮らしの八百屋の久六さんのあだ名。猫のようにおとなしいから猫久と呼ばれている久六が、ある日、血相を変えて脇差(わきざし)を取りに戻ってきた。その女房は、脇差を取りだすと、神棚の前で三遍いただいて亭主に渡した。それを見ていた熊が、その意味を教えられ、よく理解しないまま真似をするという長屋噺。

 

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猫の災難

 

文無しの熊さん、隣りのおかみさんから、鯛の頭と尻尾だけをもらう。猫の病気見舞いに貰ったもので、身を食べさせた残りもの。ここに訪ねてきたのが兄貴分。真中にすり鉢がかぶせてある鯛を見て、「いい魚がある」と勘違いして、酒を買いに行ってしまった。困った熊は、酒を買って戻ってきた兄貴分に「猫が身だけ、持って行ってしまった」と嘘をつく。どうしても鯛が食べたくなった兄貴分は、今度は魚屋へ。その間に、酒の味見を始めた熊だが、飲みだすと止まらない。とうとう、買ってきた酒を飲みきってしまった熊は、また猫のせいに……。

 

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猫忠(ねこただ)

 

美人の常磐津(ときわず)の師匠のところへ、下心いっぱいで通う若い衆。ところが、この師匠と自分達の兄貴分が、いい仲になっていることが分かる。腹を立てた連中は、兄貴分の女房に告げ口に向かうのだが、このいい仲になっている男は、大きな猫が化けたものだった……。

 

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猫怪談

 

与太郎の育ての親というべき親分が、急に亡くなった。与太郎と大家、長屋の住人の三人で、夜中、寺に運ぶことになるのだが、途中で遺体を入れた早桶(はやおけ)がバラバラに。大家達は、換えの早桶を探しに出かけ、与太郎が一人で番をすることに。ところが、遺体が動き出したり、踊りだしたりする。魔力を持った猫の仕業ではないか、というちょっと不気味な噺。


 

こうして紹介してみると、猫がタイトルについている噺でも、猫は出てこなかったり、猫は化けるなど魔力を持っていると信じられていたため、怪異談のような噺も多いですね。「可愛い猫が登場する噺はないのか?」と探してみたら、三遊亭白鳥師匠の「わんにゃん物語」がありました。これは、お気に入りです。

 

わんにゃん物語

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猫好きの皆さん、猫の落語はいかがですか? ちょっと現代とは、猫の存在感が違いますよね。

 

太助セレクト落語 見逃したくない!9月のお勧め落語会(2)

こんにちは、太助です。2017年9月中旬の、太助お勧めの落語会をピックアップしました。ぜひ、参考にしてください!

 

入船亭扇遊を聴く会

日時:9月10日(日)、開演:18:30

料金:全席指定 3,000円

出演:入船亭扇遊

場所:三越前 お江戸日本橋亭

問い合せ:090-2705-9694

⇒本当に、粋でしぶい落語家といえば入船亭扇遊師匠。映画「ねぼけ」の師匠役もカッコ良かった! お勧めです。

 

笑ホール寄席

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日時:9月15日(金)

開演:19:00

料金:2,000円

出演:三遊亭王楽、春風亭一之輔、立川志獅丸、桂三木男

場所:たましんRISURUホール

問い合せ:042-526-1311

⇒このメンバーで入場料が2,000円。コスパ良すぎでしょ! チケットが取れたら、めっけもん。立川志獅丸師匠の屈託のない明るさも、太助は好きです。

 

朝日名人会

日時:9月16日(土)

開演:14:00

料金:4,300円

出演:

柳家権太楼 「薮入り」

林家正雀 「芝居風呂」

柳家喬太郎 「擬宝珠」

入船亭扇辰 「一眼国」

桂三木男 「大工調べ」

場所:有楽町朝日ホール

問い合せ:03-3267-9990

⇒伝統ある朝日名人会。柳家喬太郎師匠の「擬宝珠(ぎぼし)」は、あまり演者のいない、ちょっと珍しい噺です。 

 

なまらく「てんまんの会」

日時:9月16日(土)

開演:18:00

料金:予約2,200円 当時2,500円

出演:三遊亭天どん、三遊亭萬橘

場所:お江戸両国亭

問い合せ:03-6677-0031

⇒癖のあるというか、とても個性的な天どん、萬橘師匠の二人会。好きになるか、嫌いになるか? 自分で見て判断してください。

 

扇辰・喬太郎の会

日時:9月17日(日) 

開演:18:30

料金:3,600円

出演:柳家喬太郎、入船亭扇辰

場所:国立演芸場

問い合せ:03-6909-4101

柳家喬太郎、入船亭扇辰の同期2人の勉強会。今回は、扇辰師が「緑林門松竹」より 、喬太郎師が「二十四孝」。毎回、即完売となる人気公演。残念ながら、チケットはすでに売り切れです。

 

*情報内容は、変更等の可能性があります。購入前に確認をお願いします。

日本版カジノを作るなら、高度なエンターテイメントのセンスが必要(1)

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こんにちは、太助です。落語で、「飲む(酒を飲む)」「打つ(賭博をする)」「買う(女郎を買う)」は、欠かすことのできない題材です。人口比で男性の多かった江戸では、この飲む、打つ、買うが、大きな娯楽であったことは間違いありません。

 

「打つ」とは賭け事のことで、これを題材にした落語も色々あります。名作といわれる「文七元結(ぶんしちもっとい)」も、腕はいいが博打にのめり込んで、何もかも失った左官職人が主人公です。いまの言葉でいうと、ギャンブル依存症です。

 

ここまで書いていて、ふと「日本版カジノは、どうなったのだろうか?」と気になりました。そこで今回は落語をちょっと離れて、日本版カジノについて考えてみたいと思います。

 

日本版カジノのメリットとデメリット

 

2014年5月に安倍首相が、カジノを含む統合型リゾートが日本経済の成長の柱になるという認識を示し、これ以降、日本で本格的なカジノ合法化と統合リゾートの導入に向けた検討に入りました。

 

統合型リゾートとは、カジノを中心として、ホテル、レストラン、劇場などその他のアミューズメント施設、国際会議場、国際展示場といったものを含んで開発される統合的な観光施設です。思い浮かぶのは、ラスベガスやマカオにある巨大なリゾート施設ですね。

 

この日本型カジノがスタートすると、開発段階から巨額の投資が見込めますし、国内・海外からの観光客の誘致、雇用の創出、地方経済の活性化など、いわゆる経済効果が期待できます。

 

その半面、ギャンブル依存症の発生、周辺地域の治安の悪化、青少年教育への影響などが懸念されています。また、賭博は日本の法律では、かなり厳しく制限されていますので、そこをクリアしていく必要があります。これがカジノ合法化の壁です。

 

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シンガポールの統合型リゾート「マリーナベイ・サンズ」

 

日本人のギャンブルの楽しみ方の特徴

 

太助は、仕事や観光などで、ラスベガスには10回以上、その他、マニラやシンガポール、韓国のカジノなどを体験しています。

 

その体験を元に言わせてもらうと、「日本型カジノはやるべき。ただし、構想から運営まで海外からのプロフェッショナルを招聘して進めないと失敗する」と思います。

 

その理由として、以下のように考えます。

 

1)日本で将来的に成長を見込める産業は数少ない。その1つは間違いなく観光。統合型リゾートは新たな観光名所にもできるし、日本には少ない長期滞在型リゾートにもできる。

 

2)ギャンブル依存症は、当然、一定数は発生するが、現在あるパチンコや競馬、競輪などと比べて突出して高くなることはない。

 

3)地域の治安に関しては、野球場でもターミナル駅でも人の集まる場所は、当然、スリ等は増える。しかし、これは警備体制の問題である程度、解決できる。

 

4)一番の課題は、明確なコンセプトを持った、大人が本当に楽しめるリゾート施設を作れるかどうか。日本人は、この手のアミューズメント施設を作るのが本当に下手。

 

2)に関しては、色々なカジノを観察していると気付くのですが、ギャンブルの楽しみ方が、日本人とアメリカ人、あるいは中国人とでは違うのです。

 

パチンコがいい例なのですが、100%個人での娯楽です。店内にいくら人がたくさん居ようと、そこに会話はありません。競馬や競輪もそうです。ほとんどの方は、個人ベースで楽しんでいます。ところが、ラスベガスのアメリカ人やマカオの中国人は、グループで来て、ルーレットやバカラのテーブルを囲み、みんなで「勝った、負けた」と大騒ぎしながら、長時間、楽しんでいます。

 

ギャンブルの楽しみ方が、根本的に違うのではないか、というのが太助の考えです。入場にマイナンバーカードを提示することになりそうですし、入場の回数制限もある。カジノを前面に出して、日本人をメインターゲットにすると苦戦しそうな気がします。(ちなみ私は、カジノで色々、ギャンブルを体験し、「自分はギャンブルが好きではない」ということに気付きました(笑)」

 

コンセプトのはっきりしない、骨抜きされたような施設は作るな!

 

しかし、何と言っても課題は4)です。本当に魅力的な施設を作れるのか、という点です。統合型リゾートは、後発ほど、より豪華に、コンセプチュアルにする必要があると思います。また、世界最高クラスのショーも統合型リゾートの魅力の1つですが、こういう部分の招聘も日本人は苦手です。

 

公的機関や色々な企業が入り、コンセプトが二転三転し、結果、無難で面白味のない施設ができてしまうのではないかと危惧します。

 

いい例が、長崎のハウステンボスです。なんだかコンセプトのはっきりしない、面白味のない施設で、エイチ・アイ・エスが支援に入るまで、15年近くも迷走と経営難を繰り返しました。

 

という訳で、海外からの投資や、経験のあるプロフェッショナルを積極的に呼び込み、任せるべきことは任せていくべきだと思います。

 

でも太助は、結構ワクワクしてるんですよ。ラスベガスのように大人が歩いて本当に魅力的な、ワンダーランドができればいいなぁ、と思っているのです。

 

日本版カジノ、みなさんは、どう思われますか?

闇の奥から聞こえてくるのは……。怪談「生きている小平治」

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こんにちは、太助です。落語には怪談噺(かいだんばなし)というジャンルがあります。怪談というと稲川淳二さんが有名ですよね。

 

テレビや映画と違い、落語は、映像がなく、語りだけで展開していきます。すべての情景は、聞き手である私たちの想像力にゆだねられます。登場人物の表情や恐ろしい光景など、百人いれば百通りのシーンが、それぞれの脳裏に浮かんでいるのです。

 

太助の好きな怪談噺は、八代目 林家正蔵(彦六)が得意とした「生きている小平治(こへいじ)」です。

 

奥州(福島県)の安積沼(あさかぬま)で、2人の男が一艘の小船に乗り、釣りをしている場面から、噺は始まります。一人は役者の小平治。もう一人は、幼なじみの同じ芝居小屋で働く、囃子(はやし)方の太九郎(たくろう)。

 

その沼の情景は、こんな風に語られます。

 

「沼の上には白い藻の花が咲いておりまして、おいかぶさるように暗い木立を映して、どんよりと澱んでおりまする水の面(おもて)。空は露を含んでおりますが、暗いのですが、遠い山々のはしのほうに、青空がちょいと見えまして、そこからわびしい光の矢が一筋、この古沼をさしております」

 

小平治は、四年前から、太九郎の妻おちかと深い仲になっていることを、この船の上で、太九郎に打ち明けます。そして、「おちかを譲ってくれ」「いや駄目だ」という言い争いになり、太九郎は船の櫂を小平治の顔に叩きつけ、沼に突き落とします。

 

闇の中をトボトボと、提灯がどこまでも

 

数日後、江戸のおちかの家に、小平治が血だらけの姿で現れ、「太九郎を殺してしまったから、自分と一緒に逃げてくれ」と言い出します。そこへ戻ってくる太九郎。死んだと思っていた小平治が生きていたので、慌て、驚き、再び小平治を刺し殺します。

 

役人に追われ、江戸を去る太九郎とおちか。

 

その旅の途中で、太九郎は、「宿屋のそばで、小平治にそっくりな男を見かけた。小平治はまだ生きている」と呟きます。

 

「殺しても、殺しても小平治は生き返る」と怯える太九郎に対して、おちかは「そのときは、幾十度、幾百度でも殺してやりゃいいんだよ」と言い放つのです。

 

何かに引かれるように慌てて旅立つ太九郎。追いかけるおちか。……と、暗がりの中から、ちょうちんを下げた、顔に大きな傷のある小平治が現れ、トボトボと追っていきます。

 

小平治は、二人に襲いかかったりする訳ではありません。ただ、ただ、二人の後を静かに、どこまでも付いて行くだけなのです。

 

噺の最後はこのような言葉で終わります。

 

「やがて提灯の灯りも、真っ暗がりの闇の中。聞こえるものは風の音。波の音」

 

広がっていく暗がりの情景。そのとき、私たち一人ひとりの頭の中に、本当に怖いものが見えてきます。

 

 

夏にお勧めの怪談です。

 

 

NHK落語名人選43 八代目 林家 正蔵 生きている小平次・穴どろ

八代目 林家 正蔵

 

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落語家は、YouTubeに高座の動画をアップすべきなのか?(1)

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。私は勝手に、落語業界の私設応援団を自認しています。そこで今日は、落語家はYouTubeに高座の動画をアップすべきか? というテーマを考えてみたいと思います。

 

なぜ、こんなことを言い出したかというと、「私の好きな落語家さんの知名度が、もっと上がるためには、どうしたらいいんだろう?」と、ボンヤリ考えていたからです。

 

現在、漫画「昭和元禄落語心中」などの影響もあり、落語ブームが起きているといわれます。ホールで開催される落語会は、どこも満員だそうです。

 

しかし、ホール落語を見ている方はご存知だと思いますが、大手の落語会に呼ばれるのは、限られた、ごく一部の落語家さんだけです。高い人気がある落語家は、様々な落語会やイベントに引っ張りだこです。この売れっ子の落語家さん達には、年中、仕事の声がかかります。

 

「あの落語家は、客が呼べるから」という理由からです。「あの落語家は、客を持っている」なんて言い方もします。その数は、20名から30名弱。

 

東京には、前座から真打まで合わせると、550名前後の落語家さんがいます。前述した売れっ子の落語家は、全体の5%程度。では、それ以外の95%、500名以上の落語家さん達は、このブームの波にどうやって乗れば良いのでしょうか?

 

結論から言うと、やはりネットを活用すべきだと思います。

 

売れる=知名度×実力×評判×新規客×固定客

 

売れる」という要素を分解すると、以下の5つになります。

 

1)知名度(見たこと、聞いたことがある)

2)落語家としての話芸の実力

3)評判(面白かった、感動した、お客が入っていた、など)

4)新規客をつかむ

5)固定客(ファン、常連さん、リピーター)を増やす

 

これらは独立したものではありません。1)+2)……+5)や1)×2)……×5)になるものです。

 

この各要素を上げていくことが、「売れる」や「人気を得る」につながっていきます。例えば、固定客が、「とても面白かった」と言って、次回に知人を連れてきてくれれば、「評判」が上がり、「新規客」が増えていきます。

 

2)の落語家としての実力は、個人の資質や努力に関するものなので、今回は除くとして、1)の知名度を上げるには、どうしたら良いのでしょうか? 知名度は、新規客の開拓にも直結しますよね。

 

知名度を上げる一番の近道は、やはりテレビに出ることです。テレビは全国に放映され、落語のメインターゲットである中高年層に、自分を知ってもらうことができます。しかし、テレビで落語家が登場できる枠は、極めて限られています。

 

では、テレビに出られない大多数の落語家さんが、知名度を高め、自分の芸を見てもらい、それなりに評価され、新規の客や固定客を獲得していくには。どうすれば良いのか?

 

 

自分の高座の動画を、YouTubeに戦略的にアップしていくこと

 

やはり、この方法が良いのではないかと思います。このテーマは、長くなりそうなので、今回はここまでにしておきます(以下、続く)。

 

蒸し暑い日が続くと、どうしてもイライラしますね。こんな時でも、1日に1回は笑顔になりたいものです。「笑う力」を身につけましょう。

 

落語をやって初めて分かった! 男着物の魅力と面白さ(1)

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こんにちは、アマチュア落語家の太助です。落語を始めるようになって、必要になったのが着物です。

 

これまでの人生で、着物を着たことなど一度もありません。そこで実家の母親に「落語を始めるので、着物が必要」と告げたところ、「取りあえず、一揃い、作ってやる」と頼もしい言葉。

 

実は、うちの母親、着物販売会社で長らく働き、和服をバンバン売りまくる、やり手婆さんなのです。

 

で、送られてきたのが、羽織、着物、帯、白足袋、稽古用の浴衣、稽古用のマジックテープで留める帯でした。この着物を見たとき、素人目にも「これは相当、高価なものだ」と分かりました。帯も博多帯だそうで、金糸で模様が縫い込まれているかなり豪華なもの。着物は、黒茶で実にどっしりしています。

 

「師匠の着物より、高価かも……」と思いながら、初高座にあがりました。落語教室で着付けを教えてくれる訳もなく、事前に本など見ながら何回も着付けを練習しました。

 

2着目の着物が無性に欲しくなる

 

次の発表は春で、私は「湯屋番(ゆやばん)」という落語をやる予定でした。

 

湯屋番は、道楽が過ぎて勘当になった若旦那が主人公。いまは、知り合いの大工、熊の家で居候の身。「少し働いてみたら」と熊が持ってきた仕事が、銭湯の奉公人。この若旦那が、銭湯の番台で、誰もいない女湯を眺めながら、妄想を果てしなく膨らませていく、というストーリーです。

 

ここで気になってきたのが、着物です。私の持っている着物は、どっしりとした黒茶のもので、とても若旦那が着るという感じではありません。また、私は汗かきなので、春に着るには生地が厚すぎる気もしました。

 

そこで、春物の着物を探すことに。若旦那が着そうな紺系の着物、あるいは「笑点」メンバーが着ているような派手な単色の着物にしようと考え、浅草の着物屋さんを何件か、まわりました。この初めての着物選びで、いくつかのことが分かりました。

 

・着物は、価格差がかなりある。素材も色々。

・実際に着てみると、全く似合わないものがある。笑点メンバーが着ているような単色で派手な着物もあったが、私には全然、似合わなかった。

 

容姿、肌の色合い、体格など人それぞれなので、着物の合う・合わないは、実際に着てみないと分からない。これが分かっただけでも、大きな発見でした。

 

その後、落語家の着物を観察するようになりました。その結果、古典落語が専門の落語家さんは、時代設定やストーリーに引き込むために派手な着物はあまり着ない、新作落語系や漫談系の落語家さんは、けっこう派手な着物を着る人もいる、などが分かってきました。

 

着物って、素材などで随分、違うんだ

 

 

何軒か見て歩き、濃いブルーの地に細いストライプが入っている着物を選びました。そして、遅まきながら気付くのです。持っている金糸の帯に、このブルーの着物は全く合わない。……併せて、白い帯も購入しました。

 

さらに、この後、下に着る襦袢の襟の色も気になり始めるのです。単品ではなく、コーディネートが気になり始めたのです。「なるほど、これはうちの母親が、色々売りまくるはずだ」と合点がいきました。

 

ただ、配色を含めたコーディネートを考えることは、面倒なことではなく、むしろ楽しいものでした。私はファッションやオシャレに全く関心・興味のない人間ですが、オシャレが好きな人の気持ちが少し分かるような気がしました。

 

写真は、この時、買った着物です。着付けは、まだ本を見ながらです。

 

 

着物は素材によって着心地や見た目が全然、違うことも分かってきました。なんだか、着物の奥深い沼にズブリと足を踏み入れたような気がしたのを覚えています。

 

私の男着物放浪記は、ここから始まるのです(以下、続く)。